04-14 幕間/神託
それは、何の前触れもなく訪れた。
それが最後に与えられたのは、二十五年前。世界中が、魔人族による恐怖に支配されていた頃。
東・西・南で崇められている神の声……俗にいう、神託である。
≪神の子よ、世界は混沌に満ちている≫
東の大陸、人間族が崇める神・ヒュペリオン。
≪混沌に満ちる世界に、希望の光を灯せ≫
西の大陸、エルフ・ダークエルフ・ドワーフ族が崇める神・エクドルフィン。
≪召喚せよ≫
南の大陸、獣人・竜人族が崇める神・ビスドラン。
≪勇者を召喚せよ≫
三柱の神が、同時に信者の中で”神官”や”巫女”のジョブを持つ者に下した…神託、神の言葉。
≪十四人の勇者を召喚せよ≫
勇者召喚…ヒトの苦難の時代における、ヒトの最後の希望。
千年前の苦難の時代、魔物の中でも唐突に出現する”変異種”の大量発生。それに対し召還された、最初の勇者”ショウヘイ・カンザキ”。
五百年前の苦難の時代、邪悪でありながら神格を得た邪神。それに対し召喚された、第二の勇者”シンタロー・シンジョウ”。
二人の勇者はその称号に相応しい活躍を見せ、世界に平穏を齎した。
そして二十五年前の苦難の時代、世界征服を謳い世界中に侵略の手を広げた魔王オルバーン。それに対し召還された、第三の勇者”シマ・ヨコタ”。
しかし、欲望の赴くままに勇者の地位を利用して暴虐の限りを尽くしたシマは、二十三年前に討伐された。召喚されなかったこの世界の勇者”レオナルド”によって。
そしてレオナルドは二十年前、苦難を乗り越え魔王オルバーン討伐を果たしたのだった。
——それから二十年後の今、神は告げた……”十四人の勇者”と。
勇者召喚には神の助力が必要と言われる。すぐさま各国は神の助力を得られるように、我先にと召喚を試みた。
一人でも勇者を召喚出来たならば、勇者の力の恩恵を受けられる。それに、勇者召喚を成功させた事自体が、その国のステータスになる為である。
故に、勇者召喚に乗り出す各国。
そして東西南、三つの大陸……七つの国家で、勇者が召喚された。
——東の大陸、クロイツ教国が召喚した勇者。
メグミ・ヤグチ、マサヨシ・カブラギ。
——同じく東の大陸、ヒルベルト王国が召喚した勇者。
ユウキ・サクライ、マナ・ミナヅキ。
——同じく東の大陸、ギルス帝国が召喚した勇者。
タイシ・タナカ。
——西の大陸、シンフォニア王国が召喚した勇者。
ノブヨシ・ナルカミ、フミナ・ヌマジリ。
——同じく西の大陸、ラルグリス王国が召喚した勇者。
ツヨシ・ホシノ、シキ・ホシノ、ノゾミ・モチヅキ。
——南の大陸、ニグルス獣聖国が召喚した勇者。
セツナ・セイジョウイン、ゴウ・マンダ。
——同じく南の大陸、リレック獣皇国が召喚した勇者。
クイナ・バンノ、シノ・トノザキ。
どの国家も、自分達が召喚した勇者に期待をかけ、その成長と活躍の為に多くの財産を注ぎ込んでいく。そして三柱の神によって、勇者達に課せられた使命は……。
≪魔の王を討伐せよ≫
オーヴァン魔王国の現魔王、アマダム・ガルバドス・ド・オーヴァンの討伐を示唆していた。
ヴォルフィード皇国編は終わり、次回から新章に入ります。
 




