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刻印の付与魔導師(エンチャンター)  作者: 大和・J・カナタ
第4章 ヴォルフィード皇国
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04-13 幕間/看板受付嬢ソフィアのお仕事

 私の名前はソフィア。冒険者ギルド・イングヴァルト王国・王都支部に勤めるギルド職員です。

 今年で十八歳になりますが、結婚などはまだまだ縁がないのが現状です。


 冒険者ギルドには、様々な人が訪れます。大半は農村等出身の人で、一旗上げて富と名声を! なんて理由が多いですね。

 もしくは仕事が無くて食い詰めた傭兵だったり、貴族の三男・四男であったり。


 ……しかし、たまに不思議な人や、とんでもない人が来るのです。


************************************************************


「すみません、冒険者の登録をお願いしたいんです」

 その人は、蒼銀の髪を靡かせた美しい少女でした。

 鑑定板でその身分を知って、私はびっくりしましたね。何せ公爵令嬢が護衛も付けず、一人で冒険者登録に来たんですから。


 流石に小声で止めましたが、公爵令嬢はどうしてもと言うのです。流石に支部長に相談しましたよ? ですが支部長宛に届いたという、公爵閣下からの同意書を見せられては何も言えませんでした。正気ですか、公爵閣下。


 ——結局、公爵令嬢……アリシア・クラウディア・アークヴァルド様の冒険者登録を行いました。


 その後、度々依頼の完了報告をしにくるアリシア様は、順調に依頼をこなしていった。

「エカテリーナ様より、魔法を教えて頂いたんです」

 筆頭宮廷魔導師の弟子だったんですか。なるほど、もしかしたら宮廷魔導師になる為の経験を積む為に、冒険者として銅級や銀級になるようにとか、言われているのかもしれません。

 エカテリーナ様は大層厳しいお方だそうですからね。


 アリシア様に言い寄ろうとする男性冒険者を止めるのは、骨が折れました。

 そして半年ほどで、アリシア様は銅級に昇級されました。


************************************************************


 その数カ月後、銀級の冒険者がギルドを訪れたのです。名前は……グラン? グリン? 忘れました。

「おぉ、そのサラサラの金髪に青い瞳! 華奢にして母性を感じさせるその肢体、なんて美しい人なんだ! よろしければ、今夜一緒に食事でもどうですか?」


 二人も女性を連れていて、更に女性を口説くとは。

 銀級の熟練冒険者なら実入りも良いのでしょうが、安定した収入というわけでもないですし。確かに顔立ちは整っていますが、自意識過剰とでも言うべき態度も癪に障ります。


 勿論、仕事を理由に辞退しました。その後もギルドに現れた時は言い寄られましたが、同僚が窓口を変わってくれたので問題ありませんでした。


************************************************************


 そして、その数ヶ月後に現れた二人。

 付与魔導師のユートさんと、剣士のキリエさん。


 冒険者登録の際に一悶着ありましたが、ゴブリンの大群から東の村を防衛したという報告の後、その出自を知りました。

 まさか、勇者レオナルド様と聖女アリア様のお子さんだったなんて!!

 私は、レオナルド様の物語のファンなのです。そんな生ける伝説のお二方の息子さんと娘さんに出会えた奇跡を、神様に感謝しなくては!


 ユートさんとキリエさんは、その後も目覚ましい活躍を見せ、あっという間に銅級に昇級しました。流石ですね。

 ですが、ミリアン獣王国へ旅に出ると言っていましたが……大丈夫でしょうか。


 それに、ユートさんとキリエさんの舎弟を自称するゴンツさん達も、銅級に返り咲いたのを機に、ユートさん達を追って獣王国に向かったのですが、生きていますかね。


************************************************************


 そしてつい先日、なんとアルファルド殿下がギルドに訪れたのです。

「事情があり、身分を隠して他国に向かう事になった。身分証として使用するため、冒険者のライセンスカードを用いたい」

 公爵令嬢に続き、第一王子とその護衛二人のライセンスカードを発行する事になった。私は何かに取り憑かれたりしていないかしら?


「それと、この依頼書の処理を頼む」

 差し出されたのは、確かに冒険者ギルド宛の依頼書だ。

 内容は……護衛の指名依頼。それも、銀級冒険者向けのだ。

 そして指名された冒険者は……ユート、キリエ、アリス、アイリ。

 ……え? ユートとキリエ?

「ユートさん達、いつの間に銀級に!?それとアリス、アイリって誰!?」


「む?ユート達を知っているのか?」

 私の独り言を聞いて、アルファルド殿下にそう言われました。むしろ、殿下こそユートさん達をご存知なのが不思議なんですが!?

「ユ、ユートさんとキリエさんの登録や、銅級昇級の手続をしたのが私でして、その縁で存じています!」

「ふむ、そうか。あいつらと同じ担当とは、縁を感じるものだな。あぁ、依頼の件だがユート達からの了承は得ている」

 本当だ、受注の所にユートさんのサインがされていました。


 つまり、私的に殿下とお会いして依頼を口頭で受けたという事でしょうか……?

 ユートさん、凄い人だと思っていましたが……そのスケールは、私が思うよりもずっと大きい人のようです。


************************************************************


 それから、十日後……ユートさんが、冒険者ギルドを訪れました。訪れたのですが……何か、増えてる!?

「こんにちは、ソフィアさん。ご無沙汰しています」

「お久し振りです、ソフィアさん」

 のほほんと挨拶してくる!! まって、脳の処理が追い付かない!!


「お、お久し振りです……えっと、何故アリシア様と一緒に? そちらの獣人族の方と、エルフ族の方は?」

 何とも不思議な一団。勇者と聖女の息子&娘に、イングヴァルト王国の公爵令嬢に、奴隷の首輪を付けた兎人族の少女に、エルフ族の女性。

 全員、デザインが統一された服を着ていて……何だろう、この只事では無い感じは!?

「えーと、パーティメンバーです」

 ですよね、解ります! 知りたいのはそうなった経緯の方!


 そこへ現れたのは、ドーマ支部長でした。

「おう、ユートじゃねえか! って、随分と別嬪さん連れているな? この色男!」

「お久し振りです、ドーマ支部長。喧嘩なら買いますよ?」

「やめとく、後が怖そうだ。それより、今夜は用事はあるか? 無いなら付き合えよ」

「そうですね、今夜は特に予定は無いのでお付き合いしましょう。ソフィアさんもどうです?」

 私も!? いいんですか!?

「私が御邪魔してよろしいのでしたら、お付き合いします」

 とりあえず、受付生活三年で鍛えたポーカーフェイスで動揺を押し殺し、返事をします。

 飲み会の席なら、詳しい事情が聴けそうですからね。


 ……


 なんて、とんでもない話なんでしょう……。

 獣王国では悪魔族による侵攻を打ち破り、皇国では貴族と悪魔族の暗躍から皇女と森を守るだなんて。

 更にはイングヴァルト・ミリアン・ヴォルフィードから、最上級の勲章を叙勲。

 そして、そして……名誉男爵に名誉女男爵!? それもイングヴァルトとヴォルフィードの、二カ国で!?


「さっ流石ですユートさん、キリエさん! お二人のファンとしてこれ程心躍る事は無いですよ!!」

「いつから僕等のファンなんて居たんだ……」

 銅級になる前からですかね。第一号というか、発足したのは私ですが。


 ちなみに、ユートさんの鑑定板によるステータスを見てとてもビックリしました。登録した時とはまるで別人かと思うくらい、ステータスが上昇していたんです。

 だというのに、私と話す時の態度は何も変わらないまま。見ていて胸がキュンとするような笑顔。物腰柔らかな口調。ユートさん、ずっとそのままでいて下さいね。

 

 ——勇者レオナルド様と聖女アリア様の息子にして、新進気鋭の冒険者であるユート・アーカディア名誉男爵様。

 きっと、ユートさんは大きな事を成し遂げるに違いありません。


 ……ちょっと、キリエさん達女性陣の視線が気になるんですけどね。

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