04-11 幕間/創世神と天使
<我が遣い、守護の天使よ>
キリエは、脳裏に響くその声にすぐに気付いた。
<はい、創世神様>
創世神。それは全ての世界を創造し、その全てを司る最高神。
天使キリエは、創世神直属の天使である。
<彼との生活はどうだ>
<はい、とても充実した日々を送らせて頂いております>
<それは重畳だ>
内容は世間話から始まった。しかし、そんな話をする為に声をかけたわけではないのだろう事を、キリエは解っていた。
<創世神様。お声掛け頂けたのは、私に何か御用でしたでしょうか?>
<うむ、正確には彼……上谷優人についてだ>
上谷優人……この世界での名を、ユート。キリエにとっては守護する対象であり、愛しく可愛い弟である。
<ユーちゃんに何か御座いましたでしょうか?>
<ほう、そのように呼んでいるのか。本当に仲が良いようで何よりだ。さて、何から話したものか>
ユートは神々の不覚で命を奪われる事となり、その代わりに異世界へ転生した。それについて、何か不具合でもあったのだろうか。
<我が使いよ……いや、そちらではキリエと名乗っているのだったな。キリエよ、ユートが転生した時の事を覚えているか?>
<はい、私が創世神様からの勅命を賜った時の事ですね?>
<左様。そして、私はその際にユートへ祝福を与えた。その祝福が、世界神の手に渡ったやもしれん>
聞き捨てならない話である。
<それは、事実でしょうか?>
<考えてもみよ。我から祝福を与えられた存在が、偏った適正しか持たぬと思うか?>
確かに、ユートは付与魔法以外への適性を持たない。創世神の祝福を与えられているにも関わらず、だ。それは確かに歪で、不可解だ。
<良いか、ユートに与えた祝福は世界神の手の中にある可能性が高い。彼奴等がそれを使って、ユートに何かを仕掛ける事も考えられるだろう。それではユートに対する詫びにはならぬ>
<はい>
<故にユートに新たに祝福を授ける。世界神の邪魔が入らぬよう、我が直接な>
その言葉に、キリエは言い淀む。
<創世神様、お言葉に異を唱えるつもりでは無い事をご承知頂けますでしょうか>
<ふむ、何だ>
<ユーちゃんは自分の力で歩む事を重視しています。与えられた力を忌避するかもしれません>
それは、創世神の前でも言った事である。ユートはそれを実際に行動で示していた。
レオナルドとアリアという、世界で最強クラスの両親に育てられ、その技術を教わった。そういった、特別な環境下にあったのは事実だが、己を鍛え上げ、知識を得て来たのはユート自身だ。
遺失魔道具製作も、付与魔導師という適性しか持たない自分に腐らず、出来る事を成し続けて手に入れた技能だ。己が知り得ぬ情報を、天使キリエに教えて貰いはしたものの、それはどうしようも無い場合のみにすると自戒していた。
そして、その際は対価を支払うという自分のルールの下に、教えを請う。その大半が、キリエとの添い寝だったり混浴だったりするのだが、それは余談である。
ともあれ、与えられた環境・知識が、現在のユートを形作る要因になったのは事実。しかし今のユートが存在するのは、ユート自身が弛まぬ努力と研鑽を続けてきたからである。
<……そうか。お前がそう言うのであらば、そうなのだろう>
<差し出がましい振る舞い、申し訳御座いません>
<いや、構わぬ。お前の言葉はユートを思っての事であろう。お前の守護天使に相応しい振る舞いを、我は高く評価している>
<勿体無いお言葉で御座います>
<ならば、ユートに伝えよ。対価を支払う事で、我がユートに祝福を一つ授ける>
ユートとキリエの生活から、対価を支払う自分ルールを持つ事を察した創世神からの譲歩である。最も、その際にキリエのはっちゃけ具合に少し頭痛を覚えたのだが、これも余談である。
<伝えはしますが……>
<彼が生きている間に限り、時間制限は無い。望まぬならば、それはそれで構わぬ>
<かしこまりました、確かに伝えます>




