02-13 幕間/ガールズトーク
※今回はオマケ的なお話なので短くなっております。
それは、ユート達がミリアン獣王国を旅するある日の事。
「はい、消音の遺失魔道具も起動できましたね。それでは、第一回女性陣会議を始めたいと思います」
「「わー!!」」パチパチパチパチ
快適安全空間の中で、輪になって顔を突き合わせるキリエ・アリス・アイリ。ユートはシャワーを浴びている最中だ。
「議題としては、お互いの目標をまず知っておくべきでしょう」
「目標…ですか」
「はい。では言い出しっぺの私からいきましょう」
そう言って、キリエは瞳を閉じる。
「まぁ、多分女性なら誰でも心に抱く願望ですね。私の目標はユーちゃんと添い遂げる事です」
「「そ、そいっ!?」」
「はい。私達は血が繋がっていないので、問題はありません」
「義姉…これは手強いカードです!」
「ア、アリス様?」
当初は守護天使として、ユートを側で守ろうと思っていた。しかし、ユートとの生活が心境の変化を齎したのだ。
キリエを姉と慕うユート、モノ作りに夢中になるユート、戦闘時は不敵になるユート。単に惚れた、キュンときたのである。
天使なんて、人間との間に子供を作るとか普通によく聞く。じゃあ自分もユートの妻になって、子を設け、ユートが天命を全うするまで天使は休業しようと決定した。
……創世神の心境や如何に。
「アリス様はいかがなのでしょうか?」
「わっ、私ですか!?私は、そのですね…」
もじもじとするアリスを、他の二人は微笑ましく見ている。
「ユ、ユート君の、お嫁さんに…なる事です」
「「ですよねー」」
意を決した告白を、あっさり肯定されてアリス唖然。
「いえ、普通好きでもない異性に着いていくために、五年間もの間魔導師の修行をしたり、銅級冒険者になったりしませんよ」
「それも、公爵令嬢が……です」
「うっ…そ、それは〜…」
そもそもアリスは一人娘なので、公爵達はそれはもう引き止めた。しかしアリスの熱意に負け、旅を許可せざるを得なかったのだ。恋する乙女は強いのである。
現在、アークヴァルド公爵家では、「アリスがユートを婿に連れてきてくれたらいいな」と思いつつ、男の子の誕生を願って夜の運動会が頻繁に行われているそうな。
「さて、アイリさんはどうですか?」
「奴隷の分を弁えず、添い遂げようだなんて思っていません。お側に置いて頂いて…その内、その…お情けを頂けりぇば」
噛んだ。冷静に話そうと努力していたが、内容が内容だったので噛んだ。
「ユート君は、アイリさんを奴隷と見てませんよ」
「私達と同じ、旅の仲間としか思っていませんね。その内、言わないと奴隷という事を忘れかねません」
というのも、食事は自分達と同じ物、食べるのも一緒に。寝床はキリエとアリスのゴリ押しの結果、四人で一つのベッド。シャワーはユートが泣いて土下座したので、キリエ・アリスと一緒。
「あれっ、奴隷って何でしたっけ!?」
「もう奴隷契約解除してもいいんじゃないですかね」
無論、そうはいかない。世界各国を巡る旅、獣人族は差別を受ける地域が多く存在する。
その際、「ユートの奴隷」という身分を利用すれば、他者からのちょっかいや迫害を避けやすい。アイリの身を守るためにも、奴隷身分は必要なのである。
「結論、私達の目的は全員一致でユーちゃんのお嫁さんですね」
「…そ、それは、その…!」
「わ、私はそんな畏れ多い…」
「さて、そうなると一つ越えなければならないハードルがあります」
「「流された!!」」
ユートの姉としての生活が、キリエのスルースキルを高みに引き上げているのである。
「ユーちゃん、一夫一妻制だと思ってるんじゃないでしょうか?」
……アリスとアイリが、静止した。
「え?」
「そう……なのですか?」
「はい。お父様とお母様、イングヴァルト国王夫妻、アークヴァルド公爵夫妻、ミリアン獣王夫妻…これまで出会った人達に、複数の奥さんがいませんでしたから」
この世界、一夫多妻である。神様の教えの中に、「産めよ、増やせよ」というものがあるのだ。
国によっては一夫一妻制の国もあるが、大半の国が一夫多妻である。その為、王族は言わずもがな、貴族や裕福な商人も、普通に妻が複数人いる。
「その辺りを認識させてからが勝負ですね」
「ユ、ユート君のお嫁さんに、三人で!」
「わっ私もよろしいのでしょうか!?」
三人寄らばかしましい。女性陣の結束力が上がった。
その頃のユート。
「…シャワー終わっても外で待っててって言ってたけど…まだかかるのかな?何話してるんだろ」
テント前で待機していた。結局、ユートがテントに入れたのはその数時間後だった。
次回の投稿より、第3章となります。
楽しみにして頂けたら、幸いです。




