フリード編17 竜の巫女/竜騎士
後書きに予告を追記しました。
遺失魔道具・生体端末を駆使して戦線復帰したフリードリヒ。そして同じく生体端末に自身の愛機を託し、瘴気に侵された魔物達を殲滅すべく迎撃に加わったユート。
ウィンドルグ王国の上と下で、戦線が更に拡大していく。
「【水竜咆哮】!!」
フリードリヒが得意な技を発動して、瘴気の魔物の群れを消し飛ばす。それでも再び魔物達が集っていくが、純粋に手が足りない現状では彼の参戦は心強さが勝る。
「来てくれたのか、フリード!! いやしかし、怪我は良いのか!?」
援軍到着に笑みを浮かべたマサヨシだが、フリードリヒの負傷は軽くなかった。その為彼の身体を心配してそう声を掛けたが、フリードリヒは普段と変わらない調子で頷いた。
「心配はご無用。一時的に使用しているこの身は、ユート様の遺失魔道具です」
「……!! そうか、生体端末か!!」
フリードリヒ参戦のカラクリが解って仲間達は安堵するが、それはフリードリヒ本体の負傷が軽くない事と同義。ならば尚更、この瘴気の魔物達をウィンドルグ王国に近付けさせる訳にはいかない。
「待った!! それなら私達も生体端末を使って、援軍として一緒に戦わせたらどうかな!?」
マナが「名案じゃない?」と言わんばかりのドヤ顔をしながら、魔法を発動させて瘴気の魔物達を攻撃する。
そんな彼女に苦笑しつつ、同じく魔物の群れを範囲魔法攻撃で吹き飛ばしたシノが反論する。
「そうでもないと思う。私達がこれだけ持ち堪えられるのは、魔導兵騎が専用機だからっていうのもあるし」
シノの言う通り、専用魔導兵騎の性能は無視出来ない。個人用に調整されたお陰で、広範囲攻撃が短いスパンで放てるのだ。
「そっか、確かにシノの言う通りだね」
「うん。結局、このまま地道に耐えるしかない」
すっかりシノもこのアヴァロン王国メンバーの輪に馴染んでおり、背中を預け合いながら防衛戦に臨んでいる。その様子を見たグレンは、彼女が心を開いてくれた事を喜んでいた。
——君ならばこうなると思っていたよ、シノ。君はやはり、紛れもない我々の勇者だ。
そんな時だった。ウィンドルグ王国の方から、民達の声が聞こえた。
ユウキ達はアヴァロン王国軍の包囲網を、瘴気の魔物達が突破したのか? と不安を覚える。
しかし、民達が上げている声の質……それが悲鳴ではなく、歓声である事に気が付いた。
そして次に聞こえて来たのは、竜の咆哮である。それも、一体だけではない……数体の竜が、瘴気の魔物達に向けて威嚇する様に咆哮しているのだ。
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『人の子達よ、状況は察している……守護竜ヴォルガノス、気高き巫女の呼び声に応じ参った』
そう告げた白い竜……守護竜ヴォルガノスは飛翔して瘴気の魔物に接近すると、竜の息吹を放って攻撃を開始する。
ユーリを見限り巫女の力を失わせた事で、自身をこの世界に繋ぎ止める存在が無くなり送還されたヴォルガノス。
そんな彼女は自分の意思で、フランドールに呼び掛けた。彼女の気高さと真摯な願いが、不思議な事にヴォルガノスに届いたのである。
しかしヴォルガノスと共に姿を見せたフランドールは、苦しそうに顔を歪めている。その理由は、一人で複数の竜を召喚しているせいだ。
それも……フリードリヒとヴォルガノスだけでなく、更に二体の竜を。
フランドールは自分に呼び掛けたヴォルガノスに、乞い願った……ヴォルガノスに力を貸してくれる竜が居るならば、共に戦って欲しいと。その代償がどれ程大きなものでも、自分が受け止めてみせると啖呵を切ったのだ。
『お主一人で、我等を繋ぎ止めるとは。相当な苦痛を感じておるであろうに』
『無理をするでないぞ、小娘。お主の覚悟が民を救うのだ』
「ありがとう……ございます、騎士竜【リンドヴァルム】様……始祖竜【ウィンガード】様……」
ヴォルガノスの呼び掛けに応じて現れたのは、フランドールとユーリが知る乙女ゲーに登場する騎士竜リンドヴァルム……本来、フランドールが召喚するはずだった竜だ。
そして、もう一体の竜……ウィンドルグ王国の礎となった、伝説の竜【ウィンガード】。これにはウィンドルグ王国の王侯貴族も平民が、歓喜の声を上げてしまうのも無理はないだろう。
しかしウィンドルグ王とクロスロード公爵は、一人で四体の竜を召喚したフランドールの身を案じていた。
「フラン!! なんて事を……お前の身が保たないのではないのか!?」
「フランドール嬢!! なぜ、こんな無茶を……!!」
二人はフランドールが居る部屋に、慌てて駆け出して行った。そんな王と宰相を見た貴族達は、慌てて後を追う。
そんな王国の中枢を担う者達よりも、キースナイトはフランドールと彼女が召喚した竜達を見て言葉を失っていた。
——一人で、四体もの竜を召喚した……!? フランが……!?
一人で二体は前代未聞、ならば三体や四体ともなればどうか? フランドールの様子から、それが容易な事ではないこと……自身に相当な負担が掛かる事は、想像に難くない。
それでもフランドールは、苦痛に耐えて竜を召喚してみせた……その理由はただ一つ。
「フリード様達が命を賭して、この国を守って下さるのならば……私もこの命を賭して、皆様のお力となりましょう……!!」
共に、戦場に立つ事は出来なくても。
共に、戦うことは出来るはず。
その為に、彼女は命懸けで竜を召喚してみせたのだ。
「ヴォルガノス様、フリード様達の事をお願い致します!! リンドヴァルム様とウィンガード様、どうかアヴァロン王達をお守り下さい!!」
その切実な呼び掛けに応えヴォルガノスとリンドヴァルム、そしてウィンガードは宙を舞う。
その姿を見たウィンドルグ王国の民達は、王城のバルコニーで苦痛に耐えるフランドールを見て声を上げた。
「一人で、四体もの竜を召喚したなんて……!!」
「あの方は確か、クロスロード公爵様のご令嬢……!!」
「お、お母さん……あの御方、苦しそうだよ……?」
「フランドール様……!! なんて御方だ……!!」
断罪される悪役令嬢など、居ない。そこに居るのは救国の為に命懸けで戦う、竜の巫女だ。
そんな覚悟を見せた彼女を、放置するアヴァロン王ではない。
「素晴らしい覚悟だ、フランドール嬢……俺は君に、敬意を評する」
ユートがそう言うと、フランドールに向けて白い光の紋様が空から飛んできた。それがフランドールの足元に到達すると、彼女の足元に魔法陣が展開される。
「こ、これは……? 体が、一気に楽に……」
「魔力を回復する効果がある、そこから出ないようにしなよ?」
フランドールが苦しんでいたのは、竜を維持する魔力が枯渇しそうだったからだ。そこでユートは自分の魔力を込めた刻印付与魔法で、彼女に魔力を供給したのである。その甲斐あって蒼褪めていたフランドールの顔色は、すっかり元通りになっていた。
それだけではなく、ユートの魔力光に包まれたフランドールの姿は神々しく、そして美しかった。その姿を見た民達はフランドールを崇め始め、彼女の無事を確かめようと駆け付けた父や王侯貴族達はその姿に見惚れてしまう。
そんなフランドールの状況に笑みを浮かべつつ、ユートはもう一度彼女に呼び掛ける。
「さぁ、もう一息だ。一緒に戦おうか、フランドール嬢」
「……!! はい、アヴァロン王国国王陛下!!」
ウィンドルグ王国の大地から飛び出して、急降下する白い竜。彼女はフリードリヒの姿を見付けると、その近くで翼をはためかせてみせた。
『別れの言葉も告げずに去って悪かったな、フリードリヒよ。気高き巫女……いや、フランドールのお陰でこうして、助太刀に参った次第だ』
「ヴォルガノス殿……あぁ、共に参ろう」
フリードリヒの応えを受けて、ヴォルガノスは一鳴きすると瘴気の魔物の群れが形成する柱に向けて飛ぶ。彼女は竜の息吹を放つでもなく、その巨体で柱に突撃してみせた。
元より瘴気の魔物に対抗する為の、召喚竜。魔物がどれ程群れていようと、その瘴気で竜を侵食する事は出来はしない。そして魔力の消費を抑える事で、フランドールの負荷も軽減出来る訳である。
「ふっ、心強い援軍だね。さぁ、僕達も負けていられないよ!!」
ユウキがそう言えば、アヴァロン王国の精鋭達は魔導兵騎を駆り飛翔する。
……
同じ頃、ウィンドルグ王国の上空。騎士竜リンドヴァルムがアヴァロン王国軍の展開する空域に到達すると、ヴォルガノス同様に瘴気の魔物達に向けて飛んだ。
『あの娘の覚悟に免じて、全力を尽くそうではないか!!』
その巨体と、身体の硬さ。それが高速で突っ込めば、その衝撃だけで瘴気の魔物達が潰れていく。
「すげぇな……まるで、大砲の弾みたいだぜ……!!」
「よし、俺達も負けてられねぇぞ!!」
「っしゃあ!! 行くぞお前等っ!!」
この援軍は、アヴァロン王国軍の面々にとって心強いものだった。激しい戦いで神経をすり減らしていた彼等は、負担が大幅に軽減された事で戦意を高揚させていく。
そして、更にその上空。
「この竜は……!!」
『ほう……? お主、古代竜だな?』
神竜モードのエイルがそう問い掛けると、ウィンガードは彼女に顔を向ける。
『……我は恐らく、御身の足元にも及ばぬ若輩であろう。僭越ながら、あの娘の願いに応じて馳せ参じた次第』
同じ古代竜ではあるものの、ウィンガードは神竜レベルにまでは到達していないらしい。それがエイルに対する態度で解り、キリエとファルシアム以外は「エイルって、本当に凄い竜なんだなぁ」等と思ってしまうのだった。
しかし、そんな緩い空気は一瞬で切り替えられる。
『よかろう。ならば共に、この空を汚す穢れを塵に変えよう!!』
『御意!!』
次の瞬間、二体の古代竜がその全力を以って飛翔を開始。更に旋回・上昇・降下を行い、広範囲の瘴気の魔物を文字通り粉砕していく。
そこでキリエは、二体が自分達の担当範囲をアピールしている事に気が付いた。
「あら、私達の分も残して下さっているみたいです……それじゃあ、こちら側は我々で片付けましょう!!」
エイルを除く、十一人のアヴァロン王妃。彼女達は一斉に、一方向に向けて攻撃を再開した。
「……そちらはお願いしますね、ユーちゃん」
その呼び掛けに答える声は無いが、応えはある。生体端末は魔導装甲と魔導兵騎をユートから託されており、彼の持つ全ての武装を扱える。
「神の見えざる手」
収納と同時に発動された、神の見えざる手。それによって生体端末の周囲に展開されるのは、ユート謹製の重火器の数々だ。
それらが一斉に火を噴けば、次々と放たれる弾丸が瘴気の魔物達を蹂躙していく。キリエ達もそれが解っているからこそ、彼にそちらの方向の魔物達を任せたのである。
そうしてようやく、時は来た。
「さぁ、待たせたね……国ごと異世界転移のお時間だ」
その声が響くと同時に、巨大な白い魔法陣に真っ先に触れるのはこの国で一番大きな建物……王城の天辺だ。白い光に触れたそれは、魔法陣を通り抜けずに消えてしまっていた。その様子に民達は内心で恐れを抱くが、その不安を払拭する様にユートが呼び掛けた。
「この魔法陣を通り抜けたら、僕達の世界ヴェルスフィアだ。諸事情あって海の上に転移するが、溺れたりとかの心配は不要だよ」
諸々の手筈は整えていたらしく、アヴァロン王国のあるアーカディア島の下に転移させるらしい。ちなみにアーカディア島よりも、ウィンドルグ王国の方が大きいのは余談である。
迫り来る白い光に震えながら、王城の面々が魔法陣を通り抜け……そして目の前に広がる光景を見た一人の貴族が、大急ぎで階段を駆け下りて魔法陣の先から戻り声を上げる。
「ほ、本当に別の景色だ!! この先に、大海原が広がっているぞ!!」
その言葉は瞬く間に広がり、民達の耳にも入る。この先に待っているのは、自分達の新天地。この世界は滅びても、自分達は生き残れるのだという確信だった。
そうして魔法陣が迫り、ウィンドルグ王国の者達が目を閉じながらその時を待つと温かい感覚に包まれた。
「こ、これは……魔法陣が温かいのか?」
「あの御方……アヴァロン王の、力の……」
そうして魔法陣を通り抜け、首から下が徐々に姿を見せた。更に足元の床や地面が見え始めて、すぐにその視線は空に向けられる。
そこには瘴気の魔物の姿はなく、暗い暗雲に覆われた空ではなく青空が広がっている。
そしてその青空の中に、宙に浮かぶ島があった。
「天空島……あれが、アヴァロン王国……」
ウィンドルグ王がそう呟くと、周りの貴族や騎士、兵士達が歓声を上げる。その歓声は城下町から王都全体へと広がり、民達は自分達が助かった事を実感し喜びに震えた。
……
一方、ウィンドルグ王国の地表部分の転移が完了したものの……地下部分はまだ転移前。ユート達は、変わらず戦場の中にいた。
「今、六割くらいだ。皆、もう少しの辛抱だよ」
ユートがそう告げると、アヴァロン王国メンバーと竜達はその言葉を信じて最後の力を振り絞る。
同時にユートは地表部分より、地下部分の範囲を狭く切り取っていた。その為、徐々に魔法陣の範囲を狭めていく。
『ぬぅぅ、させぬさせぬさせぬ……!!』
瘴気の怪物は諦めておらず、アヴァロン王国軍を侵食しようと襲い掛かる。同時にウィンドルグ王国の大地に潜り込んで、転移先で猛威を奮おうと地下部分に向けて突き進んでいく。
しかし、それは決して適わない。勇気の勇者が、第一王妃が呆れた様に瘴気の怪物に言葉を返す。
「させないだって?」
「いいえ、させて貰います」
『許さん!! 許さん!! 許すものか!!』
激高した声が響くと同時に、瘴気の魔物の接近が激しさを増す。
しかし創造神が生み出した魔導兵騎と、アヴァロン王国の精鋭達。そしてフランドールが決死の覚悟で召喚した竜達の前では、それは無駄な足掻きに過ぎない。
それを思い知らせるかの様に、ヴォルガノスが断言する。
『貴様の許しなど、この国の民達は求めていない』
『おのれ……おのれおのれおのれ!! 貴様等ァァァッ!!』
最早、癇癪を起こした子供の様である。そうして瘴気の怪物は、瘴気の魔物達を一カ所に集めてひと塊にした。その姿は正体を見破られる前に形成していた、竜の姿を模したものだ。
もっともその大きさは、先の姿の比ではない。その大質量をもって、アヴァロンと竜の防衛網を強引に突破するつもりである。
『貴様等さえ居なければアァァァァァッ!!』
そんな瘴気の怪物に、真正面から立ち向かうのはフリードリヒだ。
彼は魔導兵騎と魔導装甲を解除して、生体端末を竜化させる。
「そうだな。フラン殿が、私を召喚してくれたお陰だ」
そう言い切ったフリードリヒは、竜の顎を開き大きく息を吸込み……そして体内の魔力を空気と混ぜ合わせて、一気に吐き出す。
それは竜の代表的な、強大な威力を持つ攻撃。フリードリヒが独自に編み出した、竜の息吹である。
その名も……。
『天竜翔破!!』
フリードリヒの息吹・天竜翔破は瘴気の怪物に命中すると、その勢いのままそれらを呑み込み消し飛ばしていく。
『ぬ、ぅぅぅ……!! な、何故だ……!? こ、この程度の息吹を、何故……突破出来ない……!?』
その理由は、自身の魔力を込めた息吹はある程度指向性を持たせられるからだ。フリードリヒは弛まぬ鍛錬の結果、その手法に気付いたのである。
普段はそのまま、相手を押し返すように放つのだが、今は命中した箇所から息吹を拡散させて相手を散らしていた。それは瘴気の魔物達を削りつつ、広範囲をカバーする為である。
……
そうしてフリードリヒが最後の足止めをしている間に、ウィンドルグ王国全土が魔法陣の先へと消えて行った。
そうして魔法陣が狭まった結果、残るは竜達が通れる大きさの範囲だけである。
「アヴァロン王国軍、撤退。竜達も一緒にどうぞ? 援軍のお礼に、あっちで美味い肉を用意しよう」
『それ良いね、お兄ちゃん! そういう事だ、ウィンガードにリンドヴァルム……そして、ヴォルガノスだったな? 饗しに応じるならば、共に魔法陣を潜ると良い』
ユートに加えて、エイルまでもがそう言っては召喚竜達は否とは言えない。アヴァロン王国軍と共にユートの魔法陣を潜り抜け、ヴェルスフィアへと渡って行く。
そうして最後に、王妃と勇者達……そしてフリードリヒが撤退した所で、魔法陣が閉じた。
……魔法陣を展開していた、ユートを残して。
『貴様……何の真似だ……!!』
瘴気の怪物は魔物達を意のままに操り、ユートの周囲を包囲する。
『このまま圧殺するも良いが、それではつまらぬ!! その身を我が瘴気で侵食し、その力を取り込んでやる!! 貴様の力で世界を渡ったと言うのならば、貴様の力で再び絶望を味あわせてやろう!!』
瘴気の怪物がそう告げた瞬間……ユートの周囲を覆っていた瘴気の魔物達が、パンッという音と共に弾けて消滅した。
『……な、何……?』
「俺を侵食するって? 見習いだが、これでも神なんだ。無駄だよ」
『ほ、ほざけ!! もう一度……!!』
再び残った瘴気の魔物達を嗾けるが、ユートに触れようとした瞬間にそれらは弾けて消えていく。
「無駄だって、無駄」
『そんなことが!! あるはずが!! ない!!』
諦め切れない瘴気の怪物は、更に魔物達を嗾ける。しかし大型の魔物も小型の魔物も、人型の魔物も獣型の魔物も、例外なく弾け飛んで塵となる。
「さて、それじゃあ……お別れだ」
ユートはそう言って、指をパチンッと鳴らす。その瞬間、大地に異変が起きた。
地面から白い光が火柱の様に噴き上がり、大地を割っていく。光の数は次々と増えていき、地表は徐々に膨張していく。それは一瞬で、この星全体に広がった。
『こ、これは……っ!?』
「さようなら、瘴気の怪物。この世界の最後の生命として、星と共に消えると良い」
ユートがそう告げると同時に、星の中心で何かが弾けた。瞬間、地表が砕けて白い光が全てを呑み込む。瘴気の怪物も、侵食された魔物達も、何もかもを。
守護の神威でその影響を受けなかったユートは、溜息を吐く。
「ふぅ……到着と同時にマグマの付近にセットした、新作の遺失魔道具”蓄積爆弾”。まさか一瞬で、星を消滅させる威力になるなんてな」
この瘴気で汚染された世界を放棄するだけではなく、破壊までしたのは瘴気の怪物が何を仕出かすか解らなかったからである。そこで使用したのが、新作の遺失魔道具だったのだが……どうやら、想像以上の威力だった様だ。
「これじゃあ創造神じゃなく、破壊神なんて誤解されかねない……うん、門外不出だな」
【予告】次回投稿予定日:2025/8/15(フリード編第18話)
 




