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刻印の付与魔導師(エンチャンター)  作者: 大和・J・カナタ
第2章 ミリアン獣王国
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02-09 王都レオングル/防衛線

これまでのあらすじ: 悪魔族が王都レオングルに攻め込んできました。

 悪魔族によって生み出された影共は、人間族の大陸ではなくミリアン獣王国の王都レオングルを目指して移動している事が判明した。このままでは、あと数十分で千体前後の影がレオングルを蹂躙するだろう。


「人間、これはどういう事だ!」

 僕の説明と違う現状にバカ猫が噛み付いてくるが、僕にとっても予想外だったんだよ。

「もしかして、悪魔の果実と一緒に流された情報は欺瞞なのか……? 悪魔族の狙いは、最初から王都だったのかもしれない!」

 僕の推測に、獣王とバカ猫が唸る。


「ぐぬぬ、このままでは王都が危ない!」

「悪いが国の危急だ。余達はこれで失礼する!」

 駆け出そうとする獣王とバカ猫を止める。

「待った! 王都に戻るなら僕が一瞬で送れる!」

 今回は僕の情報が間違っていたのもあるから、このくらいはサービスすべきだ。


「それは誠か!?」

「嘘じゃないだろうな、人間!!」

 僕の言葉に足を止め、勢いよく振り返る獣王達。その表情には焦燥の色が張り付いていた。


「この後、王都の門前に転移する。そうしたら、僕達は王都前の平原で防衛線を張る」

 その言葉に、獣王と王子の耳がピクリと動く。

「影の正体は魔力生物らしきものだから、精霊を介さない純粋魔力攻撃ならば、影を吹っ飛ばせる。もしくは解呪ディスペル吸収ドレイン。これで影を無力化する」

 その為に、複数種類の魔法銃も量産しておいた。


 しかし、獣王達は首を振る。

「待て、これはミリアン獣王国の問題だ」

「そうだ、お前達の出る幕ではない!」

 また面倒くさい事を……。


「言葉を返すが、これは既に“俺”達の問題でもある」

「何故そこまでする? お前達の潔白はこの獣王が保証すると言ったはずだ」

 どうやら、獣王は俺達が身の潔白を証明する為に、この件に関わったと思っているらしいな。だが、違うのだ。


「違うな、それはついでだ」

「ついで……だと」

「最悪の場合、無実を証明出来なくても、悪魔族と影共は止めるつもりだった」

 俺の言葉に、獣王は唸り声をあげる。ライオンだもんね、しょうがないね。


「ならば、何の為に戦う」

 そんなの、決まっている。

仲間ツレの故郷だからさ」

 そう、四人の獣人達は俺の仲間だ。その故郷を守る為なら、持てる力を総動員して戦う。それが、俺の信条だ。


 俺の言葉に呆気に取られている獣王達を尻目に、銃剣に門弾ゲートバレットの弾を篭める。悪魔族を追って王都に行った際、王都の外壁に“空間接続”を付与しておいたのは正解だった。

 銃剣の銃口を屋敷の壁に向け、撃ち放つ。すぐに魔法陣が広がり、空間が接続された。

「着いて来られない奴は置いて行くぞ!」

 すぐさま駆け出し、門を潜る。


 ……


 門を潜った先は、王都の前の草原だった。

 壁から飛び出して来たように見えただろう兵士が、警戒心を露にしてこちらを見ている様だが、構ってやる暇は無い。


 マップを確認すると、後ろから姉さん、アリスが門を駆け抜けて来た。その後に続いてアイリ、クラウス、ジル、メアリーが続き……数秒送れて、ベアトリクスさんと獣王、バカ猫が転移してきた。

 あと数秒もすれば、門は閉じるから放置で良いだろう。


「待て、待たぬか人間!」

「人間じゃない、ユートだ」

 立ち止まり、振り返ってドラ猫に視線を向ける。ドラ猫の表情は、苦虫を噛み潰したような表情だ。

「……お前は何者なのだ」

 今更じゃないのかな。まぁいいか、知りたいならば教えよう。

「ただのしがない付与魔導師エンチャンターだよ」


 流石に“刻印の付与魔導師”だ、なんて言ったら、痛々しいものを見る目で見られそうだからね、ちょっと自重しておく。

「付与魔導師……だと?」

 ハズレジョブである事のカミングアウトに、ブリックは訝しげな視線を向けて来る……無視しよ! 


 さて、マップには前方から迫る影、影、影。その最後尾には、件の悪魔族もいるようだ。

 こんな大事を引き起こしたあの女には、少々お灸を据えてやろう。


「皆、昨日説明した通り、宝物庫ストレージを解放する。この防衛線を守る為に、存分に使え。建物にも、住人にも被害は出す気はない」

「「「「はいっ、ご主人様!!」」」」

「無論です」

「最初から、そのつもりですから!」

 よし、いい返事だ。


 そう、事前に悪魔族や影との戦闘に備えて、宝物庫の指輪ストレージの新機能を用意していた。

 宝物庫ストレージに残された文字数を使い、俺は付与を施していたのだ。


 その付与は“空間接続”なのだが、これは転移の為ではない。

 俺の宝物庫ストレージに入っている銃火器等の武装を、他の宝物庫ストレージからも取り出せるようにしたのだ。空間接続は俺の宝物庫ストレージからしか機動できない為、許可無く使う事は出来ない。


「さて、狩るのはどっちか、狩られるのはどっちか。思い知らせてやろうじゃないか、悪魔族」

 やがて、影が続々とその姿を現した。進行速度は中々に速い。元が獣人だからか、影の特性なのか。

 だが……ここに俺達がいる以上、そんなの関係ない。

「さぁ……駆逐の時間だ!!」


 開戦の合図となるのは、一発の銃声。最も前を走っている影に向けて、銃剣から放たれた弾が命中する。

 撃った弾丸は弾頭を三つ目熊の皮に変更したゴム弾だ。三つ目熊の皮だけど、名称はゴム弾だ。そういう事にしている。


 ゴム弾には”解呪ディスペル”を付与している。

 その弾が命中した影が霧散し、影を身にまとっていた獣人が力なく倒れたが、”目”で見ればその体力はまだ二割ほど残っている。この調子で、影を祓ってやる!

「総員、攻撃開始!」


 俺の号令に真っ先に反応したのは、姉さんだ。空間接続機能を使って、俺の宝物庫ストレージからスナイパーライフルを取り出して構える。

「いきます!」

 ――タンッ! タンッ! 

 連続で、先行していた二体の影を撃つ腕前。ヘッドショットとは……何気に姉さんは、俺の遺失魔道具アーティファクトの銃火器を使いこなしているな。


 その隣で、アリスが魔法銃を構え、狙いを定める。

「……えいっ!」

 可愛らしい掛け声と共にトリガーを引くと、魔法銃から放たれたのは純粋魔力の魔法弾だ。

 魔法弾は影が三体ほど集まっている場所に飛んでいき、命中する。更にそのまま影を通過して、魔弾はもう二体の影を屠った。

 魔弾に影が吹き飛ばされると、そこには獣人達が倒れ込んでいた……勿論、生きている。


 アイリ・ジル・メアリーを庇うように立つクラウスの手には、俺愛用のガトリングガンが持たれている。

「うおぉぉぉ!」

 クラウスはそんなに魔力が多くないので、与えたのは”吸収弾ドレインバレット”である。射手が魔力を流さなくても、触れた対象の魔力を吸収するこの弾なら、クラウスにピッタリだ。

 だが、一瞬で全ての魔力を吸収できたりはしない。なので、数を撃たなければならないのだ。


 その背後で、ジルが手にしているのはサブマシンガン。クラウスと同じ理由で”吸収弾ドレインバレット”を使用しているが、視野の広さがクラウスとの違いか。

「クラウスさんはそのまま右の方へ! 左は僕が!」

 そんな風に指示を出せる程、ジルは戦況を把握できているようだ。クラウスに多数の敵が多い方を対応させ、自分はより小規模ではあるが複数箇所に散らばる影を狙う。


「狙うよ〜!」

 何気に撃墜数を稼いでいるのがメアリー。メアリーは村で狩りをしていたらしいからな。渡した武器のショートボウ部分で、矢を放っている。

 この矢は”解呪ディスペル”を付与してある物だ。

 獣人四人、女性陣の方が魔力保有量が現段階では多い。とはいえ俺達よりは少ないから、魔力の枯渇には注意してあげないといけないな。


 そして、アイリ。形状は違えど銃剣二刀流という、俺と同じ戦闘スタイルを選んだ彼女は、俺の側で銃部分から発砲している。

 うまく影を引き付けての攻撃。口を酸っぱくして残弾管理も教えこんだお陰で、弾切れして敵に近づかれる、なんて失態は無い。

「ご主人様、このまま迎撃で大丈夫なのでしょうか?」

 しっかりと戦況を把握していたのだろう、アイリから疑問の声が上がる。このままなら、押し切られると解っているのだろう。


「今はこのままでいい。心配は要らない、ちゃんと考えてある」

 そう言いながらも、ショットガンで影を吹き飛ばす。更にサブマシンガンに持ち替えて、俺とアイリに迫る影達を撃つ。


「おのれっ!」

「落ち着けブリック、前に出過ぎだぞ!」

「おい、ユー坊! 何かねぇのか、攻撃が効かねぇんだよ!」

 突出するブリック王子を、獣王とベアトリクスさんがフォローする。しかし、獣王とベアトリクスさんの拳も、影には決定打にはならない。

 焦ったベアトリクスさんから、オーダーが入った。


「はいよ、これでよろしく」

 駆け寄ってベアトリクスさん、獣王、ブリック王子の手の甲に、判子を押す。

 ――ぺったん! ぺったん!

 判子を押した手の甲には、”魔力で描かれた絵”が残った。


「何をする、人間!」

 食ってかかりそうなブリック王子を無視し、俺は踵を返す。

「これに魔力を流してアレを殴ってみりゃ解る。こっちは任せた」

 そう言って、俺は最前線の仲間達の下へ戻る。


 接近した影に対し、獣王が拳を振るう。すると、さっきまでとは違う手応えを感じたようだ。

「何だ、今の感覚は……?」

 視線を向ければ、人影の体を覆う黒い影がごっそりと削れている。

「これは……付与魔法か!」

「八十点だ」

 辛口で採点しながら、更に銃弾を放つ。


 命中した弾に影が吸収され、獣王が殴った時のように削れる。そう、三人の手に押した判子……その文様は”刻印”である。判子の正体は遺失魔道具アーティファクト

 ――その名も”刻印の印章シギル”。

 付与を簡単に、誰でも施せるように制作したの物だ。


 更に言えば吸収魔法を施した事で、攻撃すればするほど魔力が回復する。影との戦闘には持ってこいだ。

 付与魔法ではない、刻印付与魔法。刻印の付与魔導師エンチャンター、渾身の一品である。


 さて、最前線は更に混迷を極める。

 突出していた影の後に続いていた、影の大群が群れを成して襲い掛かろうとしている。

「ご主人様、このままでは押し切られます!!」

 先程の懸念が事実になりそうで、アイリは表情を険しくしている。


「あぁ、丁度いいな。一気に数を減らす、皆は少し下がっていてくれ」

 指示を出して他のメンバーを下がらせると、宝物庫ストレージから”とっておき”を取り出す。


 地面には円形の台座、その台座の正面先端部分から上へ伸びる固定アーム、アームに接続された銃身。銃身はスナイパーライフルのようにも見えるだろうが、その銃身の中央部分には大きな箱型の部品がある。


「ご主人様、これは……?」

「まぁ見てな」

 銃身の箱上部に空いた挿入口から、疑似魔石をジャラジャラと流し込む。

「キリエさん、私嫌な予感がするんですが!」

「ユーちゃん、いつの間に作ったんですかこれ」

 疑似魔石に蓄えていた魔力は、銃の内部に充填されていく。充填された魔力が十分なのを確認し、トリガーに指をかけた。


 既に黒い波となって影の大群が迫っている。狙いは、まず左端だ。

「まとめて吹き飛べ」

 トリガーを、引く。轟音、そして極光。白く輝く魔力で出来た光の柱が、水平に放たれる。

 ――遺失魔道具アーティファクト”魔導砲デストラクター”。

 純粋魔力砲撃用の遺失魔道具アーティファクトだ。


 光の奔流が俺達から見て左端に命中したのを確認し、台座を右に軌道修正させる。水平撃ちからの横薙ぎである。

 右端に着弾したのを確認し、トリガーから指を離す。柱に飲み込まれた影は吹き飛び、残されたのは魔力ダメージを負うも魔力枯渇状態で倒れ伏す獣人達だけだ。


「残った影は……三十体程か? 悪魔族は無事か……ちっ、悪運の強い女だ」

「「「「「……………………」」」」」

 唖然とする獣王、ブリック王子、獣人達。苦笑する姉さん、アリス、ベアトリクスさん。

 そちらに振り返り、肩を竦める。

「残りの影は任せる。俺は、悪魔族を捕まえてくるからな」

 宝物庫ストレージにデストラクターを収納し、次いである物を取り出す。


 黒いボディ、前後にタイヤ、横に突き出したハンドル。そう、八割方製作しており、昨日ついに完成したバイク型遺失魔道具アーティファクトである!!

 ――その名も”魔力駆動二輪車・フェンリル”。

 地を揺らすものを意味し、ラグナロクにおいて神を殺すとされる狼の怪物の名だ。正直、この世界の神にケンカ売ってるね!!


 フェンリルに跨り、エンジンキーを回す。魔力流せばいいだけなので、要らない機構である。意味はない、その方が好きだから!!

 起動したフェンリルの車体に、基盤の様な白いラインが光る。意味はない、カッコいいと思ってやった!!

 宝物庫ストレージから取り出したヘルメットと、グローブを装着する。意味はある、安全運転大事!!


「じゃあ、行って来る」

 右のグリップを回し、発進。途端、フェンリルが走り出す。

「ま、待て! 人間族!!」

 走り出したフェンリルを追い、ブリック王子も走り出す!! やだ、王子ってば速い……。


 ……


「人間! 本当に悪魔族がこっちにいるのか!」

「あぁ、大橋の方に逃げている」

「逃げているのか!?」

 そう、悪魔族め……逃げているのだ。不利を悟って撤退を始めたらしいな。

「それも、左目の力なのか」

 そう言われると、邪気眼っぽくてやだなぁ。


「ところで息が上がっているようだが」

「やかましい、これしきの事で参るほどヤワな鍛え方はしていないわ!」

「いや、遅ぇ」

「なっ!?」

 仕方ないから王子に合わせて走行していたが、王子のスピードが若干下がっている。

 そして、悪魔族はまだまだ先だ。このままでは取り逃がす。

 王子を放置して行ってもいいのだが、後が面倒だしな。


「王子、飛び乗れるか?」

「誰が貴様の世話になど……!」

「じゃあ置いていくぞ」

 そう言うなら仕方ないよね。


「まっ、待て待て! ぐぬぬ……貴様がどうしてもと言うなら乗ってやらん事も……」

 めんどくせぇ奴だな。

「解った、置いていってほしいんだな」

「わ、解った! 解ったから引き離すな!」

 始めからそうしてりゃいいんだよ。


 俺はブリック王子と二ケツして、街道を走り抜ける。

 それからしばらく、悪魔族の進路を見て追い掛けていた俺達だが、ブリック王子が耳元で喚いた。

「おい、悪魔族はどっちに逃げている!」

「大橋の方だよ、耳元ででけぇ声出すな!」


 怒鳴り返すと、王子が「ふむ」と頷き、一方向を指差した。

「悪魔族が通っているのは街道のようだが、あの森を突っ切れば大橋へ先回りが可能だ!」

 ……ほぉ。

「その案、いいね。感謝するよ、ブリック殿下! 振り落とされんじゃねーぞ!!」

 進路を変更し、森へ突入する。


「多少揺れるが、耐えられん程ではない……何なのだ、この乗り物は!」

「バイクって言うんだ、イカスだろ!」

「バイクか! 中々に悪くない!」

 森の木々を避け、障害物は銃剣で排除。襲ってくる魔物は轢き逃げアタックだ!!


 森を抜けると、少し前方に海岸線。

「よし、左へ進路を変えてくれ! すぐに大橋の検問に着く!」

「心得た、悪魔族はまだ街道だな。殿下、ファインプレーだ!」

 進路を変更しながら、ブリック殿下を称えておく。

「ファイン……? なんだか知らんが、貶されているわけじゃなさそうだな!」

 誉めたんだよ。


************************************************************


 悪魔族はひた走っていた。

 一秒でも一瞬でも早く、あそこから離れなければと。


 作戦は完璧だと思っていた。獣人の人間族に対する敵意を利用し、悪魔憑きの軍勢を生み出す。

 その悪魔憑きを王都レオングルへ侵攻させ、王都陥落。同じ事を他の国でも……。


 そう思っていたのに。


 前々日の夜、現れた黒装束の人間。きっとヤツがやったのだと、確信している。

 あの人間は魔道具を持っていた。おそらく、攻撃用の魔道具も多数所持しているのだろう。

 しかし、あの数の悪魔憑きを苦もなく屠る威力は異常だ。一刻も早く”王”の下へ戻り、ヤツの危険性を伝えなくては。


「そう思っていたんだけど、ねぇ……」

 目の前に、見知らぬ金属の塊に跨ったヤツがいた。


************************************************************


 悪魔族がその姿を見せた。先日の獣人の姿ではない。

「それがお前の本当の顔か? 見た目は悪くないな」

「あら、色仕掛けが通じるのかしら?」

「冗談言え、俺の連れと比べたら月とスッポンだ」

 美人とは思うが、姉さん・アリス・アイリ・メアリーには劣る。


 バイクから降り、銃剣を構える。ブリック殿下もそれに続いて、拳を構えた。

「人間と獣人が、協力して追ってくるなんてね……」

「観念しろ、悪魔族。このブリック、貴様を決して逃しはしない」

「道案内は感謝するが、追っかけたの俺だからな?」

 何を自分の力のように言ってるんだ、この脳筋さんは。


「ふん……いいわ。ならば、悪魔族の力を味あわせてあげる!」

 そう言うと、悪魔族の身体がボコボコと膨れ上がり、人間型の身体が異形のものへと変貌していく。

 下半身は鱗を纏った蛇のもの。目は白目が赤く染まる。その両手にも鱗が現れ、指先から爪が伸びて鉤爪みたいになる。


「ここで貴様らを殺して、計画を練り直す。私の邪魔をした事を後悔して死になさい!!」

 地面を滑るように接近してくる。顔を強張らせるブリック殿下だが、心配は無用だ。


「ポチッとな」

 ――ドゴオォォォン!! 

「ぎゃあぁぁぁぁっ!?」


 今回は無いと思った? 残念、ここで出てきたよ地雷パイセン!

 この悪魔族が大橋を攻めるという前情報から、前日のうちに設置してあったのだ。


 王都に侵攻しやがったから、無駄になるかと思ったんだけどね。

「まさか自分から地雷原に来てくれるとは思わなかった、空気読めるんだなぁ悪魔族」

「今更だが、お前怖ぇよ」

 口調がブレてるぞ、殿下。


「こ、これしきで……!」

 必死に立ち上がろうとする悪魔族だが、当然地雷パイセンは容赦しない。

 ――ドゴオォォォン!! ドゴオォォォン!! ドゴオォォォン!! ドゴオォォォン!!

 連続する爆音、跳ね飛ばされる巨体、飛び散る鮮血。

「汚ぇ花火だな」

「お前のほうがよっぽど悪魔なんじゃないか?」

 失礼な。


 しばらく足掻いていた悪魔族だが、やがて体力の限界らしく震えてこちらを睨むのがやっとの有様だ。

「さて、殿下。アレどーする? 捕まえたいなら手を考えるし、殺すなら俺が殺るでも殿下が殺るでも構わないが」

「……どういう風の吹き回しだ? お前なら自分の判断でさっさと殺ると思ったが」

 訝しげな視線を向けられた。


「道案内のお礼、してなかったしな。第一、連れの為にこの国を守ると言ったろ。それなら、この国にとって良いようにするのも守る内だ」

 一度目を見開き、次いで頷く殿下。


「まずは情報を聞き出して、その後処刑が妥当だな。人間、奴を拘束する手段を持っているか?」

「ホイ来た、ボーラだな」

 封印の縛鎖グレイプニルを投げて悪魔族を拘束。

「お前、便利だな」

「そこは”お前の遺失魔道具アーティファクト”って言えよ、俺は道具じゃないぞ」


 ついでに銃剣で悪魔族を撃つ。

「あがっ!? ひぎっ!? がぁっ!?」

「おい、殺すなって言ったよな!?」

「非殺傷弾だよ、吸収弾ドレインバレット。魔力抜いといた方がいいだろ」

「理解はするが、傍から見たら拷問の最中だな」

 ドン引かれた。

「あぎぃっ!? ひぐぅっ!!」

 魔力がッ 抜けるまでッ 撃つのをやめないッ!! 


************************************************************


 魔力駆動二輪車フェンリルで王都前へ帰還する。

 その際、皆からの視線がえらい痛かった。元の人間型に戻った悪魔族を縛鎖グレイプニルで拘束したまま、フェンリルで引き摺ってきたせいかな? 

「俺、お前が怖い」

「失礼な、効率を優先した結果だ」

「そこが怖いんだよ」

 解せぬ。


 僕達の姿を確認して、ドン引いていた皆も近寄ってきた。

「お、お帰りなさいませご主人様」

 なんかメイド喫茶で聞くような挨拶で出迎えられたが、アイリは何でそんな顔してるのかな? 


「ユート君、その……引き摺られていた女性は……?」

「悪魔族。殿下が尋問したいって言うから、捕縛してきた」

 その言葉に獣王陛下が「うむ」と頷くが、陛下もドン引きだ。

「な、なぜ引き擦って来たんです? ご主人様」

 クラウスがそんな事を聞いてくるが、何を当たり前の事聞いてるんだ? 


「僕が運転、殿下は後ろに乗る。フェンリルにはもう乗れない。じゃあ引き摺って来るしか無いじゃないか」

「「「「その理屈はおかしい!!」」」」

「丁重に抱えてやれって言うのか? 敵にそんな温情いらんだろ。大丈夫、生きているよ……まだ」

 身体のあちこちが擦り傷やらなんやらで血塗れで、衣服も擦り切れてほぼ全裸だけど、ギリギリ生きてます。

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