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刻印の付与魔導師(エンチャンター)  作者: 大和・J・カナタ
第22章 地球

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22-02 二人の勇者/強力タッグ

これまでのあらすじ:マサヨシが限界ギリギリ。

「ユート・アーカディア……アヴァロン……ッ!!」

 地面に伏しながら、マサヨシはユートの名を呼ぶ。そんなマサヨシに、ユートは苦笑した。

「あのな、限界ギリギリで口を開くのもだるいんだろうが。だったら、一々フルネームで呼ばなくてもいいだろ」


 そう言いながらユートは指先に魔力を集中する。その指先に光の紋様が浮かぶと、それをピンッ!! と弾く動作をした。

 紋様は無論、刻印付与。効果は”時間巻き戻し”である。

 マサヨシの身体に刻印が張り付くと同時、その身体が光り輝く。


 本人は気付いていなかったが、マサヨシは生命力を魔力の代わりに消費して雷の洗礼サンダーレインを撃ち続けた影響で、その身体はボロボロだった。茶髪は白く染まり、頬は痩けていたし、肌も干乾びたようにガサガサだったのだ。

 それが、元の若々しさと活力を取り戻していく。


「こ、これは……」

 息をするのも辛い状態から、体調万全の状態へと戻るマサヨシ。まだ少し、怠さを感じる身体に鞭打って起き上がる。

「魔力は、これで補え」

 流れるような動作で、ごく自然に銃を構えて引き金を引くユート。街中に響き渡る発砲音。

 マサヨシが「何をするだぁっ!?」という顔になり、次いで呆気に取られる。痛みはなく、むしろ着弾点から力が身体に染み渡るような感覚。

「魔力譲渡の弾だ、生命力はさっきの巻き戻しで取り戻せたからな」


 回復してくれたのだと気付き、マサヨシは複雑な心境を抑え込んでユートを見る。

「……ありがとう」

 マサヨシの言葉に、ユートは一瞬目を大きく開き、そして細めた。その表情は優しい表情で――


「いや、そもそもお前バカだろ?」

 ――罵倒した。


「なっ!? お前、人が折角礼を……!!」

「いや、お前アプリ確認してないのか? 聖域を使えば、発動時の魔力だけでアジ・ダハーカを封じれたのに」

「な……っ!?」

 確かにマサヨシは、変身してから特に円卓の絆ラウンドリンクについては気にしていなかった。まさか、守護の根源魔法アカシックレコードが搭載されていたとは……!! という表情だ。

「それに、宝物庫ストレージに色々と収めていたんだぞ? 出してみ、雷属性が付与された銃あるから」

 言われて、恐る恐る魔力を流す。


 ――あった。


 これがあれば先程のユートのように、アジ・ダハーカを吹っ飛ばせたのだ。

「な、何で教えてくれなかったんだ!?」

「いや、自分で調べろよそれくらい。わざわざ日本語で、聖域とか宝物庫とか表示あるじゃないか」

「変な所で芸を細かくしないで、重要事項を解りやすくしろよ!」

「自分で少しは考えろよ! 第一、何で雷の洗礼サンダーレインなんだ! 良いか、雷の洗礼サンダーレインは範囲指定で無駄に魔力を割くんだ、足止めなら雷の槍サンダージャベリンで良いじゃねぇか!」

「効くとは限らないだろう!」

「試してから言え! 少なくとも魔力消費と持続時間はジャベリンのが上だろうが!」


 顔を合わせるなり、言い合うユートとマサヨシ。そんな二人に、首を一つ吹き飛ばされたアジ・ダハーカが怒り心頭の様子で迫る。

「グルゥァァァァォオォァォ!!」

「「うるさいっ!!」」

 同時に銃口を向け、アジ・ダハーカに向けて引き金を引くユートとマサヨシ。無論、魔力を流して雷属性付与を発動した、レールガンである。


――ドパァンッ!!


 完全に重なった銃声。同時に吹き飛ばされる、アジ・ダハーカの残った二つの首。全ての首を失ったアジ・ダハーカが、力無く倒れ伏す。

「そもそも何でお前がここに居る!!」

「駄神が尻尾巻いて地球にトンズラしたから、ドタマぶち抜く為に追っ掛けて来たんだよ!!」

「あっちはどうなってるんだ!! 放り出してきたんじゃ無いだろうな!!」

「代役に未来の俺が来てるからプラマイゼロか、プラスだろうが!!」

「みら……っ!? お前、そんな事まで!?」

「今の俺はまだできねぇよ!! 文句あるか!!」

「いちいちキレるな!!」

「お前が言うな!!」


 ……


 言い合う二人に向かって、魔物が集まっていく。無論、ディスマルクの指示だ。

 ディスマルクは一般市民や警察官・自衛隊員を甚振るよりも、苦汁を舐めさせられたユートと、自分に口答えをしたマサヨシを殺す事を優先したのだった。

 そして、魔物が二人を完全に包囲した所で、声をかける事にした。

『落ちこぼれ同士、仲が良いようだが……』

 しかし、ディスマルクの言葉は無視された。


「お前は何で、あぁ言えばこう言うんだよ!!」

「お前が感情論で突っ走るからだろうが!!」

「お前が無感情なだけだろう!!」

「ふざけろ、ちゃんと感情あるわい!!」


 ……無視されて、ディスマルクの苛立ちが増した。

 しかし、ここは神として威厳溢れる態度を崩さず、虫けらである生意気な小僧共に絶望を味合わせるのが第一。

 ユートは神になったが、この世界にユートを信仰する者はいない。対するディスマルクは、地球の神の信仰心を搾取する手筈を整えた上で行動を起こしたのだ。

 そう、自分が圧倒的優位に立った今、愚かな小僧共をジワジワと嬲る事で、これまで募り募った鬱憤を晴らす!!


『ふん、神たる我が言葉を無視するとは……』

「うるさい、今は取り込み中だ!後にしろ!」

「尻尾巻いて逃げ出した負け犬が、いっちょ前に吠えんな!」

 ……にべもなし。

『図に乗るなよ、クソクズ共がぁっ!!』

 はい、ディスマルク神が本性を現しました。


「……話の続きは後にするか」

「そうだな、キャンキャンうるせぇ駄神を躾けないとな」

「躾って、まさか飼うのか?」

「処すに決まってんだろ」

「まぁ、お前はそうだよな……」

 ディスマルクの激昂により、二人は一時休戦の方針を取るらしい。つまり……。


「さっさと終わらせて、ヴェルスフィアの方で後片付けしないとな……未来の俺が、そこまでサービスするとは思えないし」

 銃剣を両手に構えるヴェルスフィアの勇者。

「早く事態を収拾して、皆を元の生活に戻らせないと……きっと、今も避難先で混乱しているだろうし」

 聖剣を片手に立つ、地球の勇者。

「じゃあ、やるか」

「あぁ、やろう」

 二人の勇者が、並び立った。


『……っのぉガキ共がぁっ!! 殺せ!!』

 その言葉と同時に、一斉に襲い掛かるは魔物の群れ。千を越える魔物達が殺到する中、ユートとマサヨシは鼻を鳴らした。

「おい、単細胞バカ。宝物庫ストレージにお前用の銃剣入ってるから使え。使いこなせるならな!」

「誰が単細胞だ、この人でなしが! 使いこなしてやるから、見てろこの野郎!」

 罵り合いつつ、互いに戦闘準備を整える。


「……有象無象を間引く。半径五十メートルでいいな」

「構わない、好きにしろ」

「だったら……地雷パイセン、君に決めたっ!!」

「市街地で使う物じゃないだろぉっ!?」

 しかし、既に賽は地雷パイセンと共に投げられた。

 ――ズドォォォンッ!!

 開幕の花火? いえ、魔物が地雷パイセンによって爆ぜる音ですね。


「……地球でもやりたい放題かよ!?」

「心配するな、流石に一般市民がいたらやらんから」

「当たり前だっ!!」

 そう言った瞬間、マサヨシの顔の真横を銃弾が通り過ぎた。その弾丸が、マサヨシに迫っていた魔物の頭部を穿つ。

「あ……危ないだろうがっ!!」

「阿呆、お前が目で確認して避けられるのは織り込み済みに決まっ……」

 ユートの顔の真横を、雷撃が通り過ぎた。雷撃はユートに迫る魔物を黒焦げにした。

「真性のド阿呆かっ!? 雷撃が掠りでもしたら、俺が麻痺するだろうが!!」

 そう言いながら、ユートが引き金を引く。

「お前が俺の魔法に素直に当たるはず無いだろう!!」

 反論しつつ、マサヨシが雷の矢を放つ。

支配者ドミネイター使ってなかったら、当たっても不思議じゃねぇよ!!」

 マサヨシの背後に迫る魔物に、弾丸を撃ち込みながらユートは叫ぶ。

「なら使えばいいだろう!!」

 ユートの背後に迫る魔物を、マサヨシの落雷が襲う。

「魔力を温存させろド阿呆っ!!」

「俺よりステータス高いくせに、注文が多いんだよ!!」

 同時に銃剣と聖剣を振るい、迫る魔物を斬り裂く二人。


「そもそも、魔法を多用し過ぎるなよ! 何のための銃剣だ!」

「使い慣れない武器に命を預けられるか!」

「使いこなすって言ったのはどこのどいつだ、この阿呆!」

「誰が阿呆だ、この馬鹿!」

「何だと、このオタンコナスッ!!」

「何だよ、素っ頓狂!!」

 徐々に罵倒のバリエーションが乏しくなり、ただの子供の言い合いになっていくユートとマサヨシ。


 しかし、会話の内容とは裏腹に二人のコンビネーションは絶妙だった。それは、衝突を繰り返したからこそ。

 ユートの放つ通常弾を避けながら、マサヨシは聖剣で銃弾が当たらない魔物を斬り裂く。ユートはユートで、マサヨシの聖剣の射程外の敵をレールガンで狙撃していく。更に、同時に発動する魔法。互いの死角を補う、雷の矢サンダーアロー


「マサヨシのクセに生意気な!」

「何処のガキ大将だ!」

「誰が音痴だと!?」

「言ってないだろう!!」

 言い合いつつも、不思議と息が合う二人。迫り来る魔物達を銃で、剣で、魔法で、時折格闘技で撃墜し、その合間に口喧嘩をする。


 ユートにとって、マサヨシという存在は本人が思うよりも軽くなかった。マサヨシにとってユートが羨望の対象であったように。

 ズレてはいても自分の思いに真っ直ぐで、正面からぶつかっていくマサヨシの姿勢を認めていた。そして、何よりも彼の中にあった”正義”への強い信念。

 切り捨てようと何度も思っても、切り捨てられなかった最大の理由。マサヨシに対する言葉では言い表せない感情。

 何度挫けても、何を取り零しても最期の最後まで譲れないと、抱き続けたその信念……それが、少し眩しく感じたのだ。

 

 悪態をつきつつも、彼等の口元は緩んでいる。無意識下で、互いに望んでいたのだろう……背中を合わせて力を振るう、今この瞬間を。

「ばーかばーか!!」

「子供かっ!!」

「うるせぇ、前世合わせたらお前の倍は生きてんだぞ!!」

「オッサンじゃないか!!」

「テメー、ぶっ飛ばすぞ!?」

「言い出したのはお前だろうが!?」

 とても、そうは思えないかもしれないが。


************************************************************


 口では衝突しつつ、連携して魔物を殲滅し切ったユートとマサヨシ。

『馬鹿な……たかが二人に……』

 唖然とした様子のディスマルクに、ようやく二人は口喧嘩を中断した。

「ディスマルク、お前なんかにこの世界を好きにはさせない!」

「さっきは干乾びそうだったクセに……まぁ良いか。ディスマルク、年貢の納め時だ」

 並び立つ二世界の勇者は、傷らしい傷もない。ユートは無論の事、マサヨシもユート製遺失魔道具アーティファクトの補助を受け、危なげ無く魔物を圧倒していた。


『調子に乗るなよ……!! 魔物が現れたのが、この地だけだと思ったか!!』

 ディスマルクの言葉に、二人の眉間に皺が寄る。ユートは即座に、真実の目プロビデンスを駆使して状況把握を開始した。

「まさか……!?」

「……チッ、日本だけでも八箇所。全世界合わせたら百箇所近くに、あの魔物産みがいるか」

「百っ!?」

 あまりの数に、マサヨシが目を見開く。


 あんなものが次々と魔物を産み出し続けたら、この世界は魔物だらけになる。そうなれば、国家が取る対応も最悪の対応になるかもしれない。核兵器を保有する国は、無くなってはいないのだ。


「……どう、すれば……」

 愕然とするマサヨシに、ユートが声をかける。

魔導兵騎バハムート使って、死ぬ気で駆逐すれば……被害は、どうしても出るかもしれないけど」

 神化すれば、殲滅は容易い。しかし、仲間達がヴェルスフィアに居る以上、神化に必要な信仰心が得られない。

 百に届く場所の防衛に対し……流石のユートも、手持ちのカードはそれ程多くは無かった。


 ――認識している分は。


 認識の外から呼び掛ける声が、ユートの脳裏に届いた。

『ユーちゃん、聞こえます? 今、何処ですか?』

 ユートに、念話が届いた。それは聞き間違えるはずも無い、愛しい婚約者の声である。

『キリエ!? どうして地球に……』

 単独で来たはずなのに、何故ここにキリエが居るのかと、ユートは困惑した。そんなユートの困惑に、キリエも困惑で返す。

『え? 何故って、ユーちゃんが転移を……』


 ”自分が転移させた”と聞かされ、ユートはようやく気付いた。未来の自分の仕業だろう、と。

『……野郎、最初っから言えや』

 ぼやきつつも、自分が同じ状況下にあれば同じ事をすると、ユートは理解している。だって、その方が場が盛り上がるから。自分の考えそうな事だ。

 かと言って、今はそれを説明する時間的余裕もない。

『ちょっと待っててくれ、すぐ指示出すから』

『あ、はい……』


 ユートは更に真実の目プロビデンスを駆使して、状況を確認する。

 キリエだけでなく、アヴァロン王国の面々……更に、世界各国の戦友達が居る。何故か、アヴァロン王国……アーカディア島ごと、だ。

『あのバカ何やってくれちゃってんの!?』

 思わず、念話で悪態をついてしまった。それが時間を越えたブーメランである事に、今はまだ気付かない。

『ユ、ユート君!?』

『ユート、大丈夫なの?』

 突然のユートの憤慨に、仲間達が困惑する。


 予想外の事態ではあったが、なんとか気を取り直したユートは、仲間達に状況を周知する事にした。

『気にしないでくれ。詳細な事情は後で説明するけど、ここは勇者達が暮らしていた世界・地球だ。ディスマルクが地球に魔物をばら撒いて、蹂躙する様を愉しむつもりだったらしい』

 その言葉に、勇者達が息を呑んだ。自分達の故郷が魔物に蹂躙されると言われれば、心中穏やかではいられない。


『問題は場所が多い。皆に来て貰ったのは、世界各地に散って魔物の討伐をして貰いたいから……だろうな』

『ユート、だろうとは何だ?』

『お前が俺達を連れて来たんだぞ、そんな他人事みたいに……』

 友人達から疑念の声が上がるが、説明している時間はない。

『それも後でちゃんと説明する。今は、時間が惜しい』

 そこまで言って、自分のステータスを確認する。

 ――よし、いける。

 ユートは、かけがえのない仲間達にこれからの方針を提示する。

『総員、魔導兵騎で出撃準備を進めてくれ、戦場へは俺が転移させる。優先殲滅目標は、宙に浮く魔物を産み落とす人型の魔物だ』


 そこまで言って、ユートは気付いた。

『そして、貴様らを甚振り尽くしてくれるわ!!』

「くっ……それでも、俺達は諦めないぞ!!」

 ディスマルクとマサヨシが、問答していた。しかも、何か盛り上がっている気がする。しまった、完全にシカトしてたよ……と、ユートが頬を掻く。


「マサヨシ、マサヨシ。防衛の目処、付いたから」

 ユートの言葉に、マサヨシは目を見開いた。同時にディスマルクも、その言葉を聞き咎める。

『口から出任せを。貴様ら二人に何が出来る!!』

「二人……? ははは、バカだなぁ」

 余裕の表情をするユートに、マサヨシはある事に思い至る。

 送還された自分。転移して来たユート。ならば、もしかして……。

「ま、すぐに解るさ……じゃあ、そろそろお仕置きタイムと行こうか、ディスマルク」

 その言葉と同時、ユートの身体から光が放たれる。


「――変神へんしん


 光が収まったそこには、創造神モードになったユートの姿。

「……ユート・アーカディア・アヴァロン」

 放たれる神のオーラに、マサヨシが息を呑む。

『バカな!? 貴様はこの世界で信仰心を得られんはずだ……!! なのに何故!!』

 ユートが神化すれば、ディスマルクの優位性は無くなる。そこで、ディスマルクはようやく気付いた。

『まさか……他にも、世界を越えたのか!?』

「正解だ、やれば出来るじゃあないか」

 そう言いつつ、ユートは手元の魔石を見て苦笑する。神力を込められたそれは、魔石というより神石と呼ぶべきモノになっていた。

 ディスマルクとの戦闘で神化する為の物と、ヴェルスフィアに帰還する際に神化する為の物だ。

「こいつは緊急時用かねぇ。さて、始めるか」

 そう言いながら、ユートは念話を仲間達全員に向けて発した。


『これより、魔物のいるエリアの上空へ転移させる。準備は良いか?』

 それに対する返答は、全て了承を示す言葉だった。

『それでは、地球防衛戦開始だ。総員、出撃!!』

 移動の根源魔法アカシックレコードを発動し、魔導兵騎に搭乗した仲間達を転移させていく。一兵卒から国家元首まで、多くの仲間達が戦場に躍り出る。


「マサヨシ、俺達はディスマルクをぶちのめしに行くぞ」

「望む所だ、ユート・アーカディア・アヴァロン!」

 未だにそう呼ぶマサヨシに、ユートは苦笑する。

「いつまでそう呼ぶ気だ?」

「……」

 ユートの呼び掛けに、マサヨシは口を噤んだ。


 蟠りは、まだ残っている。しかしマサヨシは、以前ほどユートに対して悪感情を抱いてはいない。

 好きか嫌いかで言われれば、やはり嫌いな人物だ。それでも、身を焦がすような嫉妬心は無くなっていた。殺したいと思うほどの憎悪も、霧散している。


「やっぱ、お前が嫌いだよ……ユート」

 その言葉に、ユートは笑った。

「気が合うな、俺もお前が嫌いだよマサヨシ」

 清々しいまでの笑顔で、そう返す。

「……前ほど、嫌いじゃないけど」

 笑顔のユートから顔を背けて、マサヨシはポツリと呟いた。ユートはそれに苦笑して……。

「それはまた、奇遇すぎる。俺も前ほどお前が嫌いじゃない……と良いな」

「そこは断言しろよ!」

「いやぁ、だってさぁ……」

「お前……空気を読まないな、本当に!!」

「お前に言われたくないわ!!」


 再び言い合いを始めたユートとマサヨシ。そんな二人に近付く者達が居た。

「おー、やってるやってる!」

「相変わらず……なのでしょうか?」

「いや、フリード。ユート君とマサヨシ殿は、喧嘩友達の様な間柄になったに違いない」

「二人共生き生きしているし、グレンの言う通りかもね」

 タイシ、フリードリヒ、グレン、そしてユウキ。

 アヴァロン王の右腕・左腕に、切り込み隊長、そしてアヴァロン王とエメアリア女王の懐刀。

 女神達を除けば、自他共に認めるアヴァロン王国最高戦力だ。


「おっと、来た来た」

「……」

 お気楽に出迎えるユートに対し、マサヨシはバツの悪さを感じる。何せ、アヴァロン王国を脱走して神に寝返り、ユートと敵対したのだ。

 しかし、最初に声をかけたのはユウキだった。

「鏑木さん的には、久し振りになるんですよね。僕達からしたら、つい先日なのに」

「あ、あぁ……その、桜井……それに、皆……」

 謝罪を告げようとするマサヨシ。しかし、それを止めたのはタイシだ。

「まぁまぁ鏑木君。そういう込み入った話は後で、落ち着いた時にしようよ」

 そんなタイシの言葉に、グレンやフリードリヒも頷く。

「……あぁ、後で必ず」

 マサヨシの強い意志を宿した目に、四人は穏やかな表情で頷いた。


「……さ、それじゃあ始めようか」

 そう促したのは、やはりユート。その手には……円卓の絆ラウンドリンクが握られていた。

「そうだね、ユート」

「はい、ユート様」

 ユートの右にユウキが、左にフリードリヒが並ぶ。

「行きましょう、マサヨシ殿」

「イッツ・ショータイムってヤツだね」

「……あぁ、行こう!」

 グレンがフリードリヒの隣に、マサヨシがユウキの隣に並ぶ。マサヨシの隣にタイシが並び、六人が並び立った。


 同時に腹部に円卓の絆ラウンドリンクを押し当てる。六人は流れるような操作で変身用のアプリを起動し、待機音が流れ出した。サッとスワイプして変身シークエンスを完了したユート達は、それぞれに変身ポーズを取り、高らかに宣言する。

「「「「「「変身!!」」」」」」

 マサヨシまで、即興でだ。やはり、正義の味方としての作法だろうか。

 それはさておき、それぞれの身体をスキンが覆い、格納庫ガレージに通じる魔法陣から空中に取り出された装甲が、刻印付与によって装着されていく。最後に各々が武器を取り出し、戦闘準備は整った。


 地球の勇者、マサヨシ・カブラギ。

 暗殺者の勇者、タイシ・タナカ。

 熟練の冒険者、グレン・ブライトン。

 英雄の息子、フリードリヒ・ムラーノ。

 錬成の勇者、ユウキ・サクライ。

 刻印の付与魔導師、ユート・アーカディア・アヴァロン。


 敵はヴェルスフィアに続き、地球までをも蝕む悪しき世界神・ディスマルク。

「さぁ……決着の時間だ」

 悪神に対する、反撃が始まる。

過去最高に執筆速度が早かった、ユートとマサヨシの言い合いしながら連携。

楽しく書けましたー!

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