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刻印の付与魔導師(エンチャンター)  作者: 大和・J・カナタ
第2章 ミリアン獣王国

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02-03 奴隷商人/深夜の語らい

これまでのあらすじ:獣人奴隷の暫定主人になりました。

 姉さんが操縦し、馬車は街道を順調に進む。御者台に座るのは姉さん、荷車に僕とアリス、そして獣人達四人が思い思いに座る。

 盗賊達はと言うと……。

「むがーっ!! むぐーっ!!」

 荷車の後ろに増設した、簡易荷車に積んでいる。勿論、両手足を縛り猿轡をした状態だ。

 昨夜作っていたのはコレである。

 尚、馬に負担がかかるので、随時僕が付与魔法で強化してあげている。馬さん頑張ってくれているからね、大事にしないとね。


 そして進むこと四時間ほどで、南西の町が見えて来た。ここは王国南西部・ルイス伯爵領の端の町らしい。

「ルイス伯爵は人格者で、領地経営の手腕を高く評価されている方ですね」

「へぇ、そうなのか。アリスは面識があるの?」

「一度だけ、晩餐会でご挨拶した事がありますよ」

 そんな事を話ながら、町の門へ向かう。

 四グループ程の商人や冒険者が門番によるチェックを受ける列を形成しており、僕達はその後ろに並んだ。


 三十分ほど待って、僕達の番が来る。

「ここはベルクリエの町だ。身分の証明を」

「私達三人は冒険者です」

 姉さんがライセンスを差し出すのに合わせ、僕とアリスもライセンスを提出する。

「ふむ、確かに。それで、その獣人達と……後ろのは、盗賊かね?」

「ええ、奴隷商人を襲っていた盗賊を捕縛致しました。商人は残念ながら、助ける事は出来なかったのですが」

 姉さんの説明に、門番はなるほど、と頷く。


「念の為、全員に鑑定板によるチェックをさせて貰う。賞罰を確認し問題が無ければ、良いだろう」

 門番が後ろに控えている兵士に声をかけると、五分もせずに鑑定板を持って戻って来た。

「では、一人ずつ手を置いて貰う」

 当然、僕達は一切問題無い。獣人達も賞罰は”目”で確認しており、問題は無かった。


 そして……

「確かに盗賊だな。こいつらは、こちらで引き取ろう。奴隷達と馬車は、君達の所有物となる」

 所有物……ね。この門番さんは悪い人ではなさそうなんだが、獣人に対する偏見はあるようだな。

「奴隷達はこの街の奴隷商で契約を済ませるといい。馬車は私が証明書を発行しよう。盗賊の捕縛、感謝する」

 しかしまぁ、悪い人ではなさそうだからなぁ……嫌味を言うのも違う気がするし、スルーしよう。後ろの獣人達は、後でフォローするしかないな。


 サラサラと記入していき、最後に印章で押印した門番が三枚の羊皮紙を差し出す。

「これが奴隷商人への証明書だ。馬車の証明書はそのまま保管したまえ。それと、盗賊捕縛の証明書も発行した。伯爵様の直轄地にある兵舎へ提出すれば、報奨金が出るはずだ」

「色々とありがとうございます」

「これが仕事だ、さぁ通りたまえ」

 門番に促され、馬車を進ませる。後で、追加の荷車は宝物庫ストレージにしまっておこう。


 ……


「……ご主人様、よろしいでしょうか」

「アイリ、だったよね? なに、そのご主人様ってのは」

 突然、呼ばれ慣れない呼称で呼ばれ、誰に話しかけてるんだ? なんて思ってしまった。

「いえ。契約はまだですが、私達は御三方の所有物と認められました、名実共にご主人様です」

 あ、一応対外的にはそうなるのか。ただ単に、保護しただけって感覚なんだよなぁ。


「それで、何かなアイリ?」

「ご主人様は奴隷契約後に、私達をすぐ解放すると仰いましたよね?」

 首肯する。確かに言ったし、今もそのつもりだ。

「人間族の領域で私達を解放するとなれば、迫害や再び奴隷になる可能性があります」

 ……言われて気付いた。確かにその通りだ、失念してしまっていたな。


「済まない、その点には思い至っていなかったよ。確かにその通りだね。それで、どうすべきだとアイリは思っているのかな?」

「はい、ご主人様達はミリアン獣王国へ向けて旅をなさっていると仰っていました。ならば、私達を解放するならば獣王国に着いた際にして頂きたいのです」

 獣王国に着きさえすれば迫害されたり、奴隷商人に捕まって再び奴隷落ちなんていう事態が避けられる。中々に合理的だ。


「僕はそれで構わないよ。他の三人はどうかな?」

 クラウス達も、アイリの説明に納得がいったようで異論は無かった。

「解った、それじゃあ君達四人は対外的に僕の奴隷と言う事にするね。そして、ミリアン獣王国で君達を解放する事を約束するよ」

 その言葉に、クラウス達も揃って頷いた。


 ……


 僕達は、そのまま奴隷商へ向かった。思ったよりも小奇麗な建物だ。

「いらっしゃいませ、本日は……奴隷の売買でしょうか?」

「いえ、奴隷契約のみを依頼したいんです」

 盗賊に襲われた奴隷商人が死亡し、主人不在となった奴隷を保護した事。奴隷達をそのまま自分の奴隷とする為、契約手続をしたい事を説明した。


「そう……ですか。ふむ……」

 奴隷商人はアイリ、メアリー、ジルに視線を向ける。その目は欲を感じさせる、厭らしい視線だった。

 アイリ達も、表情を引き締めて表に出さないように務めているが不快気だ。


「そちらの獣人奴隷ならば、買い手も多そうです。このままお売り頂けるならば、相場に色をお付けしますが?」

「その気はありません」

「まぁ、そう言わずに話だけでも……」

 この奴隷商人は、アイリ達の商品価値が高いと判断したらしい。それで買い取ろうとしているようだが……随分、しつこいな。

 アレか? アイリ達の元の主人だった奴隷商人、コイツと売買契約でもしていたのか? だとしたら、面倒な事になりそうだな。


 姉さんとアリスに視線を振ると、二人も同じ考えに至ったようだ。揃って首肯を返して来る。

「契約をして貰えないならば用は無いな。失礼するよ」

 そう言って踵を返す僕達に、慌てたように奴隷商人が追い縋る。

「お、お待ちを! それならば二倍、二倍出しましょう!!」

「姉さん、アリス。皆を連れて表に出ていて」


 獣人達に追い縋ろうとする奴隷商人を遮る様に、僕は立つ。

「言っておくが”俺”は前言を撤回するつもりは無い。それとも、何か理由でもあるのか?」

 睨み付けると、奴隷商人は苦々しい表情で口を開いた。

「あの奴隷はサルコという奴隷商人から、私が購入する予定だった奴隷で御座います。故に、所有権は本来ならば私にあるものかと存じます。そこを曲げて、対価をお支払いしますので譲って頂ければと……」

 確かに、死んだ奴隷商人の名前はサルコだったな。でもそんなの関係ない。


「主人無しの奴隷は保護した者の所有となるはずだ。売買契約を結んでいたにしろ、所有権は俺にあるはずじゃないのか?」

 そして、僕は門番からの証明書を取り出し、ヒラヒラと見せびらかすように見せる。

「これは町の門番からの証明書だ。正式に彼等は俺の所有となっている。文句なら兵士達か伯爵閣下にするんだな」

「待っ……待って頂きたい! お待ちを! おいっ! 待てと言っている!!」

 奴隷商人を無視し、僕は商館の外に出た。


「マップによると、もう一軒奴隷商人がいる。そっちに依頼だな」

「そちらが真っ当な奴隷商人ならいいんですけどね」

 真っ当な……奴隷商人?


 ……


「かしこまりました、それでは奴隷契約を代行させて頂きます。奴隷一人につき銀貨五枚となっております」

 いました、真っ当な奴隷商人。何でもこの奴隷商人は、国や領で認められた奴隷のみを扱うのだそうだ。つまり、身売りか犯罪奴隷である。

 大丈夫、だって称号が”真っ当な奴隷商人”になってるんだもの……。


 銀貨二十枚を支払い、獣人達との契約は無事に完了した。

「ご利用ありがとうございました。それと余計かもしれませんが、今日はどちらかにお泊りでしょうか?」

「いえ、宿はこれから探そうと思います」

「やはりそうでしたか。この町は獣人に対し、偏見が強い地域にございます。その為、獣人には倉庫や馬小屋すら貸さないという宿が多いものですから。彼等にとって、不快な事が起こるでしょう」

 なるほど、この助言はありがたい。さすが真っ当な奴隷商人。


「では、素直に野営する事にしましょう。助言、感謝します」

「いえいえ。それでは良い旅を」

 にこやかに笑いながら、商人は深くお辞儀をして見送ってくれた。


 ……


 さて、町の外へ出て野営の準備を進める。布陣は昨日と変更無しだ。

 僕は二日連続で見張りになるので、クラウス達が自分がやると言い出したのだが却下した。

「まだ痩せ細っている君達に、魔物や盗賊……襲撃者の相手は出来ないだろう?」

 それを告げると、全員が僕を凝視する。


「もしかして……昼間の奴隷商人か?」

「クラウスさん、ご主人様に失礼ですよー」

 クラウスの言葉遣いに、メアリーが苦言を呈す。どっちが歳上なのか解かんないな。

「メアリーはしっかりしているね。まぁ、あまりにも酷くなければ、僕は目くじらを立てたりしないからさ」

 そう言って頭を撫でてやると、メアリーは嬉しそうに目を細めた。


「クラウスの言う通り、一軒目の奴隷商人が不穏な動きをしている。即座に対応するなら、索敵が出来る僕が最適だ」

 そう、マップで町の中を見てみると、奴隷商人の周囲にいる連中が赤光点に変わってるのよね。数は十五人か。


「それならば、一緒に起きています!」

 ジルが手を上げるが、却下だ。

「戦闘になれば、自分の身を守って貰うために戦ってもらう。その時に眠くて油断したなんて事態は論外だ。勿論、敵は僕が倒すから心配しなくていいんだけどね」

「私もがんばります!」

「えぇ、私達がついていますから」

 僕に追従する姉さんとアリス。まぁ、戦闘時に呑気に寝ててとは言わん。


「というわけで、武器を渡します。少し慣れておくように」

 獣人達に武器を見繕い、渡していく。


 ……


 マップを駆使して、警戒する僕。すると町で奴隷商人に雇われたゴロツキ共が、こちらに向かって来ているのを確認した。

「三十分後に会敵だな」

 十五分したら、仮眠を取らせている皆を起こそう……と思っていたのだが。


「ご主人様、何かお飲み物をご用意しましょうか?」

 アイリが静かな声音で近付いてきた。起こす手間も省けるし、まぁいいか。

「頼むよ。アイリの分も用意するんだよ?」

 困ったように笑いながら、アイリはお茶を淹れ始めた。


 少しして、カップを二つ持ったアイリが歩み寄ってくる。

「お待たせしました」

「ありがとう、アイリ」

 カップを受け取ると、茶葉の香りが鼻孔をくすぐる。


「それで、どうかしたのかな? 眠れない?」

「……お聴きしたいんです。ご主人様は何故、獣人である私達に良くしてくださるのですか? 何故……私達を……」

 不思議そうに、囁くように。

「ご主人様にとって、獣人はどんな存在なのですか?」

 アイリの視線が、僕を射抜いた。

 不安と、期待の入り交じった視線。垂れ下がるウサ耳。いや……ウサ耳が可愛いのは置いておこう。

 これは、誤魔化すのはいけないな。それはアイリに失礼だ。


「僕にとって獣人は、同じヒトだよ。僕達と何ら変わらない」

 それは期待していた言葉だったのだろうか? アイリの表情が和らいだ。

 ウサ耳はひょこんと跳ねる。感情表現豊かなウサ耳だな。


「って言うか、獣人に知り合いがいるし」

「えっ、そうなのですか?」

「子供の頃からうちに遊びに来てくれる、父さんの友達でね。商人だから、色んな商品を売ってくれるんだ」

 物々交換でな。


「だから、アイリ達を差別したりしないよ。それにアイリの耳とか尻尾も可愛いとしか思わないし」

「かわっ!?」

 僕の言葉に、アイリが顔を真っ赤にした。ウサ耳がピーン! と天を衝いている。

 可愛いって言われ慣れてないのだろうか? ずっと、「かわ……かわ……」と壊れたレコードみたいになっている。

 何か、テントから顔を覗かせた姉さんがサムズアップしてんだけど、何しとんの。


 ……


「さて、それでは諸君! これより阿呆商人に雇われた馬鹿どもが、我々を害そうと向かって来ている!」

 ショートソードを地面に突き刺し、その柄尻に両手を置いて仲間達に呼び掛ける。反応は、困惑と苦笑いだ。

「しかし、我々は狩られるだけの獲物では無い! 馬鹿共の身体に教え込んでやれ、狩られるのは奴らの方だ!」

「「「「お、おー……」」」」


 すると、視認範囲に馬鹿共の姿が見えた。

「来たな、馬鹿共! いいか、お前達は身を守れ! 今、お前達のご主人様は俺だからな! 俺の許可なく傷付いたり死んだりしたら、えっと……あれだ! 泣くぞ、俺が!」

「「「「あっ、はい……」」」」

「よろしい、ならば戦闘だ! という事で、ゴム弾どーん」

 宝物庫ストレージから出した銃剣から発射したゴム弾を、眉間にブチ当てて一人。

「「「「その剣何のためにあった!?」」」」

 地面に刺さったままのショートソードさんが、寂しそうである。


 そして、五分後。なんて事は無かったです。馬鹿みたいに突っ込んで来るから、ゴム弾だけで十五人制圧。

「うーん、こいつら相手じゃゴム弾も勿体なかったか? ショートソードさんで無双でも良かったかも」

「まぁ、被害ゼロですしいいじゃないですか、ユーちゃん」

「そうですよ、ユート君」

 それもそうね。


「うん、もう襲撃は無いだろう。一応、クラウスが見張りに立ってくれ」

「あん? アンタ……じゃねぇ、ご主人様はどっか行くのかい?」

 敬語、練習しようね。

「あぁ、このゴロツキどもに、雇った黒幕……お仕置きが必要だろう?」

 ニヤリと笑ってみせる……えっ、何で引いてるの? 姉さんまで!

「ユーちゃん、すっっっごく楽しそうな顔してますからね?」

「わ、悪そうな顔してました」

「ご主人様、整った顔立ちをされてるのですから、自分の表情に気を配るべきですよ」

 姉さん・アリス・アイリにそう言われ、クラウス・ジル・メアリーもウンウンと頷いた。うーん、解せぬ。


************************************************************


 いやぁ、清々しい朝だ。

 折角だし、馬の飼料を購入しようと町に再度入ったら、何でも十五人程の素行の悪い男達が、股間を抑えたまま気絶していたそうだ。不思議な事もあるもんだなー。


 更に言うと、悪どいと評判の奴隷商人が、奇妙な病にかかった状態で発見されたそうだ。

 発見した使用人によると、意識はあるのに何も話せず、自分の意志で身体を動かす事が出来ないらしい。いやー、怖い病があるもんだなー。

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