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刻印の付与魔導師(エンチャンター)  作者: 大和・J・カナタ
第15章 クロイツ教国Ⅱ
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15-07 魔剣の四天王/地底の事情

これまでのあらすじ:ソフィアさんを拉致ったクロイツ教国を処しに来たら、悪魔族が暴れていた。

 クロイツ教国の神殿で、悪魔族と向かい合う。

「救援に来た訳では無いのか。いつまで経ってもこの国を見逃していたから、てっきり潰す気が無いと思っていたが」

 悪魔族の言葉に、俺は苦笑する。

「まぁ他人には解んないよな、俺ルールだし。今回の件で、クロイツ教国はスリーアウトなんだよ。つまり……俺が教国を潰す条件が整っただけだ」


 最初は勇者三人の保護優先だし、最初の警告でワンアウト。

 その後の勇者の集いは実害が無かったし、他の国の目もあったのでノーカン。

 イングヴァルトへの暗殺者派遣で潰そうかとも思ったが、ツーアウト扱いでもう一度だけ警告。

 ホシノ兄弟の件では、実力行使にまでは踏み切らなかったから温情措置ノーカンだっただけだ。

 そして今回の暗殺者潜入と、転移門襲撃……そして、ソフィアさんの拉致。スリーアウトどころかファイブアウトだ、潰すには十分過ぎる。


「何なら、私が潰した後に来ればいいものを。枢機卿に寄生した私の、長年の鬱憤を晴らす機会だったのだぞ?」

 知らんがなー。しかし、枢機卿の一人に寄生していたのか。俺が気付かなかったという事は、視界に入っていないという事だ……よっぽど陰で暗躍しまくっていたんだな。

「言ったろ、クロイツ教国を潰すのは俺だ。お前は邪魔」

 銃剣を構え、悪魔族に相対する。

「ユーちゃん、相手は四天王です。ここは……」

 隣に立とうとするキリエを、手で制する。

「言うな、キリエ。俺にやらせてくれ」

「……解りました」

 キリエを止めた理由は、悪魔族のステータスが見えているからだ。そして、手に持っている剣から奴の戦法も解った。こいつの相手は、俺がやるのがベストなのだ。


 そんな事を考えていると、老害きょうこうが俺に向けて叫び出した。

「ア、アヴァロンの王! 私を助ければ、これまでの事は不もガァ……ッ!!」

 その言葉は、最後まで言い切れなかった。

 不愉快な事を言うつもりだったらしいので、銃弾でその肩を撃ち抜いた。


「きょ、教皇猊下!!」

「貴様、何をする!?」

 いや、何をするも何も。

「アヴァロン王国に散々ちょっかいを出し、挙句の果てには攻め込んで来た事を忘れたとは言わせないぞ? お前らは俺の敵だ。邪魔だから、お前達から死ね」

 両手に持った銃剣の引き金を引き、連続で撃ち出した弾丸でクロイツの兵士達を殺害する。

 第一、悪魔族との戦いを邪魔されたら嫌だし。


「ぐ……ぅっ!!」

 痛みに呻くクロイツ教皇。こいつは悪魔族の後に殺す事にする。

 悪魔族との闘いを目の当たりにさせて、自分が誰に喧嘩を売ったのかをよーく自覚させた上で、決着を付ける為だ。

 ……それにしても、うん。何の感慨も無いな。


 そんな俺を見て、くつくつと哂う悪魔族。

「情けも容赦も無いな。悪魔族と手を組む気は無いか、気が合うと思うのだが」

「馬鹿な事をほざくな。それと、最後の台詞は心外極まりないから取り消して貰おう」

 ようやく、メインイベントだ。

「無論、冗談だとも。アヴァロンの王、悪魔族の同胞達を数多く屠って来た貴様を殺し、同胞達への手向けとしよう」

「仲間想いなんだな? なら、すぐに死んだ仲間の元へ送ってやろう」

「やれるものなら、やってみせると良い。四天王が一人、ゼルバイン……参る」

「そうだな。さぁ……真剣勝負の時間だ」

 互いに、言葉を切る。ここからは、力を以って語り合う段だ。


************************************************************


 互いに、同時に駆け出す。ゼルバインの獲物は剣……魔剣だ。

「フンッ!!」

 魔剣を横薙ぎに振るうゼルバインだが、その剣は不可視の壁に遮られた。守護の首飾りタリズマンによる障壁だ。

 というのも、ゼルバインの持つ魔剣……その本来の名は透過の魔剣だ。読んで字の如く、効果は無機物を擦り抜ける能力。代わりに、魔法結界等を透過する事は出来ない。

「チィッ、その奇形の剣で受けていれば、両断したものを!!」

 狙いは当然それだろう。なんという初見殺し。

 しかし、俺は真実の目プロビデンスによる解析アナライズで、ゼルバインやその武装の情報は筒抜けである。誰が馬鹿正直に受けるものか。


「なら、これはどうだぁっ!!」

 いつの間にか手にしたらしき新たな魔剣。宝物庫ストレージみたいな魔道具や遺失魔道具アーティファクトは持っていないし、どうやら技能持ちみたいだな……あぁ、ステータスにある“収納”ってやつかね。

 さてさて、魔剣の効果は……解呪ディスペル同様に魔法効果の解除か。なら、物理だな。

 不可視の手ゴッドハンドで、宝物庫ストレージから取り出した魔導兵騎用の大剣を魔剣の中間に振り下ろす。大質量の大剣により、ゼルバインの魔剣は粉砕された。

「ぬぅっ!? 貴様、俺のコレクションをよくもっ!!」

「そんなに大事なら部屋に飾っておけよ」

 透過の魔剣を不可視の手ゴッドハンドで掴む。不可視の手ゴッドハンドは魔力で形成しているので、擦り抜けない。

「なぁっ!? 一体何が……剣が、動かな……っ!?」


 そんなゼルバインに向かって、俺はゆっくり歩み寄る。自分に向かって接近する俺に、剣を動かそうともがくゼルバイン。

「ぐっ……ぬぅっ……こ、このぉっ……!!」

「最初の堂々とした立ち振る舞いはどうした? 今は三下っぽいぞ」

 最初は正々堂々とした悪魔族の騎士を気取っていた理由については、予想が付くけど。

 透過の魔剣を使って、斬り結ぼうとした剣を透過して不意を打つ算段だったのだろう。深手を負った相手を、その後で甚振るつもりだったんじゃないかな。

 つまりは、今の三下臭い乱暴な口調が、コイツの本性でFA。


 俺が歩み寄ると、ゼルバインが目をカッと見開く。その手には、また新たな魔剣だ。

「魔剣はまだまだあるんだよぉっ!!」

 だろうね。コレクションとか言っていたし、二振りでお終いって事は無いだろう。

 次の魔剣は、斬られた相手の体力を徐々に奪っていくというもの。ありがち。

 折角なので、魔剣もコイツの心もバッキバキに折ってやろう。

「シッ!!」

 銃剣に付与した“振動バイブレーション”発動。超高速振動による斬れ味の向上で、魔剣を両断する。

「なあぁっ!?」

 コレクションがまた一つ減ったね、ご愁傷様。


「ほれ、他の魔剣はどうした? お前のメンタルと一緒に破壊してやるから、どんどん出せ」

「な、舐めるなよ!! ならば、この不壊の魔剣で……!!」

 壊れないのね。じゃあ、コイツでどうかな? 宝物庫ストレージから取り出したのは、一振りの刀だ。

「ほい……っと」

 キンッ!! という甲高い音がする。魔剣は壊れない。

 それを見て、ゼルバインが高笑い……というか、馬鹿笑いする。

「ハハハ、無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!」

 何処のDI●だ、お前は。

「せーのっ!!」

 ――バキィンッ!! 

 甲高い金属音と共に、魔剣が折れた。ゼルバインが馬鹿笑いをやめ、目が飛び出そうなくらい見開いている。

「……な、な、何故……っ!?」


 魔剣も基本的には、効果を付与された魔道具だ。

 なので、ゾディアックの爪を加工して作った刀で、付与効果を破壊。その後で、銃剣(超高速振動状態)による一閃で破壊。

 ゾディアックの爪、もうちょい欲しいなぁ……銃剣の刀身に使いたい。そうすれば、わざわざ刀を出す必要が無いもんね。


「お、おのれおのれおのれおのれおのれ!」

 今度はギ●ガメッシュか? あぁ、劇場版運命の夜、剣が無限に作れる方ね。

「これならどうだ、追尾の魔剣!!」

 ――パキィン!! 

 追尾いうても、お前。付与効果破壊の刀があるんだからさ。

「なっ!? ならば、不可視の魔剣!!」

 ――パキィン!! 

 見えなくても、こいつの持ち方で刀身が何処にあるか解るし。

「ば、馬鹿なっ!? う、ぬおおおぉっ! こうなれば、奥の手だ! 俺の魔剣でも最高の破壊力を誇るこの魔剣でっ!!」

 ――パキィン!! 

 大した事ない効果だったので、アッサリと破壊する。

「うそぉ!?」


 もう終わりだろうか? それならば、いい加減こいつに付き合うのもウンザリして来たので、そろそろ終わらせようかな。

「でだ、お前はどんな末路がいい? 色々見せてくれた礼に、リクエストくらい聞いてやるぞ?」

「ふ、ふざけ……」

 声を荒げようとしたゼルバインに、例を挙げてやろう。

「ミリアン獣王国を攻めた悪魔族は、拘束・銃弾で滅多打ち・市中引き回しの刑だったな」

 こうして列挙してみると、あの女悪魔族に対する仕打ちがあんまりだった様に思える。

 あまりの内容に、ゼルバインが黙る。


 すると、キリエ達が話に加わる。

「ヴォルフィードで暗躍していた二人組は、一人はレールガンでの脳漿炸裂でしたね。もう一人はガトリングガンによるミンチでしたっけ」

「後は……竜王国で大暴れしたマァモンでしたか。身体を石化させて、エイルちゃんのレールガンに粉砕されたと聞きましたが」

「ゾディアックはー、ユー君との戦闘の末に銃弾一発で死んだんだよねー」

 そうそう、そうだったそうだった。

「中々に、自分の処し方がゲスいな」

「き、貴様! ほ、本気でそんな事をして、ただで済むと……!!」

 そんな事を口走るゼルバインだが、俺は答えずに銃口を向ける。

「ただで済むか済まないか、どの道ここで死ぬお前には関係ないだろう?」

 連続して引き金を引く。

「ぎゃあっ!? ひぎっ……あぁっ!! がぁっ!?」

 乾いた銃声と共に、ゼルバインの悲鳴があがる。


 ゼルバインが苦痛に呻いているのを見つつ、ある事に気付いた。すっかり忘れていたが、色々聞いておきたい事があったのを思い出したのだ。

「良い機会だし、聞いておくか。おい、悪魔族の王について話せ」

 苦痛でゴロゴロ転がるゼルバインに、銃口を突き付けて告げる。

「だ、誰が……ぎゃあぁっ!?」

 反抗的な態度を一度とる毎に、一回ずつ攻撃しよう。勿論、徐々にグレードを上げて。


「やはり、次はショットガンかな? ほれ、もう一度だ。お前らの王の情報を吐け」

「ぐ……ぐぐぅ……っ!! お、おのれぇ……っ!!」

 反抗的。じゃあ、罰だね。

 左腕にショットガンの銃口を押し当てて引き金を引く。散弾によって血と肉片が飛び散った。

「ぎぃああぁぁっ!?」

 次はー……やはり、マシンガンかね? 

「ほれ、吐けって」

「ぎゃあぁぁぁっ、お、おでののうでがぁぁっ!!」

 返事をしないだなんて、なんて反抗的なんだろう。マシンガンで両足に銃弾を連続してブチ込む。

「ひぎゃぁぁぁっ!!」

 うーん、ゾディアックの方が骨があったぞ? あいつは俺に傷を負わせたくらいだしな。


「ほらほら、次は至近距離でスナイパーライフルを構えて、無駄に洗練された無駄のない無駄なヘッドショットをブチかますぞ?」

 ヘッドショットの狙いは眼球です。

「あ、ぐぐっ……お、王の……」

 おっと、やっと素直になったか。

「王の情報を話したら……お、俺の命は……」

 命乞いしろとは言っていない。お仕置きの眼球狙い撃ち。

「ぎゃあぁぁぁっ!?」

「誰が質問して良いと言った? 質問に対して返すべき言葉は返答だ、解るか? 解るよなぁ? ほら、お前はバカみたいに俺の質問に答えれば良いんだよ」

 我ながら、情け容赦無いと思う。そして、悪魔族に情け容赦はいらないとも思う。やる事成す事、大体蹂躙だからさ。


 「お、王は……ち、地底深くの居城に……!!」

 やっと、まともに答えたか。

「王ってのは、何て名前だ」

「ヲ、ヲルバ……悪魔王ヲルバ様だ……!!」

 ヲルバ……それが、悪魔の王の名か。

「王の弱点は?」

「知らない……ま、待ってくれ! 本当に知らぬのだ!」

 スナライからグレネードランチャーに持ち替えた俺に気付き、必死で叫ぶゼルバイン。

 こいつ、本気で三下だな。四天王になったの、魔剣コレクションのお陰じゃね? ゾディアックはもうちょい骨があったよ? 


「ついでだ、悪魔族は今何処でどれくらい動いている。知っているだけ話せ」

 折角出したので、グレランを明後日の方に撃つ。

 あっ、しまった。そこには殺したクロイツ神殿騎士の死体があった。爆ぜた。

 死体蹴りする意図は無かったんだ、本当です信じて下さい。

 ともあれ、爆ぜた死体を見てグレランの威力を察したゼルバインが顔を青褪めさせた。お陰でゼルバインが慌てて色々ぶっちゃけたので、結果オーライだ。


************************************************************


 とりあえず、一通り吐かせたところによると、そもそも悪魔族は個体数が少ないらしい。繁殖能力が無い訳ではないのだが、悪魔族同士では子供が出来にくいそうだ。

 故に他種族の女を犯して孕ませ、子供を産ませるのが手っ取り早い。しかし地の底には悪魔族以外の種族は居ない。

 永年に渡り封印されていた事で、個体数が更に減ったのでこれはいかんと奮起。

 しかし、封印結界自体は破壊できなかったらしい。ワイズマン、頑張った。


「数人がかりで封印の結界を攻撃し、一人か二人くらい通れる穴を空ける事で、俺達は地上へ出た……」

 相当な労力を注ぎ込んで、封印の結界に穴を空けられるようになったのも二年前の事だという。超最近。

 すぐに穴は塞がるし、もう一度穴を空けるのにも時間が掛かる。とりあえず、抜けたヤツから他種族の女を浚って来る事にしたようだ。


「しかし、他種族の女を連れて行くと、結界に辿り着く前に道中で死んだ……十人程連れて帰ったのだが、皆死んだ……」

 何やら空気とか環境が合わないのだそうだ。

 俺の予想では酸素濃度が地上に比べて薄くて酸欠になるとか、有害ガスが出ているとかじゃないかなと思う。 

 故に、悪魔族は地上で繁殖を試みているらしい。ついでにワイズマンへの復讐もしたいので、地上を荒らして溜飲を下げるつもりなのだという。


 そんな悪魔族、どうやら各大陸にそれなりの数が居るそうだ。

 南大陸に向かったのは三人、ミリアン獣王国(対処済み)・ジークハルト竜王国にマァモン(対処済み)、ケルム獣帝国にゾディアック(対処済み)。そしてニグルス獣聖国に一人だ。


 西大陸には四人で、ヴォルフィード皇国(二人・対処済み)・トルメキア王国(二人)らしい。トルメキアか、今ユウキが行っているはずだな。

 北のオーヴァン魔王国にも、悪魔族が二人向かったそうだ。

 こちらはまだ俺達も発見していないし、アマダム率いる魔王軍も見付けられていないという事か。警戒を強めないといけないな。


「そして、東大陸には俺……そして、もう一人の四天王がいる」

「そのもう一人の名前を言え、そして何処にいるのかも言え」

「信じて貰えるか解らんが、何処にいるかまでは知らない……名前はズールだ」

 ズルそうな名前だな。あと、竜眼で真実を話しているのが見えたので、信じてやろう。

「あと、もう一人四天王いるんだろ。何処に居る」

「最後の四天王ジェスターは、ヲルバ様のお側に控えている……結界に穴を空けるには、四天王が最低でも一人いないと不可能だ……」

 まぁ、確かにそれなりの実力者が残っていないと、ワイズマンの結界に穴を空けるのは無理だよね。これも嘘では無いようだ。


 差し当たって、早めに対応しておきたいのは今現在ユウキが居るトルメキア王国と、オーヴァン魔王国に潜入した悪魔族かね。

 そういや、ユウキ達やフリード達はどうなったかな。ちょいと念話しとこう。

『ユウキ、フリード、念話が可能な状態なら応えてくれ』

 レスポンスは早かった。

『こちらユウキ、トルメキア王国の方は片が付いたよ』

『お疲れ様です、陛下。ヒルベルト王国も、戦闘は終結致しました』

 流石は右腕と左腕。

『こちらも予想外の事態はあったが、ある程度は終わった』

『予想外の事態……ですか』

『大した事じゃない、悪魔族四天王の一人が先に暴れていたから、ブチのめしただけだよ』

 返事が来ない、多分絶句しているんだろう。


『流石です陛下、悪魔族の暗躍を阻止したのですね』

 出ました、さすへい。

『ユートの行動範囲に悪魔族が出るのはデフォなのかな?』

 そんな事は無い、現に悪魔族関連の情報を伝えようと思っていたのだから。

『デフォではないみたいだぞ。ユウキ、トルメキアに悪魔族二名が潜入しているらしい。引き続き対処を頼めるか?』

 俺の言葉に、ユウキがまた少し黙った。

『了解……でも、その情報はどこから?』

『さっき言った四天王の一人。今、拷問して吐かせた』

 あ、今度は苦笑しているらしい。

『情報を吐かせたユートが凄いのか、情報を漏らした四天王がヘタレなのか……』

 多分、後者です。


『陛下、私は如何致しましょう?』

『あぁ、アヴァロンに戻り警戒態勢を継続して貰いたい。並行して、バルムンドとやらが製作した遺失魔道具アーティファクトが他に仕掛けられていないか捜索もしてくれると助かる』

 放置しておきたくはないからね。転移以外にも、何かあるかもしれないし。

『畏まりました、陛下』

 即答するフリード、頼もしい。


 さて、念話を終えた俺はゼルバインを見る。黙り込んだ俺を警戒していたようだ。

「さてと……最後に、悪魔族の棲む地底への入口は何処にある」

 俺の質問に、ゼルバインは表情を歪めた。あら反抗的。

「ギェアアアアアッ!?」

 下半身部分にグレランからグレネード弾を発射し、爆発させる。左足が黒焦げだ。

「封印の地は何処だ」

「う……ぐ、ぅぅ……っ!! ば、場所は……」

 そうそう、最初からそうやって答えていればいいんだよ。

「場所は……四大陸の、中間にある、島だ……」

 四大陸の中間? それって、アーカディア島の下って事か?

「成程……ふむ、どれも有用な情報だったよ」

 これは、世界同盟加盟国にも情報共有しないといけないね。


 さて、この後なのだが……ゼルバインをどうするかという問題がある。

「本来、悪魔族は全員殺すのが俺の方針なんだが、今回お前は情報を提供するという形で、役に立ってくれたからな……大人しく地底に帰れば、命だけは見逃してやるぞ」

「み……見逃して、くれるのか……!?」

 信じられないという顔のゼルバイン。俺は頷く。

「あぁ、だから行くといい」


 その言葉に、ゼルバインはヨロヨロと立ち上がり、神殿の出入口に向かう……フリをして、魔剣を取り出して俺に投げ付け、更にはキリエ達の方に向けて全速力で走り出した。

 やはり、こうなったか。

 魔剣を銃剣で払い、ゼルバインの背中を見る。予想通りなんだよなぁ。

「フハハハハハハハハハハハッ!!」

 笑いながら走るゼルバイン。

 俺とキリエ達の中間くらいの位置に差し掛かる。


 ――ドガアァァンッ!! 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアッ!?」

 あらかじめ、仕掛けておいたのさ! 地雷パイセン、いつもお疲れ様です。


「う……ぐ……」

 ギリギリ生きてた。

「ゼルバインのくせに生意気だ、こうしてやる」

 ドゥルルルルルルル……ズダダダダダダダダダッ!! 

「ギャアァァァァッ!?」

 独特の駆動音と、間断無き発射音、そしてゼルバインの悲鳴。冥土の土産にガトリングガン。激しい銃弾の雨霰、ガトリングガンを撃ち切る頃にはもうゼルバインの原型は無かった。


************************************************************


「さて、これで終わりかな?」

 そうだ、ソフィアさんに謝らないと。向き直ってソフィアさんに声をかける。

「巻き込んで済みませんでした、ソフィアさん」

「……いえ、大丈夫です。それより、ユートさん……私、ユートさんにお話ししなければならない事が、あるんです……」

 ソフィアさんは、非常に言いにくそうにしつつも話し始めた。

「私は人間族に見えますが、実は違うのです……ユートさんは、吸血鬼族という種族をご存知ですか?」


 ソフィアさん曰く、吸血鬼族は過去に一つの国家を形成していた種族なのだという。国があったのは、北の大陸だ。しかし、そんな吸血鬼の国家はずっと昔に滅亡したそうだ。

 吸血鬼族は吸血により、種族固有技能として個人の特殊能力が使用できるらしいのたが、ソフィアさん自身もよく解っていないそうだ。

 両親からは吸血を禁じられており、その正体も決して他言するなと厳しく言われて来たそうだ。ソフィアさんの父親が吸血鬼族で、母親は人間族らしい。吸血鬼族は、他種族と交わっても必ず吸血鬼族が生まれるそうだ。


 ソフィアさんは転移の遺失魔道具アーティファクトでアヴァロンに潜入したクロイツ教国の騎士達に拉致され、ここまで連れて来られた。更には騎士達に囲まれ、犯されそうになったらしい。

 その際に騎士の血を吸い、吸った血を魔力に変換して戦った。身体能力は人の数倍になり、騎士達を根こそぎ吹き飛ばしたらしい。

 そこへ悪魔族が現れ、その後俺達が到着したのだそうだ。


「……騙していて、済みませんでした」

 そう言って頭を下げるソフィアさんだが……何を言っているのかな?

「騙すも何も、俺達はソフィアさんに”あなたは人間族ですか?”とか聞いた事無いですし。そして、実に言い難いんですけど……実は、知ってましたし」

「……へ?」

 だって、ほら……俺の真実の目プロビデンスは、視界に入ったモノのステータスを見抜くから。

「俺の目は特別製でね……ソフィアさんの種族の事は、会った時から知ってました。そして、その程度で俺達はソフィアさんを差別したりしないですし。あ、内緒にしておくから安心して下さいね」

「あ……は、はい……えっ?」

 随分と混乱しているみたいだ。


「きゅ、吸血鬼の言葉に耳を貸すな……!!」

 空気を読まないエセ聖職者。

「吸血鬼は、他の種族を食料としかみなしておらぬ……! その娘は、必ず世界に災いをもたらす……!」

 はぁ、いい加減にして貰いたい。

「ソフィアさんの事を何も知らないくせに、決め付けるなよ。さて、そろそろ終わりにしようか」

 クロイツ教皇に銃口を向けて歩み寄る。


「……私を手にかける気か!? やめろ、私を殺したら神の裁きが……!」

「聖母神ヒュペリオンなら、俺と婚約したよ」

 そして、そこに居るよ。

「世迷い言を!! や、やめろ!! 私が死んだら、クロイツ教国の全てが貴様を……!!」

「クロイツ教国は今日滅ぶ」

「ま、待て!! こんな事をして、ただで済むと思うのか!?」

「あ? 喧嘩を売って来たのはお前達だろう。俺達はその喧嘩を買っただけ。そして、お前達は負けた。だから死ぬ」

 言葉で俺の意思を翻せないと察した教皇は、痛みを堪えて逃げようと足掻く。見苦しい事この上ないな。


 引き金にかけた指に力を入れた瞬間、神殿に駆け込んで来る一人の少年。

 ――パァンッ!! 

 頭に命中した弾丸。その人生を終えて、倒れ伏すクロイツ教皇。唖然とした様子で、立ち尽くす少年。

「教皇猊下っ!!」

 あーそっかぁ、コイツが残っていたかぁ。

「ユ、ユート・アーカディアッ!! 貴様が……貴様が皆をっ!!」

 勇者マサヨシ・カブラギが、聖なる剣を無限収納庫イベントリから取り出して構えた。

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