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刻印の付与魔導師(エンチャンター)  作者: 大和・J・カナタ
第12章 ケルム獣帝国

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12-04 プール開き/救援要請

これまでのあらすじ:仲間達のブートキャンプ終了です。

 さて、大迷宮攻略前日はお休みだ。折角なので、皆で何かしようと思い……そして、プール開きにした。

 うん……どうしてそうなった、という話だよね! 単に新しく作ったプール設備を皆で使ってみたいだけです。

「うわぁ……これは……」

「ねぇねぇユート君。ウォータースライダーとか流れるプールとか波のプールとかあるんだけど、いつ作っていたの、あんなの」

 ちょっとしたレジャー施設並のプールに、仲間達が唖然としていた。


 ちなみに製作は、アーカディア島を譲り受けた直後からだ。当時、キリエ・アリス・アイリが水着を購入していたけど、アーカディア島で使う機会が無いよなーと思ったから、プールを作ろうと思い至ったのだ。

 しかし、小規模な水浴びプールも悪くないけど、どうせなら色々作ろう……と思ったのが始まり。あれもこれもと作る内に仲間も増え、なら大人数でもいいようにと調子に乗った。気付けば、レジャー施設並のプールの完成だ。


「というかこの大規模施設が入るんですね、宝物庫ストレージ……」

宝物庫ストレージの恐ろしさを、今認識しましたよ……」

 何気に高性能だからね、宝物庫の指輪ストレージ


 さて、流石にメインパーティだけで楽しむのは勿体ない。なので、王城務めのメンバーやグレン達、更に各国の友人達を招いた。自重なんぞしねぇ、遊ぶ時は極限まで遊ぶのだ。

「しかし……お前の頭の中は一体どうなっているんだ?」

「待って? 今、頭おかしいって言われたの?」

 呆れたようなアルファの言葉に、ちょっと異議を申し立てる。


「まぁそれもあるが、私達の想像を超えるような物をいつも作るだろう。その発想力は一体何処から来ているんだ」

「それもあるのかよ! はぁ、まぁ良いか。勇者の世界にあるんだよ、こういうのが。それで作ってみたんだ」

「あぁ、勇者から聞いたのか」

 そう納得してくれるが、実際には“僕の記憶を元にした”勇者の世界の知識である。まぁ、吹聴して良い事ではないので、訂正はしないが。

「勇者の世界……地球でしたか、本当にこの世界よりも文明が進んでいますわね」

 フリルをふんだんにあしらった白いワンピースタイプの水着を纏ったリアが、苦笑気味に言う。まぁ、確かにそうかもしれない。


「こちらの世界には魔法があるからね。あちらの世界には魔法が無いから、代わりに科学が発展しているんだよ。科学の発展が地球の原動力である事は間違いない……代わりに、環境問題とかのデメリットもあるんだけど」

「環境問題……ですか」

 不安そうな表情をするリア。あぁ、心配させてしまったかな?

「コレは科学と魔法のハイブリッドで出来た施設だから、環境問題とかは心配はいらないよ……現状ね。もし何かあれば、僕が意地でも何とかする」

 自分が良かれと思って作った物が、世界に多大な影響を及ぼすのは勘弁だ。

 一応気にしてはいるが、もしもの時はどんな手段を使ってでも何とかするつもりである。


「さて、それなら私も楽しませて貰うとしよう……折角のバカンスだからな。行くか、リア」

「あ、はい! ご一緒致します!」

 仲睦まじいね、良きかな良きかな。

「それなら、これ。ゴムボートっていうんだけど、これに乗って流れるプールを楽しむと良いよ」

「ほう? では、借りてみようか」

「まぁ、楽しそうです!」

 二人は楽しそうに流れるプールへ向かった。


 さて、折角だから皆の様子を見て回ってみようかな。

「僕は色々見て来るけど、皆はどうする?」

 問い掛けると、婚約者達は僕に付いてくるとの事。

「僕達も折角だし、少し遊んで来るよ」

「ユウキ、ウォータースライダー! アレいこう!」

「へへへ、楽しみ!」

「勇者の世界は娯楽に溢れてるわよね……ユートのお陰で、色々発展しそうだわ」

 ユウキ達は、恋人揃って遊びに行くようだ。


「フリードリヒ、折角だからノゾミ様と一緒に行って来たら? あなた、遊び慣れていないから何をどうすれば良いかイマイチ解らないでしょう」

「む……確かにそうかもしれませんな。ノゾミ殿、一つご教授頂けますか?」

「ひぇっ!? は、はいっ! って、二人で……待って、心の準備がっ! クラリスさん、一緒に来て下さいよ、ねっ!」

「いや、ちょっ……折角なんだから二人きりに……!! 何でそんな力強いのですか!?」

 テンパったノゾミに引っ張られていくクラリスと、それを追い掛けるフリード。

「……面白い事になりそうだ」

「悪い顔してますよ、先輩……」

 おっと、いかんいかん。


「それじゃあ、皆の様子でも見て回ろうか……っと、その前に」

 残ったメンバーに向き直る。

 キリエは黒いビキニだ。以前の濃紺のやつよりも、ちょっとカットが大胆なんですが……ありがとうございます。

 アリスは白いビキニだ。相変わらず凶悪なお胸様の存在感が強調されている……照れ混じりの笑顔もグッド。

 アイリは水色に白い水玉のビキニ。幼いアイリなので可愛らしい柄も非常に似合っており、鍛えられた肢体も映える。

 リインはライトグリーンのビキニ。こちらは少しアクセサリーの付いた物で、貴族令嬢のリインの気品を引き立てている。

 クリスは黒と白の重ねるタイプのビキニ。色白のクリスなので、このコントラストも非常によく映える。

 メグミはピンク色のビキニで、薄手のパレオを腰に巻いている。何気にスタイル抜群な上に、恥じらいの表情が非常に良い。

 エイルは白のビキニで、キリエと同じデザインの物だ。背格好の割には育った胸が目を引くが、本人の快活さが相まって健全な色気が溢れている。

 ノエルさんは白いビキニで、結構大胆なカットになっている。控え目なノエルさんにはとても意外だったのだが、非常によく似合っている。

 ヒルドは黄色のビキニで、圧倒的な胸部装甲が目に毒だ。しかし本人の持つ雰囲気で、いやらしさよりも和やかさを感じさせる……聖母やばい。


「まずはとても目が幸せで本当にありがとうございます」

「相変わらず、変な所でストレートに来ますね、ユーちゃん」

 慣れているキリエ以外は、照れ照れしている。

 何この可愛い生き物達。

「皆、凄くよく似合っているよ。とても魅力的だ」

「え、えへへ……そう?」

「わーい、褒められたー!」

「へ、変じゃないですか? 大丈夫ですか?」

 エイル・ヒルド・ノエルさんの水着姿は初めて見るけど、非常に可愛い。

 普段とは違う魅力があるね。

 それに、照れてもじもじする姿なんてレアだ。


************************************************************


 麗しき水着美女・美少女・美幼女を引き連れて、プールを巡る。勿論、僕達もプールを楽しみながらね。プールで戯れる少女達の笑顔、プライスレス。


「あっ、ご主人様!」

「ご主人様~! ここ凄いです~!」

 ジルとメアリーが、執事・メイドの子供達に紛れつつ2人連れ立って声をかけてくる。ジルは黒いハーフパンツ型の水着、メアリーはライトイエローの布地に白いフリルスカートのついたワンピース水着だ。

 それにしても、最近二人は一緒に居る事が多いな。距離感も近いし、これはおめでたい報告がその内聞けるかもしれないぞ? 

「折角のお休みだから、いっぱい遊んでおいで」

「「はい!」」

 うん、元気な返事だね。

 普段はそれぞれ文官・メイドとして大人顔負けなくらい頑張ってくれているし、今日くらいは子供らしく楽しんで貰いたい。


 更に、クラウス一家の心温まるアットホームな様子や、マルクとジョリーンの熟年夫婦の様な仲睦まじい様子、それを見て複雑そうな顔をするリリルル。何でも、リリルルは彼氏と別れたらしい……。


 競泳用プールで一緒にガチ泳ぎするブリックにマチルダ、ウォータースライダーに連れ立っていくアマダムとミランダ、波のプールではしゃぐダーム王子とシャルル、飛び込みプールで芸術的なポーズを取っているカミーユとそれを見て微笑むミレイナ、ビーチバレーをするジオとグラム。

 他の王族達は、プールサイドで遊ぶ子供達を眺めて酒を飲んでいる。


「あれ? 今ここで何か起これば、世界情勢が一変しない?」

「あ、あの……ユート君、今更です……」

「アヴァロン王国に来て最初に驚いたのは、各国の殿下達が当然のように来てる事でしたよ……」

 アリスとノエルさんの言葉に、確かに今更だと気付く。感覚が麻痺しているんだろうなぁ……。


 さて、僕達も流れるプールでのんびり流れたり、ウォータースライダーで遊んだりして楽しんだ。

 流れるプールでは四人一組用のボートなので、三組に分かれた女性陣の乗るボートに加わる事になった。お陰で三周した。

 ウォータースライダーは二人一組なので、一人ずつ一緒に滑る事に。

 婚約者はまだしも、エイルとヒルドが一緒に滑って欲しいと甘えて来て、遠慮がちな視線を向けて来るノエルさんも誘ったので、合計九回滑った。頂上に上がる為の魔導エレベーターを作って正解だったよ。


************************************************************


 昼食はお馴染みのバーベキューにして、皆で午後はビーチバレー大会でもするかという話になった時だった。世界の窓ウィンドウズから、緊急通信の着信音が鳴ったのだ。

「……冒険者ギルドから?」

 とりあえず、応答しないといけないね。通信を繋ぐと、緊張した面持ちのウラノス氏の顔が表示された。

『急な通信で申し訳御座いません、アヴァロン王。ご相談したい事が御座います』

「何事か起こった様子だ、何があったのですかウラノス殿」

『はい、実は……』


 話を聞くと、確かに緊急を要する案件だった。南大陸にある獣人の国、ケルム獣帝国にある冒険者ギルドから、魔導通信機マギフォンで緊急連絡が入ったという。

 内容は……影を纏った魔物の群れが海から上陸し、獣帝国帝都に向けて侵攻を開始したそうだ。

 その数、恐らくは万を超える。軍が討伐に向かうも、通常攻撃が効かず既に千近くの犠牲者が出ているという。

 事態を重く見た獣帝は、冒険者ギルドを通じて世界同盟に救援を依頼して来たという事だ。


「ケルム獣帝国には不幸な事態だったが、朗報もあるな。世界同盟加盟国の国家元首が、今この場に揃っている。ウラノス殿、しばし待っていてくれ」

 背後に振り向くと、加盟国の面々が既に集まっていた。その表情から聞くまでもなさそうだけど、一応は聞いておかないとね。

「世界同盟に対するケルム獣帝国からの救援要請、受けるか否か……如何だろうか?」

 僕の言葉に、加盟国の王達の返答はあっさりしたものだった。


「時間が惜しい、早急に動こうではないか」

「うむ、これ以上の被害を食い止めねばな」

 アンドレイ叔父さんと騎士王の表情は、これ以上の被害を許さないという意思に満ち溢れていた。

「隣国の危地だ、大暴れさせて貰おうか!」

「うむ、同じ大陸の仲間として捨て置けんな」

 獣王と竜王は、戦意を露わに立ち上がった。

「アヴァロン王、世界同盟軍で出撃だな」

「うむ、力を合わせようではないか」

 ヴォルフィード皇帝とクエスト王も、凛々しい表情で僕に語り掛けて来る。

「ユートよ、行くか?」

 ニヤリと笑うアマダムに首肯で返す。

「ウラノス殿、ケルム獣帝国に伝えてくれ。これより、世界同盟軍による迎撃作戦を敢行する」

『は、確かに承りました』

 さぁ、行こうか。


************************************************************


 各国の王達はすぐに自国へ戻り、参戦する兵士達を集めている。

 その間に僕達アヴァロン王国は、ミリアン獣王国を経由してケルム獣帝国へと急行する。行った事が無い国だから、転移魔法陣を開けないからね。


 すると、遠目に火の手が上がっているのを確認した。

「既に犠牲者が出ています……どうしますか、ユーちゃん」

 影獣の数は現在、二万三千程……いや、侵攻するにしたがって増えているな。影獣を増やす……つまり黒幕、悪魔族がいるという事だ。

 これ以上の被害は食い止めたい。


「逃げて来ている民を帝都に避難させる必要があるな。誰か、帝都に先行してくれ。それ以外のメンバーで、転移弾で強制避難させる」

「ユート、それなら回復が出来るキリエさん、ヒルドさん、ノゾミさん、ノエルさんを送るべきだ」

 避難民は怪我人もいるかもしれない、確かにそれが良いだろう。

「流石だ、ユウキ。四人共、頼めるか?」

「はい、お任せを」

「了解だよー!」

「解りました!」

「お任せ下さい、ユートさん!」


 よし……あぁそうだ。

「後は獣帝に事情説明が出来る者が必要だろう。ユウキとマナ、勇者であれば門前払いはされないはずだ、頼めるか」

 本来は僕が行くべきなのかもしれないが、僕は最前線で指揮をする必要がある。メグミは守りの要だ、こちらにいて欲しい。

 そうなると、任せられるのは勇者としての実績、侯爵としての実績があるユウキと、その相棒のマナだろう。

「確かに、そうだね」

「任せて、ユート君!」

「よし、では行ってくれ!」

 首肯による返答の後、僕達の隊列から外れて帝都へと急行する6人。


「残るメンバーは二手に分かれるぞ。影獣を押し留めるチームと、住民を転移させるチームだ」

 僕、アイリ、メグミ、エルザ、マリア、フリード、クラリスで聖域を発動し、影獣を押し留める。その間にアリス、リイン、クリス、エイルが手分けして国民を避難させる。

 特に異論は無かったので、早速実行に移す事にした。


「た、助けてくれぇっ!!」

「もう……ダメだっ……!!」

 諦めんなよ、諦めたらそこで人生終了だぞ? 

 必死の形相で逃げ惑う住民達に迫る影獣達……進行速度が思ったよりも遅いな。

 これは、黒幕が遊んでいるな? 逃げる人々の姿を見て愉しみ、疲れ果てた所を影獣達に襲わせて殺す……といった所か。相変わらず、悪魔族は悪趣味だな……胸糞悪い。


 ならば、その趣味の悪い娯楽を台無しにしてやろう。

「聖域展開!」

「「「「「了解!」」」」」

 横に広がって聖域を展開すると、影獣達が一斉に加速する。迫り来る影獣達が飛び掛かって……聖域に激突した。

「うーん、ドアップで見るとキモいなこいつら」

「国家の危機に余裕ありますよね陛下!?」

 既に、獣王国で似たような状況を経験しているからね。


「な、なんだ……!?」

「魔法障壁……なのか?」

「あの怪物どもが……止められた!?」

 動揺する獣帝国の国民達。少し安心させてあげた方が良いかな。

「ケルム獣帝国の国民達よ、聞け! 我々は世界同盟に加盟するアヴァロン王国の者だ! ケルム獣帝の声に応え、貴国の救援に参上した!」

 僕の言葉に国民達は顔を見合わせ、そして歓声を上げた。

「お、おぉ……歓迎されているみたいで何より」

「この状況で排斥はされませんよ」

 苦笑するリインに、それもそうかと頷く。


 さて、キリエ達はどうかな? 念話で連絡してみるか。

『そっちはどんな感じかな?』

『あ、ユーちゃん?』

『あと、十分はかかるー』

 成程……それなら、一度国民達を安全圏に一時退避させるか? あぁ、アレがあるじゃないか。

『そしたら、避難民達は一度ノアに避難させるよ』

『あ、そうですね!』

『了解、こちらが到着し次第連絡するよ』


 さて、そうと決まれば。

『クラウス、こっちでノアの制御を任せたい。出来るか?』

『おっ、ご主人! お任せ下さい、いつだって力になりますって!』

 頼もしい返事を返してくれる。僕達の仲間でも、古参になるもんなぁ。

『じゃあ、門弾ゲートバレットで呼ぶから、よろしくね。ドワーフ勢やジル・メアリーにも協力をお願いしておいて』

『うっす! みんな側に居るんで、すぐ伝えます!』


 数分後、クラウス達が乗るノアに避難民達を次々と転移させていく。最初はおっかなびっくりだったけど、初めて見るノアの威容に目を輝かせた獣帝国民達は、こぞって転移魔法陣を潜った。

「さて、憂いは断った。ここから反撃かな?」

「世界同盟の国々は、どうでしょうか」

「では、私が連絡してみましょう」

 アリスが連絡を引き受けてくれるので、世界の窓ウィンドウズを預ける。その間に、こちらは状態をマップで確認してしまおう。


 海岸からここまで、一つの町と三つの村が被害に遭っているようだ。先程の人達は、ここから一番近い村から避難して来た者達だろう……それ以外の獣人達は、犠牲になったようだ。

 この時点で、悪魔族と影獣達の末路は決まった。


 すると、アリスから報告が入る。

「ユート君、加盟国は全て臨戦態勢でアヴァロンの訓練場に集合しています!」

「よし……準備も必要だろうし、ケルム獣帝国の帝都コルタナの前に転移させよう。キリエ達ももう到着する所みたいだからね」

 キリエの遺失魔道具アーティファクトを起点にして、転移魔法陣を開こう。

「準備……ですか?」

 不思議そうに首を傾げるアリス。

「あぁ……魔導兵騎の準備さ」

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