表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刻印の付与魔導師(エンチャンター)  作者: 大和・J・カナタ
第1章 イングヴァルト王国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/327

01-04 大群/迎撃

これまでのあらすじ:ゴブリン討伐依頼で森に来ました。

 ゴブリンを一匹さっくりサクサク討伐した後、マップを確認。どうやら様子を伺っていた件の冒険者達が、徐々に接近し出している。

 恐らく暴力で僕を叩き伏せ、姉さんを拉致しようと考えているのだろう。それと、僕の銃剣も奪うつもりなんだろうな。

「付き合ってやる義理も無いし、行こうか」

「そうしましょうか」


 魔核は取らなくても良いや、ゴブリンの魔核は小さ過ぎて見つけにくいから。

 ゴブリンの討伐証明部位は右の耳だ。銃剣でスッパリ切って収納鞄アイテムポーチ)に入れると、僕達は一気に走り出した。

 その速度は、普通では在り得ない程に速い。僕の黒い革ブーツと、姉さんの茶色の革ブーツ……勿論、遺失魔道具アーティファクトだ。名前はまだ無い。

 “走力上昇ダッシュライズ”“跳躍力上昇ジャンプライズ”を施している。


 そんな足回りチートアイテムを身に付けている僕達だ。近寄ろうとした冒険者三人を置き去りに、三百程先にいるゴブリン二匹目に接敵すると、サックリ首を刈り採った。

 討伐証明部位を剥ぎ取り、更に前へ。冒険者達が僕達を見失わないギリギリの速度で。

「あぁ、わざと見失わない速度にしてるんですね」

「お灸を据える為にねー」

 ついでだから、自分達がいかに愚かなのか……身をもって自覚して貰おう。


「具体的に言うと、ゴブの集落手前に置いてく」

 流石に逃げられるようにと思って、手前で勘弁してやろう。

「容赦無いですね、ユーちゃん。でも、そういう所も良いと思います」

 遠回しに外道と言われたのだろうか、解せぬ。


 ……


 そのまま遭遇戦を続け、集落を目前に僕達は止まる。

「さーて、狩りの次は潜入ミッションだ」

 “宝物庫ストレージ”からある物を取り出す。地球に住む者なら、これが何かすぐに解るだろう。そう、ダンボールである。


 ダンボール型遺失魔道具アーティファクト隠蔽の紙箱スニーキング・スネーク”に全身を覆い、身を隠しながら集落を行く。

 ただ単に潜入ミッションといえばこれだろ、という僕のこだわりだ。というか、ネタを実行したかっただけ。


 だから材質はダンボールそのものではないし、全身を覆うように被る必要は無い。ぶっちゃけ、持って魔力を流すだけで発動する。

 実際、姉さんは十センチメートル角くらいの、付与が書き込まれた部分を持って魔力を流しているだけだ。


「それで、浚われた女性は何処ですか?」

「ん、右手の洞窟、その奥だね……あぁ、今もゴブリンが四匹ほどいるな。真っ最中か」

 そう告げると、姉さんは凄く嫌そうな顔をした。仕方があるまい、ゴブリンが女性を襲っている所など、見たくもない。

「僕がゴブリンを始末して、女性を保護するから」

「はい、お願いします」


 ダンボールから手を離さずに、蛇のような移動から二足歩行に切り替える……飽きたから。

 そのまま洞窟の中へ侵入し、奥へ駆け抜ける。その内、ゴブリン達が女性二人に覆い被さっている姿が見えた。


「お楽しみ中、お邪魔するよ」

 右手で銃剣を三度振るい、ゴブリンの首を飛ばす。

「ゲギャ?」

 目の前に転がる仲間達の生首に、呆気に取られたゴブリンが視線を背後に向ける。

「死ね」

 眉間を貫き、そのまま蹴り飛ばす。壁に叩き付けられた最後のゴブリンは、血の海に沈んだ。


 他の三体の首無しゴブリンを同じように蹴り飛ばすと、浚われた女性達の姿が露になった。

 一糸纏わぬ裸体は様々な液体で汚され、髪はボサボサに痛んでいる。そして、目は光を一切映しておらず、呼吸をしているだけだ。

「……村に帰る前に、ちょっと何とかしようか」

 返答は無い。

 身体を治す魔道具はあるけど、精神を治療する様なものは無いからなぁ。そのへん、姉さんに相談してみるか。


「とりあえず、洗い流してあげないとね……」

 取り出したのは遺失魔道具アーティファクト携帯型洗浄水栓どこでもシャワー”だ。簡単に言えば、魔力を流せば綺麗なお湯が出て来るシャワーヘッドだ。

 二人の身体を綺麗にしたら、“隠蔽の紙箱スニーキング・スネーク”の切れ端を貼り付け、両脇に抱えて脱出を開始する。


************************************************************


 夕方、村に戻った僕達は村長の家を訪問する。

「ゴブリン十匹の討伐、これが討伐証明部位です」

 帰還した僕達を見た村長にゴブ耳(右)十個を見せると、目を見開いた。その表情は、驚愕と安堵、そしていくらかの敬意を感じさせるそれに、変わっている。

 さて、どう出るのかな。

「……その、恥ずかしながら私達の農村は、それほど豊かではありませんで……三倍以上の報酬をすぐに支払う事は……すぐには……」

 さっきは悪意を向けて来ていたのに、討伐完了後だと村長は正直に申し出て来た。


 やけに素直になったが、おおよその見当はつく。

 村娘を浚ったゴブリンの集落、村人だけで奪還は不可能だろう。だから冒険者を招き、ゴブリンの数を減らして貰う。

 もしかしたら、済し崩し的にゴブリンの群れと戦わせて、その隙に村人を集落に向かわせて村娘を奪還するつもりだったのかもしれない。ゴブリン数体なら、村人でも何とか倒せなくはないからな。


 しかし来たのは、成人して間もないような少年少女だ。その上しかも三匹以上の討伐の場合は追加報酬を要求して来た。

 実績も無いくせに、口だけは達者な鉄級冒険者の若造が、とか思われたんだろう。

 しかし、僕達は短時間で実績を出した。口だけでは無い、実力の伴ったルーキー……そう判断したのだろう。

「今すぐ支払えるのは、二倍が限界です……その、残りは半年程、時間を……」

 踏み倒す気か、それとも本気で支払う気かは解らない。


 まぁ……素直に話してくれたんだし、譲歩してもいいかな。

「初期討伐報酬は、ゴブリン三匹で銀貨三枚だったな。実討伐数で銀貨十枚計算だが、一匹サービスで銀貨九枚にしよう」

「は、はい……」

「その内初期報酬の銀貨二枚分は、遠征費として追加報酬に含めない。更に宿泊場所と食事を提供してくれるなら、銀貨二枚を差し引く」

「……は?」

 報酬は本来の銀貨三枚に加えて、追加報酬銀貨二枚。

「合計銀貨五枚でどうだろうか?」

 村長は目を見開いて僕を見た。まぁ、森に入る前に散々煽ったからな、割り引かれるとは思ってなかったんだろう。


 ハッキリ言うと破格の条件で、他の冒険者だとこんな割引はしない。

 じゃあ何故そうしたかと言うと……そこまでお金に執着していないからだ。それなら、この村に恩を売っておく。

「宜しいのですか?」

 姉さんに視線を向けると、笑顔で頷いた。異論は無いという事だ。

「えぇ、構いませんよ」

「ありがとうございます……!! 元の依頼報酬は既にギルドへ預けております。追加報酬は今すぐにでもお渡し致します!!」


 だからこそ、銀貨二枚を手渡して来た村長は本当の依頼をして来た。

「お二方の実力を見込んで、お願いがございます……」

「あぁ、浚われた村人? それ、もう救出済みだから大丈夫だけど」

「………………は?」

 村長が唖然とする中、姉さんが扉を開ける。

 そこには、例の村娘二人が立っていた。


 一度、回復魔法で身体を元の状態に治療し、精神を修復して事情を聞こうとした際、二人は取り乱し暴れた。

 何とか浚われた時期が解った時点で再度眠らせ、浚われてからの辛い記憶を消去した。精神を修復したり、記憶を消したのは姉さんだ。

「ユーちゃんは記憶操作の魔法とか知らないでしょう、私が対処しますね」

 そう言って、彼女達に処置を施してくれた。流石は天使である。


 その甲斐あってか、自分達がゴブリンの集落から救出された事は、彼女達にも伝えてあるが、実感は無いようだ。そんな色々な秘密の事情を伏せたまま、その事を村長に伝える。

 すると、村長は泣きながら土下座をした。

「ありがとうございます!! ありがとう……ございます……!!」

 余りにも感極まった様子だったので、村長を宥めて詳細を聞く。


 村娘の一人は、村長の孫なのだそうだ。

 後々、依頼を達成した冒険者からの報告でギルドから偽証で罰せられようとも、孫娘を救う為に必死だったと言う。あえて悪事を働いたのも、全ては愛する孫娘の為だった。

 成程ね、そういう事だったか。


「本当にありがとうございました……お二人への感謝の報酬は、如何様にでも……それと、ギルドへはありのままを話して頂いて結構です。ただ、これは私の独断で行った事、村人には罪は御座いませんので、何卒……」

 一気に老け込んだような村長は、覚悟を決めた目をしている。周囲に集まってきた村人達は、何とも言えない表情をしている。


「救出は僕達が勝手にやった事だ」

 僕の言葉は、その場によく響いた。

「……ですが、私はお二方を騙して……」

「うん、それは反省した方がいい。でもまぁ……大切なものの為なら、自分が泥を被ってでもってのは、解らなくも無いし、実害があったわけでも無い」

 僕の言葉に、村長が呆気に取られた顔をしている。追加報酬を要求した男の台詞とは思えないだろうから、まぁ仕方あるまい。

「命を賭け、身を汚してでも、大切なものを取り戻したい。それは理解出来るし、素直に白状した。だから、今回だけは水に流すよ。次は、最初から素直に相談するといいさ」

 こう言っておけば、今後は大丈夫だと信じたい。


 ……


 しかし、この時点で僕はすっかり忘れていた……集落付近に放置してきた、三人の冒険者を。それは、最悪のタイミングで思い出すハメになった。

「おい、何か森の方が騒がしくないか?」

 村人の一人が、村の門の先にある森の入口を見る。

「……あ」


 “真実の目プロビデンス”のマップを見れば、三人の冒険者が森の中を必死で走っているようだ。森の出口……その先にある、この村を目指しているだろう事が解る。

 その後ろから迫るのは……ゴブリンの大群だ。森の方角から聞こえるのは、ゴブリンの足音と鳴き声だった。

 村に逃げるなよ! 逃げ道は他にいくらでもあったのに!


 そう思って三人の冒険者への怒りを覚え……責めるのはお門違いだと気付いた。

 魔物をトレインしたら村に甚大な被害を及ぼすから、僕なら村の方に逃げたりしない。

 だが、他の人がそう考えるという保証なんて無いのだ。

 村人を囮にして、自分達は逃げ切る……そんな考えの人間だっているだろう。誰だって、生きる為なら必死になる。

 これは僕のミス、僕が起こした事態だ。


「ま、まさか……ゴブリンの群れじゃないのか!?」

 混乱は伝播していき、村人達が慌てふためく。村長は、森の方を見て呆然と呟く。

「これが、私への罰か……」

 その声色には、諦め・絶望・そして罪悪感が篭められているようだった。しかし流石は村の長と言うべきか、すぐに顔を上げて村人へ向けて口を開いた。


「家を捨て、畑を捨て、村を捨てて王都へ向かえ! 家財道具も置いていけ、一人でも多く生き延びろ!」

 村長として貫禄ある声を張り上げ、村人達に呼び掛ける。

「女子供を優先して馬車に載せろ! 男は武器になる物を持つのだ! さぁ、いきなさい!!」

 “いきなさい”。それは、“行きなさい”でもあり、“生きなさい”でもあるのだろう。


 さて、自分の失態の責任を取る……それが、僕の流儀だ。

「……姉さん」

「えぇ、いいですよ」

 姉さんが優しい表情で、僕を見ながら笑みを零す。

「やりたい事を、やりたいように。私がユーちゃんを、守ります」

 流石は天使。

「じゃあ、やるか」


 そんな掛け合いをしていると、村長が慌てて近寄って来る。

「お二人も、早く王都へ……そして、出来る事ならば……恥の上塗りで誠に情けないのですが、どうか……どうか、村人達を守っては頂けませんでしょうか……」

「村人を守る件、引き受けるよ」

 僕の即断の言葉に、村長はホッとした表情になる。

「ところで、家や畑、村も守ってしまって構わないのだろう?」

「……は?」


************************************************************


 日が落ち掛け、夕焼けに赤く染まった村の入口に陣取る僕と姉さん。その後ろでは、村人達が慌しく避難を始めている。

 森からの騒音は更に近付いていた。

 しかし、何ら慌てる事は無い。


「ゴブリン五百体、ねぇ」

「普通なら、銀級の冒険者パーティの案件です。攻撃魔法の使い手と、回復魔法の使い手、充実した盾役に優秀な指揮官がいるくらいが前提条件ですね」

 やだ、やけに具体的。しかし、まぁ数の暴力に対応するならば、そんなものなんだろうな。

「この辺は初めて実戦で使うなぁ」

 黒い鉄の塊をポンと叩き、狩りの時を待つ。


 そして、その時が来た。最初に姿を見せたのは、必死の形相でこちらに走って来る、件の冒険者三人。

 その装備はボロボロになり、全身が血に塗れている。それでも逃げ足は速いらしく、後ろのゴブリンの群れより随分と前を走って来たようだ。


 僕達を目視すると、三人は怒りの形相を浮かべる。

「クソッ、あのガキどものせいでこんな目に!!」

「このまま、あいつらにゴブリン共をぶつけるんだ!! そうすりゃ、ちったぁ数が減る!!」

「あの女もかよ!? 勿体ねぇ!!」

「一番注意が引けるのは、あの女だろうが!! 命にゃ変えられねぇ!!」

 随分と自分勝手な事をほざいているな。

 まぁ、不本意ながら助けてやる事にしよう。少しは悪かったかなーとも、思っているからね。


 だというのに、僕達の横を通り過ぎようとする際、大男が剣を握る手に力を篭めた。

「逝ってこいクソガキ!!」

 剣を振るおうとする大男。

「やなこった」

 さっくり発砲する。

「アガァッ!?」

 弾頭を三つ目熊の皮にした弾で、腹を撃つ。

 三つ目熊の皮は弾力があり、正にゴム代わりになるのだ。つまりゴム弾である、勿論死なないが、超痛い。


「死にたくなかったら走れ走れ、行かないとゴブリンの餌にするぞ?」

 憤怒に顔を赤く染めながらも、命が惜しいのか冒険者達はそのまま走り出す。


 そしてゴブリンの大群が、暗闇からその姿を見せた。

「んじゃ、ポチっとな」

 僕は手に持ったボタンを押す……これは、ある遺失魔道具アーティファクトの起動スイッチだ。

 面倒くさいし、バカ正直に大群を相手にするつもりなんて無い。これから始まるのは……一方的な狩りだ。


 ——ドゴオオオォン!! 

「ギャアアアアアアアアアアアア!?」


 盛大な爆発音と共に、数体のゴブリンが宙に身を躍らせる。その異常事態に、ゴブリン達の足が止まった。

「飛び上がるほど感動的だったのか。お気に召したようで何よりだ」

「言葉の意味が解っていたら、ゴブリン達が必死で否定するでしょうね」


 原因は、ゴブリン達の足元にある……そう、地雷である。正確には地雷型遺失魔道具アーティファクトだ、名前はまだ無い。

 コイツを踏むと、指向性を持たせた爆裂魔法が直上に向けて発動する。

 ちなみに、使い捨てじゃ無い。設置した個所に踏み入れば、何度でも発動する鬼畜仕様である。


「……ゲギャ?」

「ギャギャ……」

 ゴブリン語(?)で何かを相談したようで、二匹のゴブリンがそろーりと足を踏み出す。

 ——カチッ!

 ——ドゴオオオオン!! 

「「ギョエエエエエエエエエエエエエ!?」」

 そして吹っ飛んだ。

「馬鹿だなぁ、どんなに気をつけても踏めば発動するんだよ」

「情け容赦無しですね、ユーちゃん」


「ギャギャ!」

「ギャゴ!」

 今度のゴブリンは、爆発した所をジャンプして交わそうと跳び上がり……。

 ——カチッ!

 ——ドゴオオオオン!! 

「ギュギャアアアアアアアアアアアア!?」

 また吹っ飛んだ。

「残念だけど、この村の森側は全面的に地雷原なんだよなぁ」

「ゴブリン達が哀れに思えてきますね、同情はしませんが」


 さて、地雷原が危険だと十分認識できたであろうゴブ共は、ビクビクしながら迂回して村に入ろうとし始めたようだ。時折地雷に触れて犠牲になったゴブリンの足跡を参考にしながら、村を襲おうと目をギラギラさせている。

 だが、地雷だけで終わると思ったら大間違いだ。

 ”俺”は失態を犯し、それを清算する為にこの場に立っている。村に入れると思うなよ。


「まずは、コイツの出番だな」

 両手に、巨大な鉄の塊を携える。

 その威容に、ゴブリン達が警戒心を浮かべる。初めて見るそれが、何なのか解らないのだろう。

 しかし、大きさからハンマーのような殴る為の物だろうと判断したのだろう。こんな”銃火器”を見た事無いだろうから、仕方ないけどな。

 その判断が間違いだという事を、教えてやろう。


「さぁ……蹂躙の時間だ」


 ――ドゥルルルルルルッ!! 

 ――ドドドドドドドドドド……!! 

 無骨なフォルムの“それ”は、回転式四砲身の、所謂ガトリングガン。連射型掃討兵器(ロマン)であるっ!!

 凄まじい回転音が唸り、同時に発砲音が響き、情け容赦なく吐き出される銃弾の嵐。

 それが、迂回して村を襲おうとしたゴブリンに容赦なく直撃していく。凄まじい速度で飛来したそれに、ゴブリン達の身体は吹き飛ばされ、その身を削られ、息絶えていく。

 やっべ、コレ気持ちいいわ! 


「ユーちゃん、コレ使ってもいいですか?」

 見ているのに飽きたのか、姉さんが黒い筒状の銃器を持ち上げて、声をかけて来た。

「ほいほい、いいともさ」

 すると、姉さんは俺が撃つ方向とは逆に展開するゴブリン達に、銃口を向ける。


「では、行きます」

 ズドンッ!! という音と共に吐き出されたのは、ロケット型の砲弾。そう、姉さんが持っているのはロケットランチャーである。

 ――ドゴオォン!! 

 着弾したロケットが轟音を響かせながら爆発し、周囲を炎に染め上げる。血飛沫とゴブリンの肉片が、爆発と共に飛び散っていく。

「何処で使い方を習った?」

「説明書を読んだのよ」

 流石姉さん、キッチリ返してくれるな。


 更に、俺達は手を緩めない。

 逃げようと、森に向かって退却し出すゴブを、スナイパーライフルで狙い撃つ。決死の形相で、俺達から離れた村の入口に駆け寄るゴブに、姉さんが手榴弾を投げる。

 地雷原を運良く抜けて来たゴブには、至近距離からショットガンをお見舞いする。呆然と立ち尽くすゴブに、姉さんのマシンガンの弾が殺到する。

 地雷に銃弾・砲弾の嵐。


 結果、十五分後にはゴブリン全滅。呆気なく終わってしまった。

「倍くらいいても良かったのに」

「弾も大量に残ってますもんねぇ」

 用意した弾の五割は残っている。

 まぁ、一年かけて用意して来た銃火器と弾丸・砲弾だ。本当に全て無くなったら、少々どころではなく懐が痛くなるのだが。


「な、なんという……私は夢でも、見ているのか」

 村から覚束ない足取りで近付いてくる村長。こちらに向ける視線からは、得体の知れないものに対する恐怖が宿っていた。

「集落のゴブリンは、これで全部じゃないか? 見ての通りだ、当面の脅威は無いだろう」

 銃火器を“宝物庫の指輪ストレージ”に収納しながら、村長に声をかける。


「最後の戦闘は依頼外だ、追加報酬は要らないから安心してくれ」

 自分のミスを清算する為にした事だからね、報酬なんて貰えない。

「そ、そうですか……それは、その……助かります……それで、何をお望みで……?」

 視線をあっちこっちへ泳がせながら、村長が足をガクガク震わせている。


「何も?」

「……本当ですか?」

「この戦闘は(自分で製作して)手に入った武器を、試しに使ってみたかっただけだから」

 入手先とか聞かれても困る、遺失魔道具アーティファクトを作りましたとか言えないから。


「……あ、一つだけ。ゴブリン共を引っ張って来た、あの冒険者達を縛っておいてくれ」

「は、はい! すぐにでも!!」

 そう言うと、村長は呆けている男性達を急かしながら、冒険者達へ詰め寄っていく。

「ゴブリンの大群を悠々と殲滅した事で、ユーちゃんの事を怖い人だと思ってますね」

 半分やったのは姉さんなのに、そんな事言われてもなぁ。

************************************************************


【名前】ユート

【職業/レベル】付与魔導師エンチャンター/10→12

【技能】付与魔法Lv5・遺失魔道具アーティファクト製作Lv6・魔道具製作Lv5・銃撃LV2・剣術LV2

【称号】勇者の息子・聖女の息子・刻印の付与魔導師(エンチャンター)遺失魔道具(アーティファクト)職人・銃使い・人間武器庫・ゴブリンキラー(NEW)


【名前】キリエ

【種族/性別/年齢】人間(人化天使)/女/16

【職業/レベル】剣士フェンサー/16→18

【技能】法術LV10・火魔法LV10・水魔法LV10・風魔法LV10・地魔法LV10・光魔法LV10・神聖魔法LV10・剣術LV10・銃撃LV10

【称号】勇者の義娘・聖女の義娘・創世神の天使・ユートの守護天使・剣士・銃使い・ゴブリンキラー(NEW)


************************************************************

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ