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刻印の付与魔導師(エンチャンター)  作者: 大和・J・カナタ
第11章 ラルグリス王国
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11-04 暗躍/お仕置き

これまでのあらすじ:ラルグリス王は偽物らしいです。

 翌日、僕達はブランク伯爵邸を後にし、二手に別れて王都へ向かう馬車の中に居る。

 アリス・リイン・クリスには、使者として王都へ向かっている。同行者はフリード・クラウス・マルクだ。ラムレイの引く箱馬車で、ラルグリス王への親書を届けに行って貰う。


 残りのメンバー全員でスタリオンの引く箱馬車に乗っている。

 僕達は冒険者のフリをして移動しているのだが、これは会談前に色々仕込みをする為である。

 一部の仕込みの為には潜入が必要だ。隠者の衣ステルススーツを用いて姿を隠すことは誰もが出来るが、マップで目標を補足したり周囲の索敵をするのは、”真実の目プロビデンス”や”識者の眼鏡プロビデンスグラス”が無いと厳しい。


 識者の眼鏡プロビデンスグラスは、いつの間にかユウキがそう呼び出したんだよ。ルビ付きとは、やはりユウキは解っているね。

 なので、王城への潜入は僕とユウキで行う事になるね。


「まずは親書の返答が出るかだが……まぁ、それについては問題ないだろう」

「えぇ。何せあちらから、世界同盟に加盟したいと言い出した訳ですから」

 そう、先に世界同盟に加盟したいと言い出したのはラルグリス王(偽)なのだ。それに対し、世界同盟の盟主って事になっているアヴァロン王国が、ラルグリス王国へ訪問し会談の席を設けたいと言い出した。

 これは不思議でも何でもないし、あちらも断る訳にはいかないだろう。あちらは会談の話を受け入れるしかないのだ。


 さてさて、そんな訳で僕達は王都へ真っすぐではなく、王都付近の街へと向かっている。

 公都ベルストア……バルドレイの直轄地だ。彼は、一応公爵だからね。

 何故こんな所に来たか……それは、ある物を発見したからである。“魔力溜まり”……つまり、魔力が集中し、魔物が集まる地点。十中八九、大迷宮だろう。

 そんな訳で、僕達は大迷宮の様子を確認し……今回の件が終わったら、とりあえず大迷宮攻略を敢行できるように準備をしておこうという訳だ。


 ……


 公都ベルストアに到着し、大迷宮付近の様子をマップで確認した所、近辺には兵士がウヨウヨ居た。

「ふーむ……兵士が居るね」

「やっぱり、大迷宮を把握した上で隠していたみたいだね」

 勝手に立ち入らないようにしているのかな。


 しかし、何でまたそんな事をするのだろうか? 

 クロイツ教国の宣言で、大迷宮最深部には根源魔法アカシックレコードが眠っているという事実が、世界中に広まったのはつい最近だ。

 しかしラルグリス王国は、ずっと前から大迷宮の存在を隠していた。それは、何故?

 彼らは根源魔法アカシックレコードの事を知っているのだろうか。あるいは、僕達の予想の外に理由があるのかもしれないけど。


「どちらにせよ、やる事は一緒だな」

「そうだね、大迷宮付近にユートの魔力を記憶させて、いつでも転移できるようにする」

「さて……それでは、どう動きますか?」

 メグミの言葉に、僕は思考を巡らせる。流石に全員で向かうのはなぁ。


「そうだな、ユウキ達は公都で情報を集めて貰えないかな。転移ポイント作りなら、人数は必要ない」

 遺失魔道具アーティファクトを使えば、特に苦労することなく終わるだろう。

「解った……でも、一人で行くのはダメだよ?」

「あ、じゃあ私もお兄ちゃんと行くよ」

「陛下付きのメイドはー、いつでもお側にー」

 あぁ、この展開は予想済みでしたよ。


「それじゃあ、エイル・ヒルドは僕と一緒においで。そうしたら、キリエ・アイリ・メグミにはアヴァロンへ一度飛んで貰いたい。各国の王様達に、現在の状況を話して欲しいんだ。頼める?」

「本当は一緒に行きたいですが……ユーちゃんがそう言うなら」

「ユート様の仰せのままに」

「はい、先輩。任せて下さい」

 苦労をかけるなぁ。事が終わったら、少しまた時間を作って何処かにデートでも連れて行こうかな。


 ……


 仲間達と別れ、僕はエイルとヒルドを連れて、大迷宮付近へ向かう。馬車は置いて来てあるので、移動手段はそれ以外になるのだが……。

「いやぁ、魔導兵騎は空が飛べるから楽だよなぁ」

 僕が魔導兵騎バハムートを呼び出して、エイルとヒルドを肩に乗せて飛行中だ。

「純粋に移動手段として魔導兵騎を使うなんてねぇ……空を飛ぶのは気持ちが良いけど」

「でもー、これならバレなくて済むねー。わー、街があんなに小さく見えるー!」

 何だかんだで、エイルとヒルドも空の旅を楽しんでいるようだ。


 二十分程飛行して、僕達は魔力溜まりが確認された地点の上空に到着した。

「ふぅん……大迷宮に入ろうとしているみたいだよ」

「うんー。でもでもー、流石にこの人数でも、力不足じゃないかなー」

 確かに、眼下の兵士達を見た所、レベルやステータスは高いけど技能レベルが低いな。


「ダークエルフ族は、ステータスは上がりやすいけどねー、技能レベルが低いのが特徴なんだよねー」

「へぇ、流石にそれは知らなかったな。でもそうすると、ローレンさんはどうなんだろう? あの人の技能レベル、普通に高かった気がするけど」

「それは弛まぬ努力を続けたからこそじゃない? きっと生半可な苦労じゃなかったはずだよ。だからこそ、英雄と呼ばれるようになったんだろうね」

 ただの脳筋じゃなかったのか……ちょっと見直したよ。


「で、どうするー?」

「そりゃあ、行くさ。それじゃあ、隠蔽と消音を発動!」

 魔力を流し、刻印付与の効果を発動させる。

「……お兄ちゃん、何でもありだよね」

「流石に、神でもこれは驚きだよー……」

 ははは、その内慣れるだろうさ。正確には、感覚が麻痺するだけなのかもしれないけど。


 そのまま、大迷宮入口の天井部にある岩に魔力の刻印を描いて付与する。これは、婚約者達と一緒に作った魔法で、“指標マーカー”と呼ぶ事にした。

 これ、転移ポイントとしてだけではなく、視覚同調やマップ起点にも使える優れものだという事が判明した。何か、どんどんいやらしい能力が増えて行っている気がする。侵入に盗撮に監視。うーん、犯罪者チックな感じが……。


 まぁ、とりあえず大迷宮はこれで良しだね。

 では、次なのだが……そっちは、使者組の到着を待たないといけない。

 ひとまず、公都に戻ろうか。


************************************************************


 大迷宮の仕込みを終えて、公都を散策していた所で使者メンバー達から念話連絡が入る。夕方だから、予定通りと言えば予定通りだな。

『陛下、ラルグリス王が会談を了承しました』

 やはりそうなるよね。


『確かに私の記憶にあるラルグリス王でしたね』

『……目、厭らしい』

『そうですね……私達を舐めるように見て来て、正直気持ち悪かったです』

 僕の婚約者に対して良い度胸だな、偽王が。これは教育的指導が必要だな。

『ご主人、感情が流れてますから!』

『ちょっと怖えんだけど』

 クラウスとマルクが、ちょっと震え声になってる。


『悪い悪い……日程にも問題なし?』

『えぇ、特に異論は無いようでした……驚いてはいましたけどね』

 まぁ、そりゃあいきなり“明日の正午にアヴァロン王が会談に伺う”なんて言われたら驚くわな。

 しかしバルドレイも、クロイツ教国での勇者の集いで、アヴァロン王国の所有する遺失魔道具アーティファクトは目の当たりにしているはずだ。ならば急な訪問でも、実行に移せると納得するだろう。


『ユートさん。バルドレイは恐らく、会談の場でもバルムンク王の評価を更に下げるつもりではないでしょうか』

『だろうなぁ……』

 つまりは、会談の場で何かをしでかす可能性が高いという事だ。警戒だけはしておくか。


『まっ、とりあえずは第一段階成功だな。皆はどうなるんだ?』

『一応は使者ですからね。一晩は泊まって行く事になりそうです』

『……あの厭らしい偽王が、何かしてくるかもしれないですね』

 えぇ……他国の王の婚約者……それも、魔王の妹やイングヴァルト・ヴォルフィードの公爵令嬢にか? 

 ……あ、やるかも。解っていても、欲望に抗えないのだろう。

 何故なら、僕の婚約者達は皆可愛いからね!!

 まぁ、だからといってそれを許すつもりは無いけど。

『だーかーらー! 思考漏れてますよご主人!』

『ノロケは当人同士でやってくれねぇか、ユート』

 おっと、いかんいかん。


『とりあえず、予定通りに行こう。夜の身の安全については、それに対応できそうな遺失魔道具アーティファクトを作るよ。アテがあるからね』

 大切な婚約者に、大切な仲間達だ。汚い手で、指一本触れさせない。


************************************************************


 念話報告を終え、今後の予定を突き詰める。

「夜になったら、行動開始だな」

 いよいよ王城潜入と、もう一つの仕込みだ。最後の仕込みは、ブランク伯爵に頼んである。

「ユーくん、誰を連れて行くのかなー?」

 ……来たがっているな。エイルも視線で訴えかけている。

 しかし、彼女達に任せたい役割があるのだ。竜眼を持つエイルと、神眼を持つヒルドだからこその役割が。

「二人には、お願いがあるんだけど……」

 僕は、お願いの内容を二人に話す。


「……それならまぁ、仕方ないかなー」

「むぅ……確かに。それにお兄ちゃんのお願いだし……」

 納得してくれそうな感じだな。

「済まないが頼むよ。これが、バルドレイを追い詰める為の布石になる」

「もう、ちゃんと感謝してよね?」

「ユーくんの役に立つならー、引き受けちゃうよー!」

 引き受けてくれた二人に御礼を言って、僕はユウキとこの先の打ち合わせをする事にした。


 ……


 日が落ちた頃、僕はユウキと共に行動を開始する。二人揃って隠者の衣ステルススーツを身に纏い、門弾ゲートバレットで転移魔法陣を開く。

 転移先は、婚約者三人の居る場所……ラルグリス王城である。


「やっ、問題ないかい?」

「ええ、こちらは現状問題ありません」

「この後は、解らないんですけどね……」

「……気持ち悪かった、偽物……」

 おっと、随分と不快な思いをさせてしまったようだな。

「ありがとう、三人とも。遺失魔道具アーティファクトも用意しておいたから、君達には決して手を出せないようにしておくよ」

「ありがとうございます、ユートさん」

「ん、流石」

 そんな褒めても何も出ないよ、クリス。後で何か買ってあげちゃう。


「それで、ユート君達はすぐに行くんですね?」

 左目で、既に色々な情報を取得していっている。すぐにでも行動を起こせそうだな。

「あぁ、さっさとこの国のゴタゴタを終わらせて、今回のお礼に皆とデートでもしたいからね」

 冗談めかした言葉だが、紛れもない本心だ。それを察したのだろう三人は、嬉しそうに顔を綻ばせてくれた。うん、やはり笑顔の彼女達が、一番可愛いな。


「何て言うか、流石だよね。皆を笑顔にする事にかけては、右に出る者は居ないでしょ」

 微笑ましそうな視線を向けて来るユウキ。

「そりゃそうだ。今はまだ、だけどね」

「と言うと?」

「子供が出来たら、きっと互角の勝負になるだろう」

 そんな将来の話をしたら三人は照れ出し、ユウキは砂糖でも吐きそうな顔をした。

「はいはい、それじゃあ行こうか」

「そうだな。それじゃ、ちょっと暗躍してくるね」

「はい、暗躍して来て下さい」

 冗談めかした言葉に対する、冗談っぽい返答。気負いなど全くない、僕達らしいやり取りだ。


 王城の廊下、その中央を平然と歩く。擦れ違う者達も、誰一人として僕達には気付かない。

隠者の衣ステルススーツ……本当に便利だね』

『まぁねー。でも、あまり濫用はしてはいけない物だね。今回みたいに、相手が悪党の場合のみ使うくらいにしておかないと』

『うん、ユートならその点は心配していない。悪人の手に渡らないようにするのが、大事だよね』

 腕輪クロスリンクで会話しながら、僕達は目的地を目指す。


 目的地……王の居室。そこに、バルドレイが居た。ワイングラスを片手に、夜空の月を眺めてニヤニヤしている。

 しかし……なぜか、ブーメランパンツ一丁で。

『すっごく滑稽だね!! 』

『やめるんだ、ユート! ぷっ……駄目だ、噴き出しそうだ……っ!! 』

 ブーメランパンツ一丁でワイングラス片手にニヤニヤしているコイツは、もう色々台無しだよ!! 


『何でTバックなんだよ! もう、あれだ。これ写真に撮ってバラまこう。僕の新作遺失魔道具アーティファクト、“追憶の断片メモリアルスナップ”が火を噴くぜ!』

『カメラ作ってたの!? ってかやめなよ! こんな汚い尻を撮る為に作った訳じゃないでしょ!?』

 ……それもそうだな。


 コイツを作ったのは、僕の婚約者達の姿を撮影したり、ユウキとその恋人達の仲睦まじい姿を撮影したり、王城のメンバーで遊ぶところを撮影したり、いずれ生まれて来る子供の成長過程を撮影したりする為の物だ。

 その追憶第一号が、汚い尻のおっさん……それも、偽王の尻っていうのは座りが悪い。尻だけにね!! 

『ユート、全然うまくないから、それ』

 僕の周囲の人は、何で心を読む事が出来るのかね。


 さて、そんな偽王バルドレイは、ワイングラス片手に何やら待っている様だ……ブーメランパンツ一丁で。

 そろそろおっさんの尻を見せ付けられるのに飽きて来た所で、扉がノックされる。

「入れ」

 入れちゃうの!? その恰好で、人を招き入れちゃうの!? 


 っと、これはこれは……手間が省けたな。

「……クククッ、いいザマだなぁ……兄上殿」

 そう……この王の居室に連れて来られたのは、バルムンク・デア・ラルグリス。この国の正当な王だ。

「グゥ……ッ!!」

 猿轡をされたバルムンク王は、バルドレイを睨み付けている。しかし、両手足を拘束され、更には詠唱封じの首輪という魔道具を付けられて、何も出来ずにいるのだ。


「聞いてくれよ、兄上殿? 今日、アヴァロン王国から会談の申し入れがあったんだ。あぁ、アヴァロン王国と言われても、五年間も幽閉されていたアンタには解らないよな。天空の島に建国された、新王国だよ。なんでも十五歳の若造が王らしいが……その会談で、アヴァロン王を殺害したら、アンタの名声は完全に地に落ちるよなぁ」

 こいつ、会談の場で僕を殺そうとしていたんか。成程、そりゃあ決定打だな。

『絵に描いた餅……』

 うん、そうね。コイツ程度に殺されるほど、ヤワじゃない。

 天使の守護や神竜の加護、大迷宮踏破によって底上げされたステータスがあるからね。僕自身の力じゃないのが情けないけど。


「そいつは、何でも六人も婚約者がいるらしくてなぁ……どの女も、甚振り甲斐がありそうだ。アヴァロン王を殺したら、そいつらを囲って毎晩楽しめそうでよぉ。今から楽しみで仕方ないぜぇ」

 ……よし、コイツは殺す。公衆の面前でブーメランパンツを切り刻んで、息子さんと泣き別れさせた上で殺す。マスカットしてやる。

『捕らぬ狸の皮算用……』

 ユウキのツッコミが、中々に的確。


「でだ……今日はその前祝いに、ちょっとゲストを用意していてな? やっとシーリン伯爵が匿っていたのが解ってなぁ」

 そう言って、バルドレイはパチンっと指を鳴らす。手下らしい男達に両脇を掴まれ、引き摺られて来たのは一人の少女だ。

「むぐぅっ!? むぅぅっ! んんぅっ!!」

 目を見開き、必死に何かを叫んでいるバルムンク王。しかし、猿轡のせいで言葉にならない。


『……バルムンク王の娘か。ラピストリア・デア・ラルグリス、二十一歳、独身』

『そして、状態異常……この状態異常は初めて見る。ユートは知ってる?』

『いや、僕も初めて見るね。多分薬物による物だろうね』

 さて、そんなラピストリア王女を引っ張って来たのは……あぁ、だからブーメランパンツなのか。

「目の前で、最愛の娘が犯されて純潔を散らす様を見ていろ! あぁ、死んだお前の嫁に似て、美人に育ったじゃないか! ヒヒヒッ……!」

 だよねー。


『……ユート、あのさ……』

 む? ユウキ、もしかして介入したい? 武力介入しちゃう?

『コイツ、この場で首を刎ねてもいい?』

『それは俺のお楽しみだからなぁ……代わりに、代替案があるけど』

 念話で代替案を告げると、ユウキは頷いた。

『ごめん、勝手な事して』

『いや、事前に許可取ったじゃん。勝手じゃないから良いの。僕もこいつに彼女を強姦させる気は無かったしさ……それじゃ、ユウキ。責任は“俺”が取ってやる、好きにやれ』

『……感謝する、我が王』

 そう告げて、ユウキが行動を起こす。


 王女の両脇を拘束する兵士の首が、飛んだ。

「……ぬぅっ!?」

「むぅ!?」

 バルドレイとバルムンク王が、揃って目を見開く。更に、二人。バルムンク王の両脇に立つ兵士の首が飛ぶ。


「悔い改めろ」

 冷たい声色で、ユウキが武器を持ち換えた。

「何者だっ!? おいっ、誰か! 侵入者だっ!!」

 バカめ、お前がバルムンク王やラピストリア王女を衆目に晒さない為に、この場で息絶えた四人以外を遠ざけたのだろうが。

 やってやれ、ユウキ! あっ、折角なのでアレをやっておこう。


「ででーん、バルドレイ、アウト~」


 さぁ、お仕置きの時間だ!! 

「はぁっ!!」

 勇者に与えられる神の加護+大迷宮踏破ボーナスで底上げされた、ユウキによるお仕置きバットのフルスイング!! 

 ――ズパァンッ!! 

「のほぉっ!?」

 ちなみにこのお仕置きバット、肉体を破壊しない代わりに痛みを倍増させる、とてもとてもえげつないバットです。

 誰だろうね、こんなの作ったの……そう、僕だよ!! 


 そんな訳で、もう一発いこうか! 

「ででーん、バルドレイ、アウト~」

「ひぇっ、なっ、何が……っ!!」

 ――ズパァンッ!! 

「ふごぉぁっ!!」

「ででーん、バルドレイ、アウト~」

 ――ズパァンッ!! 

「ひぎぃっ!?」

 折角なので、僕も参加しよう。


 神竜の加護+大迷宮踏破ボーナスで底上げされた一撃を喰らえや!! 

「ででーん、バルドレイ、タイキック~……オラァッ!!」

「オゴォッ!?」

 バルドレイがガクッと気絶した。あー……お尻、いっちゃったね。しまったな、これくらい手加減してもダメなのか。

「仕方ない、明日の会談にコイツが出られないと意味がない、甚だ不本意だが直してやろう……」

 ケツに、体力回復魔法役ポーションをかける日が来るとは……あっ、お仕置きした後の息子さんにかけた事あったわ。


「ぐ……むぅ!? むぐぅっ!!」

 あっ、バルムンク王とラピストリア王女を忘れていたわ。

「とりあえずお仕置きは出来たし、一旦撤退だな。いいかバルムンク王、これからアンタと娘さんを安全な場所に匿う。今は信じて付いて来い、反論はあるか? ないな? あっても口にはしないよな? 反論があっても連れて行く」

 畳み掛けるように告げる僕の声にバルムンク王は戸惑いつつも、ここから逃れる術は他に無いと察したようで、しばらくの逡巡の後に首を縦に振った。


「相変わらずの暴君……」

「ははは、よせやい」

「褒めてないからね! あっ、ごめん。あともう一回」

 やだ……ユウキってば、意外とドS!! 

 ――ズパァンッ!! 

「ぐもっ!?」

 ははは、明日は尻の痛みに耐えながら会談に出るといいよ。

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