表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刻印の付与魔導師(エンチャンター)  作者: 大和・J・カナタ
第10章 イングヴァルト王国Ⅱ
125/327

10-05 守護者Ⅲ/アレキサンドリア

これまでのあらすじ:ヒルドとノエルさんが同行します。

 大迷宮内で大型の魔物から避難していた兵士達は、無事に救出を完了した。なので、僕達は攻略を再開する事に。


 魔力回復を妨害し、更には消費魔力を三倍にするという魔導師殺しの大迷宮。でもそんなの関係ねぇ。

「とりゃっ!」

「えいっ!」

 エルザやマリアの痛烈な攻撃が繰り出される。

「どっせーい!」

「甘いっ!」

 その死角から襲いかかろうとする魔物を処分していくユウキとマナ。この分なら、当分僕達の出番はなさそうだね。


「さ、流石ですね……! 勇者様の戦いをこの目で見られるなんて……」

「うわぁー、皆強いねー」

 ノエルさんはともかく、ヒルドは仮にも神のくせに感心するなよと言いたい。

「管理権限や神力とやらで、似たような事ができるんじゃないのか?」

「まぁ、出来るっちゃ出来るー」

 出来んのか、やっぱり。


「でもそれはー、創世神様から賜った力だからねー。自分の実力だなんてー、口が避けても言えなーい」

 ……ヒルドに対する好感度が上がった。

 僕も同様に守護天使キリエ神竜エイルから加護を与えられている身だからな。それは僕自身ではなくキリエやエイルがくれた力だと、常々自戒している。


 そんな話をしていると、背後からゴブリンの群れが現れる。挟撃する程度の知恵はあるらしい。

 ゴブリン達は得意気な感じで駆け出してくるが……馬鹿だなぁ。

「ふんっ!!」

 拳で頭部を粉砕するフリード。

「……無駄」

 鎌で首を刈り取るクリス。

「はっ!」

 盾で撲殺するメグミ。

 前衛同様に、殿チームもサクサク敵を狩っていく。


 勿論、それだけではない。

「そこですね!」

「隙ありです!」

 キリエのガンレイピアが敵の脳天を貫き、アイリの双銃刀が首を落とす。

「はあぁっ!」

「てーやー!」

 ノエルさんがショートスピアで心臓を一突きし、ヒルドのメイスが首の骨を叩き折る。

 殿組だけでも、軽くあしらえる程度のレベルの敵だ。そこに支援が加われば、殲滅速度は上がる。


 結果、会敵から三分足らずで、ゴブリン達は無様な死に様を晒していた。ウルトラな巨人達が十分に戦える時間だな。

 そして、やはり出番がなかった。そろそろ攻略に参加したいなーとは思うんだが、他の面子がやる気十分だしなぁ……。

 大丈夫かな、僕。大迷宮攻略に貢献してないって判定されたりしないかな?


 そんな不安を感じつつも、大迷宮攻略は順調に進む。既に進行度は七割を越えており、いい加減に僕も参加した方が良いだろう、流石に。

「そろそろフォーメーション変えて良い?」

 僕も攻略に参加しないといけない。そのままじゃ一緒に居るだけだもんね。


「あー、確かにそうだね……どんなフォーメーションで行く?」

「とりあえず、僕とアリスとリインはおまけ状態だったし……それなら、僕ら三人が前に出るのが良いかなぁ」

 その言葉に、ある人物が手を挙げた。

「陛下ー、私も参加ー!」

「あの、お邪魔じゃ無ければ私も……!」

 ヒルドとノエルさんである。


「良いけど、何でまた?」

「陛下の戦闘をー、近くで見たいー?」

 何故に疑問形ー? おっと、僕まで語尾が間延びしそうだ。

「私は、その……ユートさんのお力になれないかと……!」

 ノエルさんってば、そんな気を使わなくても良いのに。

 でもまぁ、五人なら一パーティくらいの人数だし、問題無いかな。


「うん、じゃあそうしようか」

 配置を変えて、僕は最前線の中央に陣取る。

「さて、”俺”も殺るか」

 一つ気合を入れて銃剣を抜くと、後の面々が苦笑する。

「出た、暴君モード……」

「勝ったな……」

 マナは何、ゲ●ドウポーズしているんだよ。


「ブモォォッ!!」

 駆け抜けてくる大猪型の魔物達。

「さーてーと」

 とりあえず、僕は背中に背負っていた遺失魔道具アーティファクトを手に取る。それは、円形の盾……以前使用した兵器である。


「初手は俺が貰う、生き残りの処理を頼む」

 そう言って、俺は皆より前に出て大猪の突進を盾で受け止め……盛大な爆音が鳴り響いた。

 吸収ドレインと指向性爆裂魔法エクスプロージョンを刻印付与した愛用兵器のバリエーション。悪魔族の腕すら吹っ飛ばした、持つ地雷パイセンである。

 この大迷宮において、相手の魔力を奪って発動する地雷パイセンはかなり重宝するだろう。


「……やはり、地雷型遺失魔道具アーティファクトは反則レベルの武器ですね……」

「戦ってすら貰えない魔物達に同情心すら感じるよ」

「戦……闘……?」

「す、凄い……ですけど、これは……」

「……いつもの事」

 溜息を吐くキリエと、苦笑するユウキ。この光景を見てポカーンとしているヒルドとノエルさんに、クリスが苦笑しつつ説明していた。


 さて、地雷によるダメージを運良く回避したらしいラッキーな大猪達も居る。一瞬で死んでいった同類達に困惑しつつも、目前の標的に向けて突進を開始する。

 そんなラッキーな大猪達には、相手をしてやる権利をプレゼントだ。

「抜けたぞ、いけるか?」

「大丈夫です!」

「任せて下さい!」

「は、はいっ!」

「あっ、私もー!」

 力強い返答と共に前に出てきた四人が、突進する大猪達に向けて駆け出す。


 アリスの突きで頭部を破壊され、リインの弓銃の刃部分で首を斬られ、ノエルさんのショートスピアで抉られ、ヒルドのメイスで頭を粉砕されていく。

 爆発の余波でダメージを受けている奴らは、こっちで処理しようかな。

「おかわりだよー」

 持つ地雷パイセンを押し付ける。爆ぜた。


「き、鬼畜の所業……!!」

「最後の、あのメイズボアの表情……怯えてませんでした?」

「どちらにせよ討伐するんだし、良いんじゃないでしょうか?」

「まぁ、そうなんだけど……さ」

 仲間達が何か雑談しているが、相手の魔力で爆裂魔法エクスプロージョンが使えるんだし、やらない手は無いと思っただけなんだけどな。


 魔物達の強さはアヴリウス大迷宮の方が上だし、トラップの質の悪さや狡猾さはディアマントの独壇場だろう。

 この大迷宮は、魔力をいかに消費せずに攻略出来るかという部分に重点を置いているのでは無かろうか。

 ならば、魔力を持つモノから奪って使えばいい、という僕なりの回答として持ち出したのが、持つ地雷パイセン。

 持つ地雷パイセンを活用しながら、どんどんと先へ進んでいく。

 幸いマップが使えるので、迷う心配も無用だ。最初は、「これ、ズルじゃないかな?」とか思っていたのだが、もう今では「これが僕の攻略法です」と開き直っている。


 そんなこんなで、魔物の死体を量産し続け……ようやく、僕達は最深部の一歩手前……試練の間に辿り着いた。

「よし、着いたな」

「この先に控える魔物は、やはり情報は無しですか?」

「マップに詳細が表示されないから、初見の魔物だね」

 ケルベロス、ヒュドラと来ているから、やはり地球でも名前の知れた神話の怪物なのだろうか? 

「よし、所謂ボス戦だ。全員、回復をした上で挑むぞ」

「「「「「はいっ!!」」」」」


************************************************************


 準備を整え、僕達は試練の間の扉を開く。部屋の作りはアヴリウス大迷宮やディアマント大迷宮と同じだ。

 さて……先に居るのは……。

「ふーん、ベヒーモスか」

 ベヒーモスってバハムートの元ネタって言われてなかったっけか。しかし、某有名RPGでは両方登場するが、似ても似つかないんだよねぇ。立ち位置も違うし。

 折角だから、魔導兵騎バハムートで討伐するのもいいな。


「突入後は、とりあえず銃で手足に攻撃するか。レールガンでも良いよ」

 僕の指示に、全員が銃撃の準備をする。

「ノエルさんとヒルドは、僕の予備を使うといい」

 ノエルさんとヒルドにハンドガンを手渡す。

「了解です!」

「わーい、ありがとー!」

 勿論“雷属性付与”をしている銃なので、レールガンも使用可能だ。


 それではイングヴァルトの大迷宮、最終戦だ。

「それじゃあ行くぞ!」

「「「「「応!!」」」」」

 駆け出す僕に続いて、仲間達が突入を開始する。僕達が試練の間に入った事で壁の燭台に蒼い炎が灯り、部屋の中を照らし出す。

 その明かりで目を覚ましたベヒーモスが、僕達を見て吠える。

「ガアァァッ!!」


「狙撃!」

 僕の号令に合わせて、皆がレールガンを発射する。激しい銃撃音が連続して響き、ベヒーモスの手足がレールガンとなった弾によって抉られた。

「……この人数だと、あっさり終わりそうなんだけど」

「お兄ちゃんの遺失魔道具アーティファクトの性能が高いからだよ」

 おや、後ろで見ていたエイルが隣に来た。その視線は、抉られた両足でヨロヨロと立ち上がるベヒーモス。


「それで、とどめはお兄ちゃんが?」

「あぁ、魔導兵騎バハムートで殺ろうかと」

 僕の言葉に、エイルがニヤリと笑う……可愛らしい顔に似合わない、獰猛な笑みだな。

「期待しているね、お兄ちゃん。元ネタ越え、よろしくね」

「心を読むなっての」

 さっき、心の中で呟いた言葉を聞き留めていたらしい。


「討伐の成果が良かったら、私から素敵なプレゼントがあるかも?」

 ステータス+200が+300にでもなるのか? そこまでいったら、もう化物レベルなんじゃなかろうか。

 しかしまぁ、やる事は変わらないからな。


「じゃあ……いっちょ派手に行くか」

 円卓の座ラウンドワンを腰に巻き、液晶部分に円を描くようになぞり、タップする。待機音が鳴り始めた時点で、下方向へスワイプし操作を完了。

 格納庫ガレージから取り出された魔導兵騎バハムートに飛び乗り、準備完了だ。

 魔導兵騎バハムート、何気に変身しなくても使用可能なので、今回みたいに魔力節約をしたい時には助かるね。


「さぁ、討伐の時間だ」

 風の噴射ウィンドジェットで加速し、ベヒーモスの眼前に迫る。

「ゴアァッ!?」

 目を剥くベヒーモスだが、隙だらけだな。

「はっ!!」

 一々付き合ってやる気は毛頭ないので、その顎をアッパーカットで殴る。


「せいっ!!」

 浮き上がったその身体、その腹部分に回し蹴りを叩き込む。奥の扉の方に吹き飛んでいくベヒーモスを、風の噴射ウィンドジェットで加速しながら追従する


「……あれっ、これ終わっちゃわないか?」

 壁に衝突したベヒーモスの頭部に、魔導兵騎バハムートの脚部で蹴りを叩き込む。

 そのまま、熟れたトマトが潰れるように、グシャッとベヒーモスの頭部が潰れた。頭部を失った身体が地面に落ちていく。

 あ、呆気ない……。


「お、終わっちゃったけど……良いんだよな、終わりで」

 ケルベロスも殆ど為す術無く首を潰されて死んだし、ヒュドラもちょっと再生する様子を見た後に、首を尽く石化されて粉砕されたが……一応は戦闘という体裁は整ってはいた。

 それに比べて、両手足を抉られ、魔導兵騎で殴られ蹴られ、頭を潰されただけで終わったベヒーモス。

 まさか、攻撃をする暇もなく死ぬとは!! なんて哀れなボスキャラなんだ……!!


「流石~!! ナイスだよお兄ちゃん!」

 ベヒーモスが余程嫌いなのか、あっさり討伐した僕に駆け寄って褒め称えて来るエイル。獣人族なら、今はきっと尻尾をブンブンと振っていただろう。

「魔導兵騎で魔物の討伐をするのは初めてでしたね」

 そう、実戦投入は竜王国で一度済ませたが、あれは竜達を助ける為の戦闘だった。よって、討伐は今回初めてなのだ。


「あぁ、どれだけ戦えるか試してみたかったんだが……」

「何と言うべきか……圧倒的でしたね」

「だよねだよねー! 私達のレールガンでの攻撃が無くても同じだったんじゃない?」

 ……正直、その通りだ。加速による接近と打撃による攻撃。あれは、ボスであるベヒーモスが万全の状態でも、恐らくあっさり勝てるレベルの性能だった気がする。


「……流石、ユート」

「もしかしてー、これは陛下が作ったのー?」

「ええ、ユート様の製作した遺失魔道具アーティファクト魔導兵騎であり、ユート様専用機のバハムートです」

「こんな凄い物だったんですね、魔導兵騎は……」

「コレ、各国に譲渡しないって方針は大正解だったんじゃないですか?」

「確かに……これを使って戦争なんかが起きたら、人類滅亡待った無しだね」

 皆がベヒーモス討伐を終えて気が抜けたのか、ワイワイと話し合う。


 僕はその間に魔導兵騎バハムート格納庫ガレージに収納し、ベヒーモスの残骸をチラッと見る。うわぁ、あそこに落ちているのはベヒーモスの眼球か? 実にグロい惨状。

 だが、もしかしたら何かに使えるかもしれない。なのでベヒーモスの残骸を、宝物庫ストレージに収納しておく。


「さて、それじゃあ大迷宮攻略、締めに入るか」

「そうですね、行きましょう」

 僕やキリエが促すと、パーティメンバー達が首肯して付いてくる。

「それっ」

 相変わらず、少し力を入れただけで独りでに開いていく扉。

 その先に見えるのは、大迷宮を製作したワイズマンの部屋だった。


************************************************************


 この大迷宮……正式名称・アレキサンドリア大迷宮の製作者は、アレキサンドリア・ランスロット・ワイズマン。金色の髪をオールバックにし、口髭と顎髭を蓄えた紳士だった。

 ディアマントのように魂魄魔法を使用して魂を生き永らえさせている訳ではなく、アヴリウス同様に立体映像で一方通行のメッセージを残しただけだった。


 アヴリウス大迷宮では“防御”の、ディアマント大迷宮では“魂魄”の概念魔法アカシックレコードを会得してきた。

 このアレキサンドリア大迷宮で会得した根源魔法アカシックレコードは、“強化”である。魔法を使用しにくい大迷宮で得られる根源魔法アカシックレコードとしては、確かに相応しい物だろう。


 概念魔法アカシックレコードは会得しても、使用できるか出来ないかは本人次第。この“強化”、適応したのはキリエ・アイリ・クリス・エルザ・マリア・フリード・ノエルさん・ヒルドといった、近接戦闘に長けた面々だった。

 僕? 刻印付与すれば使えるから良いんだよ。


 さて、メッセージの内容はアヴリウスと変わらず、悪魔族に対抗する為に根源魔法アカシックレコードを遺したと彼は言う。

《この大迷宮が試すのは、魔法に頼り切らない戦いが出来るか……そして、その状態に耐え抜いて、守護者まで辿り着けるかという、戦略性だ。徐々に耐久性の高い魔物を配置したのも、魔法を多用出来なくしたのもそれが理由だ》

 耐久性が高い? 頭を潰されたり、首の骨を折られたり、頭部と胴体を切り離された魔物達の事を思い出す……そこまで硬かった……かなぁ?

 ダメだ、多分感覚が狂って来ている。


 ちなみに、アレキサンドリア……長いので略してアレキさんによると、ベヒーモス討伐には魔法を使用するのが良いらしい。

 獰猛で、筋力や瞬発力が高く、物理攻撃に対して高い耐久性を持つベヒーモスの弱点は、魔法耐性が低い事なのだ。

「物理攻撃で討伐されたベヒーモスの立場とは」

「最初から最後までー、良いとこ無しの守護者だったねー……」

 何とも言えない空気になってしまった。


《我々ワイズマンの遺した根源魔法アカシックレコード、どう使うかは君次第となる。願わくば、世界と人々の為にその力を振るってくれる事を祈ろう。名残惜しくはあるが、私からのメッセージは以上だ。それでは踏破者よ、君の未来に祝福があらん事を》

 最後の言葉を残して、アレキさんの映像が掻き消えた。


「相変わらず堅いなぁ、アレキサンドリアは。もうちょっと小粋なジョークを入れたりとか、茶目っ気を出したりとかできないかなぁ」

「ディアマントと足して二で割ればいいんじゃないのか」

「ウマが合わないの、あの二人」

 あー……だろうね。その様子が脳裏に浮かぶわ……それと、大体発端はディアマント側にあると見た。


「んー、陛下ー? 質問とかしても大丈夫ー?」

 ヒルドが控え目に挙手をしながら、僕に歩み寄って来る。

「ん、どうしたんだ? 大抵の質問には答えようと思うけど」

 攻略も完了したしね。

「いくつかあるんだけどー」

「まぁ、聞くだけ聞こうじゃないか」

 ヒルドと行動を共にして、彼女に対して度々好感を抱いていた。なるほど正に女神だな、と感心する事も多々あった。

 信仰する神様は? と聞かれたら、今までは創世神様一択だったんだけど、ヒュペリオン神も信仰して良いと思うくらいに、彼女の事は気に入っている。


「じゃあお言葉に甘えてー。まず、陛下は何者なのかなー?」

「アヴァロン王国国王、ユート・アーカディア・アヴァロンだな。職業は付与魔導師だ」

 それしか言いようがない。


「……それだけじゃなさそうだけどー?」

「もっと詳細な情報ってことか? そうだなぁ……両親は先代魔王討伐の英雄である、勇者レオナルドと聖女アリアだ。後は、遺失魔道具アーティファクトの製法に気付き、更に研究して編み出した製法で自己流の遺失魔道具アーティファクトを製作できるよ」

 ここまでは各国の王様も知っているから、話しちゃっても良いだろう。


「……おー、何か思った以上に凄い人だったー」

 納得したのか、ウンウン頷いている。ちょっと可愛い。神に対して不敬かな、この物言いは。

「さっきの装備ー、あれも遺失魔道具アーティファクトなんだよねー?」

「あぁ、割と最近完成した新装備で、悪魔族に対抗する為の装備……魔導兵騎だ」

 そういえば、悪魔族に関してヒルドは何か知っているのかな? 後で聞いてみよう。


「あれは凄いねー、色々な遺失魔道具アーティファクトを見て来たけど、あれはその中でも最高に凄いよー」

 よっぽどビックリしたらしいな。

 まぁ、遺失魔道具アーティファクトを製作できるのは、付与魔導師だ。そして地球から転移・転生した付与魔導師でなければ、そうそうあの発想は出て来ないだろう。


「最後にー、陛下やその仲間達なんだけどー、ちょっと不思議な人達が集まっているよねー?」

 そういえば、ゆっくりと自己紹介はしてなかったな。

「そうだな、もう急ぐ用件も無いし紹介しておくか。じゃあ、皆こっち並んで」

 僕の言葉に従って、仲間達が並ぶ。折角なので、ノエルさんもヒルドの横に並んで貰う。


「まずは僕の婚約者達なんだけど……」

「キリエ・アーカディアと申します」

「イングヴァルト王国アークヴァルド公爵家が長女、アリシアでございます」

「ユート様の元奴隷、アイリといいます」

「ヴォルフィード皇国ヴォークリンデ公爵家が次女、リイナレインと申します」

「オーヴァン魔王国……王妹の、クリスティーナ……」

「異世界より召喚された勇者の一人で、メグミ・ヤグチといいます」

 それに続いて、エイルが笑顔でぶっちゃけた。

「後でお兄ちゃんにプロポーズして貰おうと思います、エイル・アーカディア・アヴァロンです!」

「ちょっと何言ってるのか解りません。後で兄妹会議な」


 話が進まなくなるので、ユウキに視線を向ける。苦笑しながら、ユウキが口を開いた。

「異世界から召喚された、錬成の勇者ユウキ・サクライです」

「異世界の勇者で、魔導師の勇者マナ・ミナヅキでっす! ユウキの恋人でーす!」

「同じくユウキの恋人、ドワーフ族のエルザです!」

「私もユウキの恋人で、ジークハルト竜王国から来た紅玉のマリアンヌよ」

 ユウキの恋人達は、えらく恋人アピールをするなぁ。お熱い事で。


「私はアヴァロン国王陛下にお仕えする、竜人族のフリードリヒと申します」

 そう言って一礼するフリードだが、情報不足だぞー?

「フリードの父親は、僕の父親の仲間で竜人族の英雄なんだ」

 一通りの自己紹介を聞き終えたヒルドが、目をぱちくりとさせている。


「聞きたい事が増えたんだけどー……それは何か長くなりそうー。私も、陛下の国に行っていいんだよねー?」

「うん、さっき言った通りだよ」

「じゃあ、後でゆっくり話を聞かせて貰いたいなー」

「あぁ、いいよー」

 おっと、僕まで語尾が間延びしてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ