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刻印の付与魔導師(エンチャンター)  作者: 大和・J・カナタ
第10章 イングヴァルト王国Ⅱ

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10-01 その後の事/これからの事

これまでのあらすじ:クロイツ教国に嫌がらせ三昧を敢行しました。

 クロイツ教国で行われた勇者の集い、その会場への乱入。あれから三日が経過した。

 会場に居たグレンや、同盟国の面々から寄せられた連絡で、クロイツ教国のその後が解った。


 まず、勇者を擁する国々だが、勇者の集いが混乱のままに終了した時点で勇者共々引き上げたらしい。

 クロイツ教国よりも世界同盟側を刺激しない方が、自国の立場を考えたら安全だという判断を下したようだ。


 クロイツ教国は、国内も混乱の最中らしい。

 魔王が魔人族の英雄である件、アヴァロン建国に多くの国が賛同した件、勇者三人が亡命した件、竜王国でのアヴァロンの活躍…それらを伏せられていた民衆の半分ほどは、教皇への不信感を持ったらしい。

 数は少ないが教都の所々で、クロイツ教皇を退位させるべきという話まで出ているそうだ。


 ここまでがグレンからの情報だ。


 そして、他国からの情報なのだが…クロイツ教皇は、あの後すぐに隣国ファムタール騎士国に使いを出したそうだ。

 いや、騎士国だけではない。オーヴァン魔王国を除く、全ての国家に使者を送っただろう。

 しかし、国境を越え海を越えて南大陸や西大陸に行くには時間がかかるから、騎士国とイングヴァルト王国くらいしかまだ辿り着いていない。

 国家同士の国交の要となるアヴァロンの転移門は、まだ開放されていないしね。最も、開放されていてもアヴァロン王国にクロイツ教国の人間を入れる気はない。国交断絶状態なのだ、当然の措置だろう。


 使者に持たせた書簡には、クロイツ教皇の弁明が記されていたそうだ。内容? いつもの口からでまかせだよ。

『アヴァロン王国が建国された天空島や、島に保管されていた遺失魔道具アーティファクトは、神が勇者の為に作り与えた物だ。勇者を導く国が管理するのが望ましい。故に、アヴァロン王国という略取者から、あるべき者の手に取り戻さなければならない』

 だそうです。

 いつから天空島や遺失魔道具アーティファクトが、勇者の為の物になったのやら。第一、アヴァロンが所有する遺失魔道具アーティファクトは僕が製作した物だし。


 そんな事実を知るファムタール騎士王は、使者に書簡を持たせてさっさと帰らせたらしい。その内容が、中々にクールだった。

『根拠なき言葉は、信じるに値しない。そう言うならば証拠を示せ。万一それが真実だったとしても、貴国から亡命した勇者が三人もアヴァロン王国にいて、勇者の名に相応しい活躍を見せた。アヴァロン王国の方が、貴国よりもよほど勇者を導くに相応しいのではないか』

 だそうです。とても痛快な返答である。


 ちなみに、こちらが証拠を示せと言われたらどうするのかと、同盟各国から言われたのだが…僕が何か言う前にエイルが宣言した。

「そんなの、私が出ればいいだけじゃない? 人化しているけど、神竜の姿になれないわけじゃないもの」

 そう、最近忘れかけていたけど、この義妹は神竜である。つまり、この島の前所有者。

 神代の竜が正式に僕に譲渡した島だと明言する…これ以上無い証拠だね! これには流石の同盟各国も苦笑いだ。


 そんなわけで、クロイツ教国はもう詰んでいる状態。お得意の口からでまかせなんぞ一蹴してやろう。

 こっちには証拠・証人・実績が揃っているからね。

 行動すれば行動するほど、ドツボにはまっていっているのだ。


 その為、クロイツ教国の次の行動も簡単に予想できる。

 一つ目は暗殺。僕を暗殺して、アヴァロン王国を瓦解させる…とても手っ取り早い手段である。

 しかし残念ながら、我等がアヴァロン王国は空の上。転移門は各国指定の場所に設置したものの、まだ常時開放はしていない。

 暗殺者が僕のもとに辿り着くには、超えなきゃいけないハードルが多すぎるね。


 次に考えられるのは、同盟国に対するアヴァロンの評価を下げるような謀略だろう…が、それも正直厳しいと思う。

 イングヴァルトやファムタールでは派手にやっていないけど、他の国では大暴れしているからね、僕。恥ずかしながらミリアン・ヴォルフィード・クエスト・ジークハルトでは、英雄として扱われているのだ。

 そんな英雄の悪口を言うとしよう、果たしてどうなるか? 非国民とバレるね、確実に。

 ついでに、各国の王にもそれは話している。なので国民に対して、クロイツ教国ならそういう事をやりかねないと布告したそうだ。そこまでせんでも良かったのよ…?


 そんな訳で、クロイツ教国は放置だ。相手するだけ、時間の無駄だしね。


「それはそうと、クロイツ教国の大迷宮はどうしますか?」

 アリスのその問いかけに、皆の空気がピリッと引き締まる…のだが、僕はそんな気分になれない。何故ならば…。

「クロイツ教国の大迷宮?そんなものは無い」

「「「「「えっ!?」」」」」


 そう、クロイツ教国には大迷宮なんて存在しなかった。あるのは、それっぽく見せかけたただの魔物が住んでいる洞窟だ。まぁ、冒険者や兵士のレベル上げには良いんじゃね? くらいのレベルの。

「本気で大迷宮と思っているのか、解っていて大迷宮と偽っているのか…どっちにしろ、クロイツ教国に大迷宮は無い。本気で用無しだ」

 最早、クロイツ教国を相手にする価値も消え失せた。


「やっぱりダークエルフの国…ラルグリス王国にあるんじゃないかね、大迷宮」

 各種族の領土に一つずつある傾向が強いし、そう考える方が自然だと思う。

「ダークエルフねぇ…まぁ、知ってて秘匿するくらいはするかもね」

「確かに。エルザさんの言う通り、ダークエルフは閉鎖主義ですからね」

 エルザとリインの会話に首を傾げてしまう。あの脳筋おじさんの顔が、脳裏に浮かぶ。

 ――閉鎖…主義…?

「あの、ローレン様がダークエルフの代表ではありませんからね?」

 リインが苦笑しながら、そんな事を言う。あらら、考えが読まれていたようだ。


 さて、今後の事だが。

「話題に登った大迷宮なんだが、そろそろ次の大迷宮攻略に乗り出したいと思う」

「賛成っ! アタシもユウキのお嫁さんになるんだから、もっと強くならないとね!」

 その言葉に、ユウキは苦笑した。

「強い弱いに関係なく、僕は受け入れるつもりだけど…」

「ちっがーう! ユウキは勇者でしょ? あたしも戦士だもの。足手まといになるのはゴメンなの!」

「そうね、私もユウキの嫁としては勇者に付いて行けるだけの力を付けないと」

 互いに照れが無い。こいつら、もう大人になったな…?


「それで何処の大迷宮に行きますか?」

「そうだなぁ…」

 アリスの言葉に、僕は思案する。アヴリウス大迷宮とディアマント大迷宮を攻略し、残りは五つ。

 その内の一つ、イングヴァルト王国の大迷宮は僕も入口までは行った事があり、すぐに攻略に行ける所だ。

 残りはクエスト王国、ポーラ公国、リレック獣皇国。そして、所在の解らないのが一つ。


「行きやすいのは、やはりイングヴァルトとクエストですか」

「そうですね、リレック獣皇国には勇者がいますし」

 あぁ、リレック獣皇国は勇者を擁する国だったな。尚、他に勇者を擁するのは、ギルス帝国・シンフォニア王国・ラルグリス王国・ニグルス獣聖国だ。

 今はまだ面倒事になりそうだし、あちらのスタンスがはっきりするまでは出向くのはやめよう。


 そうするとイングヴァルトかクエストだが…。

「やはり、今一番行きやすいイングヴァルトかな」

 僕達と縁深いイングヴァルト王国なら、動きやすいからね。

「はい、私は賛成です」

「私も良いと思います」

 キリエとアリスが笑顔で首肯する。

「確実性を考えたら、それが一番でしょう」

「ん、いい」

「私もそれでいいよー!」

「はい、イングヴァルト王国でよろしいかと」

 メグミ・クリス・エイル・リインも賛同してくれる。


 一つ頷いて、アイリがユウキ達に視線を向ける。

「ユウキ様達は如何でしょう?」

「僕も賛成だよ」

「私もっ!」

「あたしもそれで大丈夫!」

「私も問題無いわ」

 これで、メインメンバー全員が賛同した。

 アイリ? 僕に付いて行くって、ウサ耳ゆらゆらさせて表情で訴えているよ。


「他のメンツはどうする?」

 他の面々に視線を向けると、まず立ち上がったのはフリードだ。

「陛下や皆様のお邪魔でないのであらば、同行させて頂けたらと」

「オッケー、フリードも参加ね」

 マリアとフリードは、アヴリウス大迷宮やディアマント大迷宮では、まだアヴァロン入りしてなかったからね。今回から、新加入メンバーというわけだ。


「さて、他のメンバーはどうする?」

 クラウス達は、苦笑する。

「俺はやはり、ご主人の国を守る方にいますわ」

「僕もですね。内政なんかのお手伝いもさせて頂いていますし、ご主人様の留守を預かる者が必要かと」

「留守番する~!」

「大丈夫だと思いたいが、教国がきな臭いからな」

「いざという時の為に、ユート殿の帰る場所を守るのが我々の役目だろう」

「攻略組の支援が、私達の役目ですねー」

 …なんて頼りになる奴らだ。

「君達が居てくれるから、僕達も国外に出られる。迷惑かけるけど、頼めるかな」

 僕の言葉に、皆が笑顔で頷いた。


「そうだ、アンドレイ叔父さんやアルファにも連絡を入れておこうか」

 イングヴァルト大迷宮の攻略なら、イングヴァルトの王族にも連絡すべきだろう。

「そうですね。それに念の為、同盟国には大迷宮攻略の件は伝えるべきではありませんか?」

根源魔法アカシックレコードの事を知る、上層部だけに限りますけどね」

 それもそうだな。最も、竜王国は王都民レベルで知っているのだが。まぁ、高潔な竜人族ならば吹聴したり悪用したりはすまい。

「それなら、世界の窓ウィンドウズで各国家に連絡するか」


************************************************************


 世界の窓ウィンドウズによる、世界同盟加盟国との遠距離通信。その場で、僕はイングヴァルト王国の大迷宮攻略に向かう事を報告した。

『そうか…タイミングが良いと言えば良い。実は、ユート君に相談があってな…』

 相談、とな?

『つい先日、イングヴァルト王国の兵士・五十名による大迷宮攻略を敢行したのだ。しかし、残念ながら誰一人として帰還していないのが現状でな…』

 そういえば、イングヴァルト王国の兵士達が大迷宮攻略に挑むから、周辺の魔物を間引くっていう依頼だったか。


「でも、その話っていつの話? 最近アンドレイ叔父さんは世界会議とかで、その辺の話をしていなかったと思うけど…」

『実は、我が国の公爵は二人居てな…アークヴァルド公爵と、もう一人だ』

 ははーん、解ったぞ。

「その公爵が、アンドレイ叔父さんの制止を振り切って大迷宮攻略を敢行したんだね?」

 その言葉に、アンドレイ叔父さんは肩を落とした。

『うむ…それでだな…』

「いいよ、どっちにしろ行く気だし。生きているようなら保護しよう」

 確か、攻略部隊にはノエルさんが居るはずだし。


『…いいのかい?』

「だって僕も攻略するつもりだし、身内からのお願いだし。それなら僕としては、どうとでもするよ?」

 今更、僕達の実力を隠したりはするつもりも無いし。クロイツ教国みたいな馬鹿が、ちょっかいを出しにくいようにしないといけない。だから武力を公開する事も、他国に恩を売る事も、僕に躊躇いはない。


 究極的には自分の為ではあるものの、王様になって少し割り切れるようになった。

 僕もハッピー、身内の皆もハッピー、敵はアンハッピー。これでいいじゃない。開き直ったとも言えるな。

『そ、そうか! それではユート君、宜しく頼むよ』

「ほいほい、任せて」

 軽い調子で請け負う僕に、各国の王が苦笑した。


************************************************************


 イングヴァルト王国での大迷宮攻略は、二日後に敢行だ。それに備えて各々が訓練をしている。

 どうやら、それぞれ近接戦闘技能を鍛えているらしい。

 というのもアリスから齎された情報から、そうする必要があると考えられるからだ。


「イングヴァルト王国の大迷宮は、魔法が使えないという話があるそうなんです」

 クロイツ教国の神殿で、教皇が使っていた魔道具みたいな能力なのかもしれない。

 あの時は、刻印付与を施した遺失魔道具アーティファクトは一部なら使えた。しかし、大迷宮が全く同じとは限らない…もしかしたら、遺失魔道具アーティファクトも完全に機能しない可能性がある。

 その為、魔法に頼らない攻略を想定して、各自が身体を鍛えている。

 特に、魔法による戦術が主なアイリとリイン・クリス・マナは、猛特訓をしているらしく、近接戦に長けたメンバーから指導を受けている。


 アリスの相手はキリエで、速度と致命的な一撃を得意とするキリエはアリスにとって相性が悪い。

 迫るキリエの攻撃を必死でかわし、槍杖でなんとか反撃するアリスだが、それもひらりとかわされてしまう。アリスは魔導師兼銃士なのだが、狙いを付ける時に一瞬だけ足を止めてしまう傾向があるのが欠点だ。


 線の細いエルフ族は力押しの相手に弱いので、リインの相手はエルザみたいだ。相性が悪い相手に対抗できてこそだからね。

 素早い動きでそれを回避し、弓から矢を放つリイン。だが、一々視線を一箇所に固定してしまう傾向があるな。あれではバレバレだし、その辺りを矯正してあげないといけないな。


 クリスは基本スペックが高いのだが、経験が不足している。その為、相手はアイリを宛てがったようだ。何気に僕達の仲間では古参メンバーで、実戦経験も詰んでいるからね。

 技術でクリスを翻弄するアイリに、クリスは攻めあぐねているようだ。


 マナの教官には、マリアが付いた。

 純粋な魔導師のマナには少々荒療治なのだが、魔法抜きの戦闘となると悠長な事は言っていられない。なので、武闘派揃いの竜人族による戦闘経験の水増しを行う。


 ユウキも錬成が使えないなら手数が稼げないので、他の攻撃手段を模索したいと言い出し、フリードと共に鍛え直し始めた。

 その訓練は他よりも激しく、勇者に相応しいスペックのユウキと英雄の子として鍛えられたフリードは訓練場の床にクレーターやら何やらを量産していく。


 この後で魔導師組には複数人との戦闘も経験して貰うらしく、クラウス達が鍛えた兵士達を相手にする予定だそうだ。中々にスパルタだな。

 しかし激しい指導にもめげず、魔導師組は己を高めてゆく。


 その光景を見ていた我が国の兵士達が、クラウス達に必死に教えを請うようになったらしい。守るべき国の、それも王妃よりも弱い兵士なんて笑い話にならない、との事だ。

 …残念ながら、彼女達には既に大幅に差を付けられている事に気付けないようだ。まぁ、そもそものスペックが違うのもあるけどね。


 僕は何をしているかというと、そんな彼らの為に色々と装備を用意している。刻印付与が無効化された場合、着ているのはただの布だからね。

 衝撃を殺す緩衝材を挟んだ鎧とか、篭手とか。


 それと、今回も銃撃が有効手段になると思われる。なので弾丸を補充しやすいように、弾帯とかポシェットとかを、色々作っている所だ。

 刻印付与が有効かを確認出来たら、不要になってしまうけど…まぁ、用意しておいても良いだろう。


 イングヴァルト王国の大迷宮…入口から先は初めて入るわけだし、迷宮探索に備えて僕達は準備を着々と進めていった。ステータスを見る限り、まぁ行けそうかな。

 勇者はどうやら、経験値二倍みたいな成長ブーストがあるらしく、急成長しているし。これなら、大した問題もないだろう。

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