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刻印の付与魔導師(エンチャンター)  作者: 大和・J・カナタ
第8章 ジークハルト竜王国
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08-09 処刑/見送り

これまでのあらすじ:残りは悪魔族マァモンをブッ殺すだけです。

『アヴァロン王国……? 聞いた事無いじゃなぁい。嘘か本当か知らないけど、随分と調子に乗っているじゃない』

 アヴァロンの情報は悪魔族には伝わっていないらしいな。まぁ、それも仕方ないか。

『知らないのも無理はないな。何せ出会った悪魔族は全て殺してきたからな』

 正確には、獣王国に一人居るけど……そう言えばアイツ、もう処刑したのかな? 


『……貴様ごときが、我ら悪魔族を殺した? バカも休み休み言うじゃない!』

『じゃあ、地名を聞けば解るか? ミリアン獣王国……それにヴォルフィード皇国だ』

『……っ!?』

 その言葉に、悪魔族マァモンは息を呑んだようだ。

 俺達が対処した悪魔族は、獣王国での女と皇国での二人組。他にも居るんだろうがね。


『まさか、貴様……!!』

『あぁ、処分しといた……さて、それじゃあお前の番だ』

 マァモンは知らんが、僕の念話は王都全体に向けて発信されている。竜王陛下や家臣達、そして住民達にも、俺達の素性がある程度解っただろう。

 これは、威を示す為ではない。仲間達が、竜人族に絡まれないようにする為だ。


 さて、仲間達の様子を伺うと……平民街は問題なし、触手に寄生された者達も全て回収済み、クリア。

 貴族街は……むっ? ユウキがえらい前線で戦っている。そんなユウキに群がろうとする寄生被害者達を、他のメンバーが援護して石化させているようだ。


 ユウキにどんな心境の変化があったかは知らないが……ふぅん、自分の持ち味を見つけられたみたいだな。後で、ゆっくり話をしてみようか。


 そして、眼下に見える商業区。既に闊歩していた寄生被害者も、奇襲要員にされた寄生被害者も残りわずか。


 そしてこちら。制空権は奪取し、竜達は既に宝物庫ストレージの中。そんな戦闘の後、”所用”を済ませて王都に再度帰還した所である。


 なら、後はどうするか? 決まっている、悪魔族を処す。

『一つ、竜王国の王都を攻めた事。二つ、王都の人達を気色悪い触手で汚した事……』

『……何を言っている?』

 突然紡ぎ出した俺の言葉に、マァモンは疑問を感じたらしい。察しろよ、これだから悪魔族は。

『そして三つ……俺の身内に手を出した事。スリーアウトだ、悪魔族……貴様を殺す』

 そろそろ、引き摺り出してやろう。


 僕の意を察し、肩に乗っていたエイルがスナイパーライフルを構える。その方向は……王都の近くにある森の中。

「処刑場へご招待っ!」

 ――ドパァンッ!!

 “雷属性付与”によってレールガン化したスナイパーライフルから放たれた弾は、森の地面に命中する。


『ぬおぉっ!?』

 地面に広がる転移魔法陣……その接続先は、俺達のいる高度四千メートル程上の空中。展開された転移魔法陣から、浅黒い肌の悪魔族が落下してきた。

『ようこそ、悪魔族……天空の処刑場なんてお前には過ぎた待遇だな?』


 ――パァンッ! 

 落下中の身体を銃剣で撃つ。

「うあぁっ!?」

『まず一つ』

 弾が命中した腰から、石化が始まる。


 コレは試作時に等級の低い素材で製作したせいで、石化速度が遅い石化弾だ。皆に使わせたのは、もっと高い等級で作ってあるやつである。


「な……ま、まさかっ!?」

 ――パァンッ! 

 更にもう一発……今度の狙いは右肩だ。

『二つ目だ』

「うぁぁっ! 俺の、俺の身体がっ!?」

 そして、見る見る内に迫る地面。


 無事に生き残った竜人達は、一様に空……俺達を見上げている。

 そして……。

 ――パァンッ! 

『三つ目だ』

 腹に撃ち込まれた銃弾。もう、首から下は殆ど石化している。


「た、叩き付けて殺す気かっ!? この、悪魔がぁっ!」

『お前に言われたくない、クソ悪魔』

 高高度から落下するマァモン。このままでは、地面に叩き付けられて死ぬだけだろう。


 しかし……それじゃあ生温い!! 

『さぁ、処刑の時間だ』

 魔導兵騎を加速させ、マァモンの落下地点に向かう。

 今回の決着は、”彼女”に譲る事にした。溜まりに溜まった怒りを、ここでぶちかますといい。

「や……やめっ……!?」

「消えなさい、悪魔族」

 ほぼ石化したマァモンに向けて引き金を引くのは、人の姿に変貌した神代の竜。スナイパーライフルから放たれる、黒い魔力光を帯びたレールガン。


「あ……待っ……」

 何かを言い掛けたマァモンは、怒りの一撃で頭部を消し飛ばされ、石化した身体も文字通り粉砕した。

 執行、完了だな。


************************************************************


 僕はそのまま、王都に降り立った。同時にマップで全体を確認する……うん、仲間達は誰も大した怪我はしてないみたいだ。

 王城から外に出ていた竜王陛下が、僕に歩み寄って来た。

「アヴァロン王、感謝する」

「友好国の危地だ、当然の事をしたまでだ竜王」

 僕の言葉に、竜王は深く頭を下げる。


 そこへ、魔力駆動二輪に乗った仲間達が集まって来る。

「お疲れ様、皆……毎度の事だけど、トラブルが多いな」

「お前、そろそろ神殿で祓って貰った方が良いんじゃないか?」

 失敬な、キリエに月一でやって貰ってるわい。


 そんな調子で変身状態を解除していく僕達に、マリアが歩み寄って来る。

「ユート、ユウキ、それに皆……」

 涙を堪えた表情で、マリアは勢いよく頭を下げる。

「ありがとう……」

 そう言って微笑むマリアだが、その表情はいつもの太陽の様な笑顔では無い。声にも、元気がない。

 それはそうだろう、多くの人が触手型の寄生生物に寄生されたのだ。

 ……だから、ここからが本番である。


「んー、んー……」

 生返事の僕を見た皆が、首を傾げる。普段はこういう場所で、そんな対応したりしないもんね。

 最も、事情を知る婚約者達だけは、苦笑しているが。

「え、あの、ユート? 私一応大事な事を話して……」

「甘いなマリア、まだ早いんだよ……おっ、やっぱ出来たな」

 ”宝物庫の指輪ストレージ”を翳し、その中からあるモノを取り出す。

「グラム兄さん!?」

「おぉ……グラムシェル!」

「グラム……ユート殿、一体どういう事なのだ!?」


 そう、それは石化したグラムシェル第二王子だ。しかし、宝物庫ストレージに収納する前と決定的に違う部分がある。

「竜を排除した後で探し出して、触手に寄生されたグラム達も回収しておいたんだ。触手に対する措置も成功したよ」

 そう、今のグラムには触手が無い。


 これは、宝物庫ストレージの新機能によるものだ。

 仲間達と一緒に創造した魔法”剥取”を刻印付与している。元々は、冒険者特有の悩みを解決する為に作ったものだ。素材の剥ぎ取り、面倒だからさ……。

 この新しい付与を使用して、触手だけを石化した人から”剥ぎ取った”のだ。結果は、ご覧の通り……グラムは触手から解放された。


「あとは、念の為に回復魔法弾を撃った後、この解呪ディスペルを付与した弾で……」

 ――パァンッ! 

 石化の状態異常が解除され、グラムはたたらを踏んだ。

「ぬぅっ!? ……こ、ここは王都……!?」

「兄さんっ!!」

 マリアがグラムに駆け出し、抱き着く。

「グラムシェル!」

「あぁ、グラム……よくぞ無事に戻った!」

 竜王陛下とジオもそれに続くが、グラム本人は困惑していた。

「……一体、何が起こっているのだ……?」


 涙を拭いながら、竜王が経緯を説明する。

 大迷宮を踏破した僕達と王都で合流し、グラム同様に石化した人達を回収してある事。

 悪魔族は既に倒して消滅した事。その際に、僕の活躍を興奮気味に話していたが……ちょ、盛り過ぎじゃないか!? 

 そして、僕が遺失魔導具アーティファクトでグラムを触手から解放し、石化を解いた事が伝えられた。


「何と言う事だ……聞きしに勝るその力、恐れ入ったぞアヴァロン王。それで、石化された国民達や竜達は……」

 グラムのように、無事に触手から解放する事が出来るならば、竜王国としての人的被害は最小限で済ませられる。それを願うのは当然だろう。

 元よりアヴァロン王国とジークハルト竜王国は同盟国だ、手を貸すのは当然だね。なので、僕は首肯する。


「この遺失魔道具アーティファクトで僕が国民や竜達の解放を進めるよ」

 仲間達には、回復と石化の解除をお願いするつもりだ。解放された国民への説明等は、竜王国にお任せしよう。

 相当に時間がかかるだろうからね。

「それと、魔力に自信がある者達には、コレに魔力を注いで欲しい。それがあれば、救出作業の効率が上がるからね」

 流石に魔力がもたないだろうから、疑似魔石を取り出して協力を依頼する。その言葉に、竜王陛下は頷きを返した。


************************************************************


 悪魔族マァモン死すべし、慈悲は無い。もう死んだけど。

 そんな怨念めいた思考が浮かび上がるのも、当然だと僕は思う。

 千を越える数の国民、百を超える数の竜を救出する作業は長時間に渡った。作業開始から五時間程、休憩も無しで竜人達を触手から解放していった。

 その後で王竜や竜達を解放し、全てが終わったのは深夜だった。


「……もう無理、流石に身体が……」

 案内された応接室のソファで、僕は疲労でヘトヘトになった身体を休める。

 助っ人組は、自国での用事や政務もあるので途中まで手伝って貰い、その後で帰還した。

 ユウキとエルザ、それにマナとマリアは少し所用があると言うので、作業の後でそれぞれ出かけた。

 なので、今応接室に居るのは婚約者達だ。皆も、随分と疲れた様だ。


 そこへ、竜王と両殿下が現れた。

「感謝するよユート殿。お陰で竜王国の民や、竜達は無事だった……本当に、ありがとう」

 改めて礼を言ってくる竜王。

「なに、竜王国はアヴァロンの同盟国だ。それに、竜王陛下は同盟の仲間だし、ジオやグラムは僕の友人だ。手を貸すのは僕的に当然の事でね」


 思えば、旅をすると身内が増えているなぁ。

 獣王国ではアイリやクラウス達。

 皇国ではリインやマック達。

 クエスト王国ではマルクやエルザ達。

 魔王国ではクリスとアマダム、それにメグミ。

 建国中にユウキとマナ、そしてエイルが加わった。

 そして竜王国でマリアや、ジオとグラム。

 孤島から旅立って、まだ一年も立っていないんだけどなぁ。

 随分と僕の周囲は賑やかになったものだ。まぁ、その方が僕としても嬉しいんだけど。


 そんな事を考えていたら、クリスが早々に眠っているのに気付いた。

「はは、流石に疲れたか。ちょっとベッドに連れて行ってくるよ」

 クリスをお姫様抱っこで抱え上げ、客室のベッドに連れて行ってあげる。そして、応接室へ戻ると……。

「皆寝てる……」

 これ、本気で寝てるのは何人だ? ……仕方ないなぁ。

 結局、全員をお姫様抱っこで客室のベッドに寝かせ……僕もソファで眠りについた。


************************************************************


 翌日、ジークハルト竜王国の王都ヴェルファーレは、いつにない程の活気に満ち満ちていた。理由は簡単だ……竜王陛下の公開演説が為されるのである。

 既に王城前の広場は竜人達でごった返しになっており、全ての王都民が集まっているんじゃないかと思わされる。


 そんな様子を王城のテラスから、隠れて見ている僕達。

「やべぇな、人がすげぇ……うわぁ、この人だかりの前に立つのか……」

「まぁ、今はまだアヴァロン王国に、ここまで国民が居ませんからね」

「その内慣れますよ、ユートさん」

 そんな事を言うアイリとリインだが、君達はそりゃ慣れてるでしょうけど! 


 そう、僕も演説の際には壇上に上がる事になっている。

「……男は度胸、何でもやってみるもんらしいから、とりあえず弾けるか」

「いや、自重して下さい」

「ユート君、王様だと言う事をお忘れなく」

「ユート様が弾けたら、誰も止められないんですから」

 嫁の評価が手厳しい。

「ユートさん、王様モードでお願いしますね?」

「……暴君モード、禁止」

「先輩、本気でお願いします」


 待って、聞き捨てならない名称があったんだけど!

「王様モードはまだ解るけど、何だよ暴君って!?」

 そう言うと、エイルが苦笑した。

「何でも、戦闘時の性格が暴君っぽいからだって」

 ……戦闘モードじゃ、ダメですか? ダメなのですか、そうですか。


 ……そして、時間が来た。

「竜王国の民よ、聞け」

 広場に集まる無数の竜人達に向け、声を張り上げる竜王陛下。

 その姿は威厳に満ち溢れ、やっぱり王様ってこういう感じだよなーとか思っちゃう。


 正直、僕には向いていないと再認識してしまったよ。まぁ、王様になったからには、やるだけやってみるけどね。

 王様という役割を投げ出したりはしない。それは僕の美学「やると宣言した以上はやり通す」に反する。

 何より仲間の期待を裏切る、最低の行為だからね。

 ここは一つ、僕らしい王様を目指すしかない。


「此度の国を揺るがす大事、まずはこうして愛すべき民の顔を見る事ができ、大変喜ばしく思う! それも、悪魔族の姦計を跡形も無く砕いた我らが同盟国、アヴァロン王国の助けを受けての事だ」

 陛下の言葉に呼応し、一斉に歓声が沸き上がる。やべぇ、熱が凄い。


「アヴァロン王国国王、ユート・アーカディア・アヴァロン陛下」

 緊張しつつも、出来るだけ平静を装って竜王陛下の横に並ぶ。仲間達はその後から、付いてきて、少し後に居る配置だ。

 歓声が大きくなった……待って、誰だよ雄叫びを上げてるのは。


「まず、此度の感謝の印とし、我が竜王国における最上級の勲章、四竜勲章をアヴァロン王国国王陛下と、その仲間達に贈らせて貰う」

 実は顔と身分を隠して、アルファ達もいるので本当に全員である。

 一人一人が竜王陛下から勲章を胸に着けて貰い、最後に僕の番だ。

「アヴァロン国王陛下、此度の事態を収集できたのは、アヴァロン王国の支援あっての事。心より感謝申し上げる」

 そう言って、竜王陛下は頭を下げた。


「ジークハルト竜王陛下、頭を上げてもらいたい。貴国はアヴァロン王国の同盟国家であり、親愛なる友人。その友人が危機に晒されているなら、手を差し伸べるのが僕のやり方だ。アヴァロンとジークハルトはこれからも助け合い、支え合っていけるだろう」

 これの為に製作した拡声の遺失魔導具アーティファクトで、僕の言葉は竜人達にも届いている。盛大な歓声と拍手が、僕と竜王陛下に向けて贈られた。

 しかし、やっぱり王様モードは慣れないなぁ……。


 公開演説が終わり、僕達は竜王陛下を始めとする王家の面々と応接室で話していた。

「それで、折角用意したからコレを受け取ってくれる?」

 僕は、宝物庫ストレージから姿見を出して、代表としてジオに差し出す。

「これ、アヴァロンに転移できる遺失魔導具アーティファクトだから

「「……はぁ!?」」

「……あらあら」

 にこやかに笑っているティファニエル王妃、何気に大物だな。


「後、竜王陛下にも渡してある、いつものセットかな~。これも、同盟国家の王族皆に渡してるから気にせず使ってね」

 それに加えて、王妃、ジオとグラムには首飾りタリズマン携帯通信機マギフォンも渡す。その様子を、既に築城を記念する落成式で経験していた竜王陛下が苦笑していた。


 使い方なんかを説明し終えると、疲れた表情のジオが溜息を吐く。

「……ユート殿がアヴァロン王国を建国していなければ、竜王国に仕えないか打診したのだがなぁ……」

「殿下、実際にユーちゃんは世界同盟加盟国から勧誘されていましたよ」

「……さもありなん」

 ちょっと遺失魔道具アーティファクトを作れるだけなんだけどなぁ……。


「ユート殿、もう行くのか?」

「ええ、国をほったらかしにする訳にもいきませんからね」

 今はお互いプライベートタイムなので、王様モードはお休みで話す。

 名残惜しそうな竜王陛下には申し訳ないのだが、留守番組に色々押し付けている形だからね。早く帰って、仕事しないと。


「そう言えばユート君、世界会議が近いのでは?」

「もう、十日後くらいではありませんか?」

 言われてみれば、確かにそうだったな。

「そういえばそうだったか。では、十日後を楽しみにしていよう」

 笑顔でそう言う竜王陛下に、僕も頷いて返す。今回は、どんなネタでびっくりさせようかなぁ。


************************************************************


 竜王陛下達との挨拶を終えたら、僕達はアヴァロン王国へ戻る事にした。ミリアン獣王国経由で。

 紅玉の集落から王都までの間、僕と別の車になったメンバーが居たからな……。


 魔力駆動四輪を宝物庫ストレージから出して、竜王陛下達に別れを告げる。

「では、また世界会議で」

「うむ、十日後にな」

 握手を交して、僕も運転席に乗る。そして、いよいよ王城の門を開いて貰って出発する所で……。


「うわぁ……」

 門を潜ると、まるで花道のように進行路の両脇に竜人達がひしめいていた。皆一様に、歓声を上げたり、手を振ったりしている。

「ありがとう、アヴァロン王国!」

「アヴァロン国王陛下ーっ!」

「絶対にアヴァロンに、遊びに行くからなーっ!」

「アヴァロン王国ばんざーい!」

 盛大な見送りであった。


「……折角だ、ゆっくり進むか。皆、手を振ってあげて」

 所謂パレードみたいなもんか。実際、突発的なパレードだな。

 手を振って応える僕達に向けた、竜人達からの感謝や祝福の声。そして、更に……。

「お、おいっ! 空を見ろーっ!!」

 その声に皆が顔を見上げ……驚愕した。

 ――竜だ。


「おい、アレは紅玉竜様では!?」

「る、瑠璃竜様もいらっしゃる……!!」

「あっ、あちらに翡翠竜様と琥珀竜様もいるぞ!!」

 空を舞う竜達は、一糸乱れぬ動きで飛ぶ。まるで円環を描いているみたいだ。


「多分、感謝の印……そしてお見送りだね」

 王竜四匹と、竜達の描く円環。

「エイル、僕の分まで手を振ってやってくれ」

 ドライバーはハンドルから手を離すべからず、だからね。

「任せてーっ!!」

 そう言って、エイルは両手をブンブンと天に向けて振り出す。


 すると、王竜達を筆頭に竜達が鳴き声を上げる。それは威圧的な感じのしない、親愛の情が籠められた鳴き声だった。

「急ぐ道中じゃないのが幸いですね、ユートさん」

「あぁ、そうだな」

 手を振りながら、僕の真後ろの座席に座るリインの言葉に、首肯する。たまには、こういう出発もいいだろう。


 花道と竜の円環は、王都ヴェルファーレを出るまで続いていた。

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