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刻印の付与魔導師(エンチャンター)  作者: 大和・J・カナタ
第8章 ジークハルト竜王国
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08-01 アヴァロン発展中/神竜再臨

これまでのあらすじ:王城の落成式で勢揃いしました。


 落成式から二十日。その間に二百人程の移民希望者を受け入れ、ついに国として稼動し始めた。今はまだ少ないが、その内国民も増えると良いね。

 そんな、たまたま予定が入っていないある日の事。僕は、兵士候補達の訓練を見に行く事にした。その後は、内壁の外にある開拓村を回るつもりだ。


 さて、訓練はというと……随分と派手に模擬剣や模擬槍で試合をしているな。あちこちで二人一組になって、打ち合って居る。彼らの表情は、真剣そのものだ。

 そんな彼らを見守っていた二人の獣人が、僕に気付いた。

「お、ご主人」

「ご主人様、視察にいらしたのですか」

 僕の仲間でも古株になってきたクラウスとジルだ。兵士達の教育は二人に一任している。

「や、二人とも。どうだい、兵士候補達は」

「えぇ、真面目に訓練に取り組んでいますよ」

「……まぁ、気持ちは解りますけどね」

 ジルが苦笑いをする。


 実は、最初はクラウスとジルが教官と聞き、反発する者もいた。クラウスも若い方だし、ジルなんか成人前の少年だからね。

 気持ちは解らないでもない……が、見た目で判断すると痛い目を見る。この二人、僕達に付き合って戦闘に参加しているため、中々強くなっているのだ。

 ではどうするか? 実力を示せば良いだけだ。自分達と、クラウス・ジルの力にどれだけの差があるのか、それを実感させてやればいい。

 なので一丁揉んでやるかと、僕から一つ提案をした。ちょっとしたレクリエーションだ。


「クラウスとジル、そして君達全員で僕と模擬戦だ。制限時間は一時間。僕が王だという事は忘れ本気で来るといいよ」

 流石に、この挑発には兵士候補達も本気になったようだ。全員で一斉に、僕目掛けて駆け出して来た。

 クラウスとジルは、僕がどこまで力を発揮するのかを確かめる為に、様子見に回っている。その結果は……。


「一人で全員を相手にして、一発も貰わないとか……」

「ご主人様の強さは異常ですよ。最近更に強くなってません?」

「そぉ? そんな事ないと思うけど……」

 僕はその中で一度もこちらから攻撃していない。大事な我が国の兵士候補達を壊すわけにはいかないからね。

 しかし、兵士候補達は三十分もしたら軒並みダウン。ひたすら攻撃を避け続け、たまーに攻撃を防ぎ、スタミナ切れまで付き合った。

 クラウスとジルは流石と言うべきか、最後まで僕に攻撃を仕掛けていた。


 まぁ、実力差を実感した兵士候補達は、それから真面目に訓練に取り組むようになった。その原因は僕だけではなく、同様にクラウスとジル二人を相手に完敗したのもあるだろう。


************************************************************


 さて、兵士達に激励の言葉をかけて、次は開拓村を見に行く事にする。自分の国だ、遠慮しないで魔力駆動二輪フェンリルを使うよ。

 独特の音にも既に慣れた開拓民達が、手を振ってくる。魔力駆動二輪を停車させ、ヘルメットを取ると開拓民達が寄ってきた。

「陛下、お越し頂き誠に光栄で……」

「堅い挨拶はいいって。調子はどうだい?」

「陛下に頂いた道具がとても素晴らしく、開拓は順調です!」


「へいか〜!」

「こんにちは、へいか!」

 話の途中で僕に駆け寄ってくる子供達。

「お〜? ドロドロだなぁ、いっぱいお手伝いしたのか?」

「こ……こら、アンタ達! も、申し訳ございません陛下、お召し物が……!!」

 子供達が泥だらけの手で抱き着いて来たので、確かに服は汚れた。が、別段目くじらを立てるような事じゃない。むしろ頑張って働いているこの子達を褒めてあげたい。

「大丈夫だよ、この子達が頑張っている証拠じゃないか。それに、服なんて洗えば良いからね」

 こちとら現役冒険者だ、ダンジョンに潜れば汚れだってするさ。


 恐縮する大人達に気にするなと伝え、子供達を一通り撫でていく。その間にも、困った事は無いかと聞いてみるが、特に無いらしい。

「用意して頂いた家は快適ですし、何より魔物がいませんからね」

「盗賊もですなぁ」

 そりゃそうか、アーカディア島は元々生態系の頂点に立つ、竜の管理していた島だ。それも、神格を得た竜。魔物や盗賊などが入り込もうものなら、とっくの昔に土に還っているだろう。

「まぁ、順調なら何よりだよ」

 困った事があれば、王城にいる誰かに相談するように伝えて、僕は他の村へ向かう。

 他の村も、似たりよったりの状況だった。まぁ、不平不満は無いみたいだから、一安心かな。


************************************************************


 そのまま開拓村から、魔力駆動二輪で王城へ戻る。

 王城へ向かう途中には、ちょっとした家屋が数軒並んでいる。

 各国の建築士達が建てた家を、宝物庫ストレージで移築したモデルハウスだ。中々いい仕上がり、流石は国が推薦した職人さん達だよね。

 この家を建てる場所は、既に区画整理がされている。最も、まだ住民は居ない。一応、モデルハウスだからね。


 王城の跳ね橋を渡り、中庭を通ってエントランス前に魔力駆動二輪を停める。

 すると、王城の周りで掃除等をしていた、二十人の少年少女達が一斉に集まってくる。彼等は元スラムの住民や難民で、身寄りの無い子供達だ。

「「「「「お帰りなさいませ、国王陛下!!」」」」」

 一斉に跪く。そこまでせんで良いと言うのに。

「ただいま、皆楽にしてね」

 僕の言葉に、少年少女達が立ち上がって直立する。軍人か、君らは。


「どう、仕事には慣れた?」

 そう、彼等の服装……執事服・メイド服である。身寄りの無い彼等が生きていく為には、働き口が無ければ食っていけないよねって事で、十歳以上の子供達は王城で執事・メイド見習いとして雇ったのだ。

 十歳未満の子達は、城壁内に用意した使用人邸……という名目の孤児院で、お部屋のお掃除なんかを頑張っている。

 使用人邸には幼い子供達の世話の為に、非番の執事・メイド見習いが四人常駐するようにした。なんというシフト体制。発案がメグミだからね、地球の制度っぽくなるのは当たり前か。


「はい! 陛下やご婚約者様、そして先輩方のお陰です」

 彼等の教育は、婚約者達やレイラさん・メアリー・エミル達が引き受けてくれた。皆、将来有望だと褒めていたなぁ。

「何かあれば、ちゃんと相談するんだよ」

「ありがとうございます、陛下」

 一斉に一礼する彼等は、既に立派な執事とメイドみたいだな。見習いの文字が外れる日は、そう遠くないだろうな。


************************************************************


 将来有望な見習い達に仕事に戻るように促し、僕は自室へ向かう。

 ……そこで、婚約者達が勢揃いしていた。何しているのかな?

 別に無断で入って来た事を怒ってはいない、見られて困るものも無いし。しかし全員勢揃いで、帰って来た僕にも気付かずにいるなんて……珍しい。

 とりあえず、声をかけようか。

「皆、勢揃いでどうしたの?」

 僕の言葉に、全員が一斉に振り返る。一糸乱れぬ動作に、ちょっとビビッた。


「ユーちゃん、た……卵が……!」

 ん、神竜の卵か? 視線を卵にやると……何か震えていらっしゃる。

「何か震えてるんだけど……」

「はい、カタカタって物音がしたので、様子を見に来たんですけど……」

 あぁ、成程ね……って、こんな現象は今まで無かったぞ?

 ……まさか!!

「もしかして、神竜が孵化するのか!?」


「神竜の孵化……改めて考えたら、ちょっと凄い光景なんですよね……」

「ユート君ですから……」

 大体僕のせいっていう風潮、何とかしませんか。

 しかし、いよいよ神竜が孵るのか。

「やっと礼が言えるよ」

「……そうですね」

「神竜のお陰で、アヴァロン王国は生まれたんですものね」

 そう、神竜が加護をくれて、島を譲渡してくれた。そのお陰で、世界は徐々に前に進み始めていると思う。

 やっと、そのお礼が言える。


「そう言えば、神竜の卵とは孵化したらどのような姿なのでしょうか」

 リインの疑問に、全員が思案する。僕のイメージでは、やはり小さい幼生体の黒竜だと思うのだが……。

「どんな子なんでしょうねぇ」

「……私より、小さいといい」

 神竜とはいえ幼生態だろうから、小さいと思うよ。

「髪は長いと良いですね」

「はい、色々な髪形に出来ます」

 ……ん? 神竜に、髪? 

「やはり性別は男の子ですか? 女の子ですか?」

「最初は女の子が育てやすいと、地球ではよく言われていましました」

 話が、良くない方向へいっている気がするの。

「待って、何の話をしてるの」

「「「「「「「え、子供の話?」」」」」」」

「脱線してんじゃねぇか!!」


 ——ガタガタガタガタガタッ!! 

 ……んっ!? 


「神竜の卵がめっちゃ揺れてんだけど!?」

「もしかして、今の会話に合わせて姿を変えようと……!?」

「マジか!? ごめん神竜、うちの嫁がめっちゃゴメン!!」

「先輩、そんな嫁だなんて……」

「今そーいう流れじゃねーから!!」

「あっ、どうせなら十歳くらいの女の子の姿でお願いします」

「それ以上神竜を困らせるなキリエッ!!」


 ——ガタッガタンッガタガタガタッ……ガッ!! 


「……止まった」

 不気味な静寂が訪れた。

「え、えーと……」

 大丈夫かな? と思い、神竜の卵に近付くと……。


 ——バキィッ!!


「うおぉっ!?」

 卵の殻を破って、突き出された拳!? えっ、本当に人化してたん!? ってか、正拳突き!? 

 突き出した拳が一度引っ込み、今度は両手で穴に指をかける。

 そして……バキィッ!! という音と共に、卵の殻が左右に割れて砕け散る!! 

「あっ、掃除が大変そうっ!!」

「そこじゃねぇ!!」


 砕け散った卵の中から現れたのは……赤みがかった茶髪の長い髪と、金色の瞳を持つ十~十二歳くらいの少女だった。

 勿論、生まれて来たばかりだ、全裸である。何がとは言いませんが、しっかりある。

 全裸で女の子座りしているんですけど。地球なら通報案件だよね、これ。


「あっ、おはよう」

 そう言って、少女はペコリと頭を下げて来た。


「……お、おはよう」

 とりあえず、返事をする。

「……」

「……」

 何故か、見詰め合う。


 スッと少女が立ち上がり、仁王立ちする。全裸で仁王立ちすんなし。

「我輩は神竜である、名前はまだ無い」

「だからさ、何でそういうネタがちょこちょこ出てくんの!? 誰が広めたんだ、この世界に!! ショウヘイさんか!? シンタローさんか!?」

「犯人はヤス!!」

「キリエは自分のキャラを思い出して!!」

「賑やかだね、お兄ちゃん」

「うるさくてごめんね!! あとお兄ちゃんって何だッ!?」

 ツッコミ疲れで、肩で息をしてしまう状態に陥った! 威厳溢れる神竜は死んだッ!!

 ……転生なんだからそりゃ一度死ぬわな。


「とりあえずは、私の卵を守ってくれてありがとう。とても快適だったよ」

「そ、そう? それは良かったけど……」

 屋敷の部屋やこの部屋に、安置していただけなんだけどね。


 しかし、卵から十~十二歳くらいの女の子が生まれるとか、中々に意味不明。

 そもそも、あの卵そんなに大きかったっけ……? こんなどうでも良いところで、ファンタジーしないでくれよ異世界。


「そして、時折優しい声で語りかけてくれていたのも聞こえていた」

「そういう事は恥ずかしいので言わなくて良いです」

 卵に向かって優しく語り掛ける系男子とか、傍から見たら痛々しいヤツじゃない?


「そんな訳で、人化して一緒にこの島で暮らそうかと思うんだけど」

「いきなり話が飛んだが、元々は神竜の島なんだから構わない。っていうかこの島、返却しなきゃいけなかったりするか?」

 ごめんね、色々いじっちゃってる。

「先代の私が譲渡した以上、この島はお兄ちゃんの物。お兄ちゃんの好きにしてくれて構わないよ?」

 だから、お兄ちゃんって何よ。


「私とお兄ちゃんは精神的な繋がりを持つの。皇国や魔王国、アヴァロン王国の建国……その様子を卵の中で見ていたわ。そして、教国をぶっとばしたのも。あれはスカっとした」

「お、おう……」

 この辺の感性は、流石は神竜と言うべきなのだろうか。


「そんな訳で、貴方の妹になる為にこの姿になりました!」

「ちょっと何言ってるのか解んないです!」

 話が繋がってない。

「お兄ちゃんやお姉ちゃん達と一緒に旅がしたいんだ」

 ……そう来たかぁ。先代神竜からは想像も付かない展開だよ。


 僕が返答に困っていると、やはり横槍が入って来た。

「賛成! ユーちゃん、私賛成です!」

「私も良いと思います!」

「はい、とても愛らしいです!」

「ユートさん、お姉ちゃんですって!」

「……可愛い」

「先輩、いい名前を考えてあげないといけませんね!」

 ブレないな、こやつら。


「……ダメなの?」

 卑怯だな、こやつ。

「そんな可愛らしい仕草で、このユート・アーカディア・アヴァロンが折れると思うなよ、神竜」

 何とか色んな精神ダメージから復帰した僕は、神竜にコートをかけてやる。

「とりあえず、服を調達しないといけないな。獣王国の服飾店いつものところで仕立てるか。髪型はどうするとか希望はあるか? 名前の希望は? あぁ、部屋も用意しないといけないな。レイラさんにお願いして来ないと」


「いや、折れてますよ」

「速攻で折れましたね」

「言った側から折れました」

「真っ二つに折れてますね」

「……折れてる」

「見事なまでに折れています」

 う、うるさいなぁ! 


「仕方ないじゃん! ほら、神竜は一応恩人だし……」

「……じゃあ、お兄ちゃんになってくれるの?」

 ……む、妹かぁ。

 うーん、どうなるのか解らんが、放置は出来ないよな。それに悪意じゃなくて、純粋な好意から言っているわけだし……。


 ……よし、考えるのやめた。

「解ったよ、君を義理の妹として迎える」

 思考放棄して神竜を受け入れる発言を返すと、神竜は嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう、これからよろしくお兄ちゃん。お姉ちゃん達も、よろしくね」

 可愛らしい神竜の笑顔に、婚約者達の精神防壁はあえなく決壊した。一斉に神竜に駆け寄り、様々な言葉を交わしていく。


「……どうしてこうなった」

 そんな僕の呟きは、女性陣の会話に掻き消されていた。


 ……


 まずは王城の仲間達に紹介だ。

「と言うわけで、転生した神竜改め妹になったエイルです」

「どうも、エイルです」

「「「「「ハァッ!?」」」」」

 とりあえず婚約者達の中で、最も小柄なクリスの服を借りたエイル。

 しかし、それでも超ダボダボ。紹介を終えたら、ミリアンに行こう。


「ええと、神竜ってのは……以前の島の主でしたっけ?」

「そうそう」

「そうそう」

 僕の真似をして頷くエイルに苦笑してしまう。

「色々と事情があって、僕の妹になる事になった、僕も何が何だか解らないけど、そうなった」

「は、はぁ……」

 深く突っ込まないでくれるとありがたい。


「それで、神竜様は一体今後、どうなさるおつもりですか?」

 丁寧な口調でレイラさんが問い掛けるが、エイルは首を横に振る。

「私はエイル、様も要らないよ?」

「いえ、陛下の妹君となられたのですから、様は必要ですエイル様」

「むむ、確かにそうかも。じゃあそれでいいかー。私はお兄ちゃんに付いて行って冒険したり、お兄ちゃんの敵をお仕置きしたりするのが目的だよ」

 怖えよ、目的が怖えよ。神竜のお仕置きとか洒落にならないんじゃないのか? 


「流石はご主人の妹だな」

「あぁ、血は争えないな」

「血は繋がってねぇよ」

 クラウスとマルク、何気に仲が良いよね。


「だが、これでユート殿には最強クラスの身内が加入したわけだ」

「ええ、ご婚約者の皆様がお側に居る時点でも最強クラスだったのに、更に戦力強化とは……」

 敵にとっては絶望的なレベルでな。

「更に無敵~!」

「アヴァロン王国、もうこの時点で最強の国家なんじゃないですか?」

「……ど、どうだろうね?」

 正直、そうそう敵は居ないと思っているけどね。


 ……


「という訳で、卵から孵った神竜が人化して妹にしろと要求して来たので、受け入れる事になりました」

『『『『『……は、はぁ』』』』』

 世界の窓ウィンドウズで同盟各国に報告すると、皆さん目を丸くしていらっしゃる。うん、まぁ……だよねー。


「初めてお目にかかります。私はエイル・アーカディア・アヴァロン。ユート・アーカディア・アヴァロンの妹にして、先代アーカディア島の主」

 可愛らしくカーテシーで挨拶をするエイル。その恰好は例によってアーカディア勢お揃いの冒険者ルックだ。

 インナーは悩んだ末に、白いブラウスに黒のコルセット、胸元に赤いリボンタイという可愛らしさを前面に出すものにした。


「おじちゃん達、よろしくお願いします」

 ニコッと微笑むエイル!! 同盟国家の王達の顔が緩んだ!! 


『初めまして、エイルちゃん。イングヴァルト国王のアンドレイだよ』

 今までに無いくらい、優しい声色で声をかけてるアンドレイ叔父さん!! デレッデレじゃねぇか!!


 アンドレイ叔父さんを皮切りに、一斉にエイルに声をかけるおじちゃん達!! 

『獣王のバナードだ、よろしくなエイルちゃん』

『ヴォルフィード皇帝メイトリクスだよ、エイルちゃん』

『魔王アマダムだ。エイルよ、よろしくな』

 エイルの可愛らしい仕草に、ハートを撃ち抜かれたオジサン達。横の殿下勢が盛大な溜息を吐いているぞ。


「アンドレイおじちゃん、バナードおじちゃん、メイトリクスおじちゃん、アマダム……お兄ちゃん! よろしくね!」

 アマダムでちょっと止まったな。

「そうだね、アマダムはおじちゃんって感じじゃないもんね」

『ほっとけ!! 』


 しかし、乗ってこない国家……いや、何と言うべきか迷っているのが、竜王陛下だった。

『神竜様。この度の転生、まずはお慶び申し上げます。四王竜様達に認められ、竜王の座に就いておりますフレズヴェルグと申します』

 あー、そういや竜王だもんね。

 竜を崇拝する竜王国の王だ、神格を得た神竜とあらばこういう対応になるのも無理はない。先日の落成式の際、神竜の卵を見せたら「触れるなんて恐れ多い」とか言ってたもんな。


「んー、フレズヴェルグおじちゃんは堅い~」

「いや、こっちが普通だからな?」

 お前、自分が神竜って事を忘れんなよ? 

「最初は良いの、これからはおじちゃんとして接して欲しいな」

『いえ、ですが……』

「……ダメ?」

 上目遣いで瞳を潤ませるエイル!!

『フレズおじちゃんと呼ぶといい』

 流石の竜王陛下も、その愛らしさにノックアウトされた!!


 ……


 関係各所への連絡を済ませ、僕達はようやく一息吐いた。何だかんだで、ドタバタした日になったな……。

「……それで? その喋り方やキャラクター性はガチなの? それともキャラ作りなの?」

「ん? この状態は素だよ。お兄ちゃんの事を見ていて、こういう感じならきっとお兄ちゃんは受け入れてくれると思ったから、精神構築する中で選んだ私なの」

 複雑すぎてワケ解んないよ。


「まぁ、身内になった以上は突き放したりしないから、ちゃんと付いて来いよ?」

 僕の言葉に、エイルはにっこり微笑んだ。

「どこまでも付いていくからね! あっ、それとお兄ちゃん?」

 エイルが、少し悪戯めいた表情をする。

「ちゃんと確認しておいて欲しいんだ、ステータス。それじゃあ、おやすみなさい!」

 そう言って、エイルは僕の部屋を出て行った。ちなみにエイルの部屋は、西側にあるリインの部屋の隣だ。


 しかし、ステータスを確認しろ……とな? 何か、嫌な予感がする。

「何があるって………………ハァッ!?」

************************************************************


【名前】ユート・アーカディア・アヴァロン

【状態】神竜の加護(+200)(NEW)

【称号】エイルの兄(NEW)


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