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桜白舞(16)

「ら、ラナちゃん何か勘違いしてない?! 別に私はノーマルだからね?! 一応、告白ではあるけど、そういう意味の告白じゃないからね? 常日頃から好きだとは言ってるけど、別にラナちゃんを性的に襲いたいとかじゃないからね?! だから、そんな狼狽えた表情しないで!」


 こんなに混乱しているラナちゃんは初めて見た。


「わ、わかってるわよ! だ、誰がアンタに愛の告白されたと思うか!」


 言葉とは裏腹に一瞬ホッとした表情見せるラナちゃん。絶対わかってなかったよね。……今も目を逸らしているし。


「あ、あれだよね! 私もラナちゃんも王子様に負けちゃったけど、対抗戦だと仲間だから心強いよね!」


「そ、そうね……」


「お願いだからもう少し私を見て言って下さい」


「心では見てるつもりよ」


「体でも見て!」


「…………」


「い、いや! 別に体を狙ってるみたいな変な意味で言ったわけじゃないからね!? ほら、そっぽを向かずせめて視界に入れて欲しいなって」


 私のお願いに、ラナちゃんは顔を此方へ向けてくれたけど、とても冷たい目をしていた。そして、私の努力の甲斐も空しく、ラナちゃんはわざとらしく「あっ、そうだー」と口にして席を外して何処かへ行ってしまった。


 ああ、終わった……等と思って絶望に包まれていると、五分もしない内に、ラナちゃんが戻ってきた。その手には水の入ったガラスのポットとコップが握られている。


「気が利かなくて悪かったわね。喉、渇いているでしょ?」


「好き!!」


「は?」


「ごめんなさい、調子乗りました。そしてありがとうございます」


 ラナちゃんから、水の入ったコップを受け取り、口に運ぶ。水が全身に染み渡る……気がした。何だか生まれ変わったような、生き返ったような気持ちでいると、ラナちゃんから「それと、これ」といつものようなぶっきらぼうな口調で、一通のネクト魔導学院の校章が封蝋で印璽いんじされた封筒を渡された。


 学校から何の手紙だ、ずっと寝てたし病院への紹介状か何かかなと思いながら封を開き、中身を取り出す。しかし思っていたような中身ではなく、仰々しい見た目の外装だった割に、中身はざらざらとした手触りの手紙が一枚だけだった。


「えっ……?」


 そして、内容に目を通してみると、そこには『マーガレット=リタ=アルダートン殿、貴方を今年度のネクト魔導学院の代表として選出致します。』という文字が《賢者》のサインと共に記されていた。


「な、ななぬのねにににゃ何で?!」


「落ち着きなさいよ」


「こここれが落ち着いていられるですますか!」


 いや、本当に何で? 私? 何かの手違いだろう。だって入賞もしていないし。大敗だったし。何だか、嬉しいという気持ちよりも戸惑いや疑問、困惑ばかりが頭の中を支配する。


「アンタの実力が認められたってことでしょ」


 ラナちゃんはさらっと格好良い事を言ってくれるけど、この手紙の内容をまだ信じきれていない私が居る。私が選ばれるなんて何処かで何らかの間違いが起きたとしか思えない。


「でも、私なんかが――」


「『私なんか』と卑下するのは止めなさい。ムカつく。それに、代表に選ばれたかったけど、選ばれなかった人も沢山居るんだから失礼よ」


「……ごめん。でもどうして選ばれたのかが不思議で」


「だから言ってるじゃない。アンタの実力が認められたからって。別に強いだけで選ばれるとは限らないでしょ。それこそ個人だと力を発揮しにくいけど、団体だと発揮出来る人も居るだろうし、何も腕っ節だけでは決めないでしょ。それにアンタの武器は遮蔽物が多い所の方が生きそうだし、珍しい分、相手の虚を突いたりも出来るかもしれないしね。頼りにしてるわよ」


 そんなことを言われてしまえば、私は何も言えないじゃないか。弱気になんてなっていられないじゃないか。嗚呼、私は馬鹿だ。


「まあ、代表に選ばれたのが重荷に感じるならさっさと辞退する事ね。それが一番誰にも迷惑を掛けずに済むでしょうけど、アンタはアタシの側でアタシの勇姿を見るんでしょ?」


 ラナちゃんは挑発するような、好戦的な表情で私に問い掛ける。不安が無い訳ではない。私は元々弱気だし、相変わらず怖いし、重圧も感じる。でも弱気だからといって、それを言い訳にしてずっとしゃがみ込んで何もしようとしないなんて、馬鹿らしい。


 それに、ラナちゃんの側は誰にも譲りたくない。彼女を一番近くで見届けるのは誰でもない、私なのだから。


「勿論。特等席は誰にも渡さないよ」


 いつの日か、背中を預けて貰えるように。

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