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第88小節
部屋にもどると、島田さんから洋菓子の詰め合わせの差し入れがデスクの上に置かれてあった。
その下にメモがあった。
おつかれさまでした。また、お世話できる日をたのしみにしております。
と書かれてあった。
あらためてアルバイトが終わったんだという実感がわいて、わたしは少し感傷的にその文字のひとつひとつをかみしめて何度も読んだ。
わたしはそのメモを旅行ケースのなかに大切に仕舞った。
このふたつの旅行ケースも明日には自宅へ届けられる。
わたしも明日の午後には自宅のじぶんの部屋にいると思うと、何だかこの部屋がとても名残惜しくなった。
時刻は夕方近く。
窓から桟橋を眺めた。
太陽はおおきな入道雲にかくれているようだった。
クレアも眺めた、この風景。
彼女との思い出の景色が、またひとつ重なった。
いつかなつかしく思い出される日がくるんだろうなと、目にやきつけた。
海のかなたにひとつだけ浮かぶ小さな雲が、太陽が飛び火したかのような閃光を放っていた。
わたしはその洋菓子を持って、カラオケルームへと向かった。




