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第81小節
わたしはホールの扉のまえで待っていた。
すぐうしろにはクレアがいてくれている。
扉がひらけば、最後の演奏会が幕をあける。
緊張はしていなかった。
それよりもこうしていま、ときめいてピアノに向かってゆけるこの瞬間にわたしのすべてがウキウキしていた。
わたしは深呼吸した。
コンクールでもしていることをする。
出番を待っているあいだに、わたしはこめかみあたりにチカラをこめる。
これは、母がそうしていたおまじない。
無敵になるっていう。
コンクールの日、控え室で緊張しているわたしに母がそっと教えてくれた。
だからわたしもそうしてるもうひとつのおまじない。
それはスイッチみたいなものだし、ある意味、儀式でもあった。
だから彼がじぶんのからだに命令するっていう話はよく理解できた。
彼もおなじことをしているんだと思うと、心強かった。
そう思うと、どこかでつながっているようにも感じることができた。
無敵になったわたしはまえを見据える。
扉があいた。
司会者のアナウンスに拍手が重なった。
わたしは一歩を、踏みだした。




