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譜めくりの恋  作者: ゆぶ
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第8小節



 リハーサルは午後2時からということを電話で支配人に確認をとったうえでわたしはレストランへと向かった。


 昨夜は寝つけなくて、明け方までテレビでやってた恋愛映画を観たりしていたのでけっきょくお昼近くまで寝ていた。


 支配人に確認をとったのは、朝食にはいかなかったので一応起きてると伝えたほうがいいかもと心配になっていたからだった。


 当然もう朝食のバイキングの時間は終わっていた。


 なのでいまはそこはふつうのレストランとして営業していた。


 わたしはメニューからサンドイッチとトマトジュースをたのんだ。


 このホテル内ではお金では支払わなくていいとのことだった。


 島田さんはそういってルームキーのカードとは別のカードを渡してくれた。


 ホテル内の支払いはこのカードで済みますのでと。


 通常はルームキーで支払いもできるらしいが、わたしは通常ではないようだった。


 まあ、アルバイトだし、長期滞在だし、そのあたりいろいろ事情があるのだろう。

 

 おそらくはアルバイト終了時に清算され、わたしの場合は給与から差し引かれるのだと思った。


 チェックアウト時間もとっくに過ぎていたので客はわたしとあと数人だけだった。


 さっきまであんなに晴れていたのに空は急に曇りだして、いますぐに雨が降りだしてもおかしくないといった空模様だった。


 そういえば昨日確認したのは住んでいる場所の天気で、ここの天気予報とは違うということにわたしは気がついた。


 今日のここの天気予報は何だったんだろう。 


 スマホを取りだして検索してみた。


 一日中晴れだった。


 ん?


 そっか、地域設定を変えていなかった。


 地域設定をこのホテルの場所に変えた。


 曇りのち雨。 


 それはいまガラス越しに見ている空のとおりで、その間違ってない情報にわたしは何だか妙に安心した。


 サンドイッチは美味しくて、トマトジュースもこれまたいままで飲んだなかでいちばん美味しかった。


 その美味しさは、オレンジジュースとおなじく、本来はこんな味なんだよといってるように感じられた。


 オレンジジュースといい、このトマトジュースといい、わたしはここで人生ベストワンの各ジュースに出会うというミラクルに遭遇していた。


 いったいこの地域の人たちはどんな人たちが住んでいて、どんな作り方をしているのかわたしはがぜん興味がわいてきていた。


 したがってわたしはレストランを出るときに聞かずにはいられなくて、トマトジュースは地元で作っているものかどうかをウエイターの人に尋ねてみた。


 するとやはりこの地域で作っているトマトジュースだという答えが返ってきた。


 わりかし若いウエイターのその人は、その質問を心待ちにしていたように質問の途中から笑顔を浮かべて、そして終始とてもうれしげに答えてくれた。


 ウエイターの人から伝わってくるありがとうっていう気持ちがおおげさではなく、かといってわかりにくくもなく、いちばん相手に気持ちが伝わるトーンで答えるそのスキルの高さに、わたしはえらく感じ入っていた。


 




 


 

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