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譜めくりの恋  作者: ゆぶ
61/95

第61小節



 商店街のなかにそのお店はあった。

 

 看板には喫茶&軽食と書かれたようなふつうの喫茶店の店構えだったのでいちどは通りすぎてしまった。


 店内は昭和レトロ風で全体的にうす暗かった。


 お昼まえだったのでそんなに混んではいなかった。


 奥のほうの席には夏休み中の女子高生たちがちらほらと見かけられた。


 わたしは窓際のテーブルに座り、チョコバナナのパンケーキにアイスミルクティーを注文した。


 アイスミルクティーはすぐにきた。


 それからしばらくしてパンケーキはやってきた。


 楽しみにしていたせいか、虎がくるくるまわってバターになってそれでパンケーキをつくるって夢を昨夜みるほどの感じだったので、ひとくちめが死ぬほど美味しかった。


 いや、甘さに上品さがあって、しかも最後までものすごく美味しかった。


 ひとくちめと最後のひとくちがほぼおなじ美味しさだなんて。


 わたしはからだ全体がよろこんでいるのがわかった。


 こっちにきてわたしのからだに何か変化があったのか、それとも別に理由があるのかわからなかったけど、とにかく食べものが美味しく感じることは、毎日をビバーチェさせてくれるおおきなおおきな一因なんだなとあらためて思い知らされていた。


 お店の雰囲気もよかったし、女子高生たちの笑い声も心地よかったし、彼との連弾も楽しみだったし、クレアとのアルバムでの連弾も待ち遠しかったし、夏だし、そういったものも何かパンケーキをさらにいちだんと美味しくさせていたのかもしれなかった。


 お店を出たわたしは夏休み中にもういちどこようとお店をふり返って、この場所を目にやきつけた。


 それからわたしは駅前にあったデパートに向かった。


 それほど大きくないここも昭和の薫りがするデパートだった。


 いくつかの身の回りの品を購入して、わたしは上階にある食堂でプリンアラモードを食べた。


 バナナづくしだった。


 バナナはやっぱり切ったほうが美味しいんだなということに気づいたのは新しい発見だった。


 バナナの切ったつるつるの断面がより甘さを舌に感じさせるからだろうと、うなずきながら勝手になっとくしていた。


 そんなふうなことに意識がいっていることが何よりなことであって、それが今日という日には大切なことだった。


 わたしは食堂をでて、エスカレーターで降りて、デパートをあとにした。


 お腹いっぱいになったので、ホテルに帰ってお昼寝して、そしてカラオケルームで思いっきり歌おうと、わたしはルンルンな気分で駅前のバス停へと歩いていった。


 


 

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