第51小節
朝食後、部屋にもどってクレアに電話した。
「もしもし」
「美風、何」
「昨日の話」
「うん」
「プレコンサート、やっぱりやりたいと思って」
「そう。今日やりたいのね」
「何でわかるの?」
「いま電話してるから」
「あっそっか」
「朝はやく練習したんでしょ」
「わたしのことほんとわかってるのねクレアは」
「小さい頃からずっとあなたを見てるからね、いやでも」
「ふふっ」
「交代でやる?」
「いいの?」
「いいよ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「譜めくりも交代でやる?」
「それはあなたの仕事だから」
「そうね」
「わたしはあくまで控えよ」
「何か」
「ん?」
「何か、すごいありがとう」
「何それ」
といってクレアはケラケラと笑った。
わたしも笑った。
「ねえ、あなた最近だいしょうぶなの?」
とクレアがいう。
「どうして?」
「何か様子がおかしいけど」
「そんなことないわよ」
「それならいいんだけど」
「様子おかしいかな」
「何となくね」
「どんなふうに」
「情緒不安定って感じかな。心配していってるのよ」
「わかってる」
「気をつけね」
「ありがとう。あれじゃない? 楽しいのよ、何か」
「そっちなら心配いらないね」
「楽しいことなかったから、うまくコントロールできてないのかもしれない」
クレアは黙ってしまった。
「もしもし」
「あ、ごめん。誰かきたみたい」
「そう」
「じゃああとでね」
クレアはそういうと電話を切った。




