第28小節
午前中はピアノを弾かずに風シリーズの譜めくりの予習についやすことにした。
あれだけ弾いたのに疲れてはいなかった。
今日は譜めくりに集中しようと思った。
いまはまだ2日間やっただけだし、それに彼のリードでスムーズにいってはいる。
だけどそれはいいかえれば、彼が演奏に集中していないっていうことでもあった。
初日の譜面を追いかけるのが精いっぱいという状態から、2日目の少し余裕が生まれたといった段階。
そこから今日は安心というところまでもっていきたかった。
わたしの安心、ではなく。
演奏会までに彼に安心してもらいたかった。
風シリーズは7枚のCDがだされている。
1枚の曲の長さは20数分とほかのシリーズよりは少し短かった。
彼のアルバムの価格はシングルなみだったので、それも大ヒットしたひとつの要因だったと何かの雑誌で読んだことがある。
Ⅰに合わせてⅡからⅦまですべてがまったくおなじ曲の長さで作られていることが特徴的だった。
その瞬間に時が止まったかのように。
あるいは変わらない何かを暗示しているかのように。
少女が風のいたずらで飛ばされそうな麦わら帽子を手でおさえている、その瞬間をとらえたCDジャケットが象徴的だった。
彼はこのシリーズのテーマをあるインタビューでこう語っていたことをわたしはおぼえている。
永遠をくれた夏。




