第13小節
部屋にもどると使っていたほうのベッドはきれいになっていた。
洗濯専用袋(その呼び名をどうしても思い出せない)も新しいものになっていた。
冷蔵庫をあけてみると飲んだぶんだけ補充されていた。
そういえばリクエストカードを島田さんに渡すのをわすれていたと思ってデスクの上のカードを見たら、それはそのままそこにあった。
ルールは徹底されていることに感服しながら、わたしはリクエストカードに彼のCDとポータブルCDプレーヤーを書こうとした。
書こうとペンを持ったら、スマホでもダウンロードできるかもしれないという考えが頭をよぎり、ペンを置いた。
わたしはツインの壁側でないほうのベッドに座ってスマホを操作した。
彼の全シリーズをダウンロードするとなるとけっこうな料金になるので、うわっと思ってやめた。
まあこれから毎日のようにそれもいちばん近くで聴けるわけだし、予習のつもりだったけど今日は予習せずにあらかたうまくいったわけだからいいかなと、そういうふうにじぶんを納得させてダウンロードはあきらめた。
そうなんだ。
そうなんだよね。
わたしの幸運。
彼の曲を、いちばん近くで聴けるわたし。
今日は譜めくりに精いっぱいで、彼の曲を味わうなんて余裕はこれっぽっちもなかったけれど。
そっか。
これはあれだね。
予習は逆にしないほうがいいのかもね。
明日は空シリーズ。
でも、油断は禁物。
油断して何度も失敗してきたんじゃないの、わたしは。
そういましめて、それからベッドの上に仰向けになった。