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終端の魔術師と破壊の遺子  作者: イベリア
第三章「符呪魔法基礎理論講義」
8/8

第七話 いたずら好きの好々爺

前章のあらすじ

ディー「ふざけんなよアルトォォォ!!!!!」


変換放出魔法基礎理論科の実技試験の後15分の休憩を経て教室へと戻った。次は符呪魔法についての講義である。ディーはこの分野に対しての知識が少なく、ディーにとって恥をさらす危険性を孕んだ煩いの種である。


「皆さんこんにちは。入学式の時名乗ったけど忘れている人もいるかもしれないのでもう一度。儂はルイス・アルフソンじゃ。みんながどこまで知っているかわからないから一番最初から話すけどどうかしっかり耳を傾けておくれ。」


そう言うと、どこからか浅い袋を取り出し、中からどうやってその袋に入れたのか疑問になる程の巨大な本を取り出した。


「すげー、空間歪曲の呪だ……。」


それを見たアルトは思わずつぶやいた。


「ほっほ、よくわかっのう。そう、この袋には空間歪曲の呪がかけてある。繋がっている先は儂の家の本棚の前じゃ。アルト君はもしかして符呪が好きなのかのう?」


ルイスが尋ねるとアルトは目を輝かせて答えた。


「ええ!昔から興味があって!」


それを聞いたルイスはそのしわくちゃの目尻にさらにしわを寄せにっこりと笑った。


「それじゃあアルト君には退屈な話かもしれんのう。さて、符呪とは物体に魔法をかけてその性質を拡張したり変化させたりする。ちょうどこの袋のように中身を変えたりとかが代表例じゃ。この袋はこの入り口の部分から先は儂の符呪によって本棚の前に繋がっておる。便利じゃがとても複雑な呪文じゃ。」


手始めと言わんばかりに老人らしいゆっくりなテンポで話を進める。そのせいで早くも脱落者が出そうだ。


「これ、起きなさい。」


教室の後ろの隅にいる女子生徒の一人が早くも眠りこけていた。


「ふえ!? 誰!? なに!?」


起こされた生徒はしきりに後ろを確認している。


「儂じゃ、儂。さっき本を取り出したのとは別の袋なんじゃがこっちの袋は面白くてのう。こうやって教室中のどこからでも手が出せる。眠っている生徒にはこれでちょっとしたいたずらをするのに役に立つんじゃ。」


そう言って袋に手を入れそれをぐるぐるとかき回す。するとルイスの手は教室の中を縦横無尽に飛び回る。


「ちょいとお仕置きじゃ。」


そう言って、さっきまで寝ていた女子生徒がルイス手に軽いデコピンをもらっていた。


「あうっ!」


ルイスは短い悲鳴を聞いて笑うと話を本筋に戻した。


「さて、符呪は対象に魔法の文字列を刻む事によって出来る。この時放出魔法同様、魔力を必要として魔法のイメージも必要とする。だからとても難しい。先ずはこれから袋を配る、できるだけユーモラスな符呪をして見せてくれ。袋が気に入らなかったら別のものでもいい。」


そう言って、さっき女子生徒にデコピンを食らわせた袋に手を突っ込み袋を配って回る、ルイスの手だけが。うち生徒の一人、ちょうどさっき寝ていた生徒が袋ではなくマントを要求した以外は全員が袋に何を符呪するか考えている。


「出来ました!」


アルトがいの一番に立ち上がり自分の袋をルイスの元へと持っていった。


「はやっ!?」


あまりの早さにディーは驚きの声を上げる。


「どうぞお召し上がりください。」


そう言って袋から棒のようなものを取り出すとルイスは遠慮なくそれを咥えて吸った。


「なんと、オレンジジュースじゃ!?」


アルトの机の上を見ると空き瓶が転がっていた。そして、棒のようなものは木製のストローだったのだ。

「かけた符呪は水密かの? 相手の服をびしょ濡れにするいたずらに持ってこいじゃの?」


確かにそうだ、渡した瞬間に魔力が切れて内容物か染み出す。しかし、アルトは敬愛するルイスの服を濡らす事は好まず、ルイスが符呪の正体に気付くまでずっと魔力を供給していた。


「その通りなので気をつけてください。」


そう、言われるとルイスは魔力の供給を始めた。それを感じてアルトは手を離して席に戻る。


「出来ました!」


次に手を挙げたのはジーナだった。


「この袋に魔力を供給すると……。冷んやり、ジュースをキンキンに冷やせますよ?」


まるでセールストークだ。


その後も何人かがルイスに自分の符呪した袋を持っていった。ルイスはそれをアルトからもらったオレンジジュースを飲みながら愉快そうに見ていった。


ちょうどルイスがオレンジジュースを飲み干した頃だった。教室中に爆発音が響いた。音のした先はを見てみると顔を煤まみれにしている寝てたマントを要求した女子生徒がいた。


「うへへ、やっちゃった……。」


ディーには疑問だった、何をやったら符呪魔法が爆発するのかと。しかし、ルイスがそのマントをみると原因はすぐに分かった。


「火炎、攻撃型防御か。物騒じゃのう。愉快には使えないのう。それに戦闘用にしても火のイメージが大きすぎて自分も被害を被る、もう少し押さえてみなさい。」


その頃ディーは行き詰っていた。できればその符呪をルイスがオレンジジュースを飲み干す前に完成させたかった。


「ところでディー君は何か出来たかの?」


そんな折にルイスがディーに尋ねる。


「いえ、まだ上手くいかなくて。」


「どれ、見せてみなさい。」


そう言うとルイスはディーにそれを未完成のま一度取り上げた。ディー、実はこの符呪に三度目の失敗をしていた。


「ふむ、これは……魔力を注ぐと何かが中に入っとるみたいになるのう……。しかし何もないように見えるが……何かを摘んだみたいじゃ……うーむ取り出すと消えてしまう……何を符呪したのか教えてくれるかの?」


ルイスは一通り念入りにディーの袋を観察した後ディーに尋ねた。


「それは……塩クッキーの食感と味と形です。袋の中に口をつければ食べられるかもです。」


言うや否やルイスは興味に負けて袋に顔を突っ込んで実験をしていた。


「確かに食べれる!本当に塩クッキーを食べてるみたいじゃ……しかし……飲み込め無いのがなんとも歯がゆい……ええい!生殺しじゃ!しかしこれは一番ユーモラスじゃ!わしは評価するぞい。」


そう言ってルイスはディーの頭を撫でた。ディーはそれが猛烈に恥ずかしかった。


「全員の符呪の総評をするぞい!一番完成度が高く実用的なのはアルト君の水密袋にじゃお手本のような効率じゃの。しかし、このなんとももどかしい気持ち、人をからかって遊んだりするのにはディー君の塩クッキー袋が向いとると思うぞい。実用性はないがのう」


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