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終端の魔術師と破壊の遺子  作者: イベリア
第二章「変換放出魔法理論科実習基礎編」
6/8

第五話「五重魔法(クインタプルキャスト)」

「三番ディー・クラーク」


 人数が少ないだけあって欠員しているアルファベットも存在するちょうどCが欠員で次がDから始まるディーだったように。


「はい!」


 ディーは名前を呼ばれるとどうせだからちょっと変わった魔法を使ってみようと思い前に出ていつもはやらない魔法の詠唱を始めた。


「其は炎、触れるものを炎と成す。其れは風、触れるものを風と成す。其は水、触れるもの全て水と成す。其は雷、触れるもの全てを雷撃と成す。其は土、触れるもの全て大地の理に全てを帰す。」


 この時点でディーは後悔した。

 戦闘でも実用的な詠唱を考えて思いつきて詠唱したものだがこの時点でディーはかなり限界に近づいていた。


 しかし、限界ではない。ギリギリ使えるという確証を持ってその五つを固定する次の段階へと詠唱を進める。


「自縛し、自ら手綱を差し出して開け。クイントゲート!」


 五つの門が生まれた。

 精密で緻密な魔法った。


 この段階でディーの制御できる魔力のほとんどがその魔法に注ぎ込まれている。

 しかし、それが完成してしまえば詠唱せずに詠唱された魔法と同等の物をいくらでも打ち出せる。ディーは心の中でほくそ笑んだ。


 完全詠唱の変換効率を持つ五大元素への魔力変換門を自分の制御下においている。

 要するに、この詠唱によって生まれた五つの門にただの魔力の玉を通せば魔力が自動的に魔法になるということだ。


 だが、ディーはそこで満足をしなかった。

「流転し、捻転し、統べよ。其は数多なる虚ろの魔法。形成し、自縛し自ら手綱を差し出せ。アンリミテッド・ブランク・マジック・スフィア」


 詠唱で無理やり自分の限界以上の変換されてない大量の魔力の球体を発生させる。しかし、ディーには分かってしまった。


 詠唱の効果が切れる前に自分の制御範疇を超える魔力を全て消費しないと魔力が暴走し、最悪自分が死に至るこが。


 だから、その全てを一気に、均等に五つの門に通す。ある門から出てきたものは土へ、ある門から出てきたものは水へ、ある門から出てきたものは雷へ、ある門から出てきたものは炎へ、ある門から出てきたものは風へと変わる。


 それを慎重に、そして素早く操作する。

 土に水をかけ、電気で撹拌しそれを満遍なく広げて地面に落とす。

 そしてそれを炎で乾かし風でならす。


 これで会場は下草を除けばほぼに元通りになった。

 アルトの魔法によって融解させられた土も上から新たな土を被され見た目だけなら最初と大して変わらない。


 ディーは自分の魔法に満足した、うまくやれば戦闘にも応用できると。


 そしてそこまでの精密な魔法操作を終えてようやく気を抜いたところでディーは気がついた。全員が驚いた顔をしてこちらを見ていることに。


 そして、会場が耳が痛いほどの静寂に包まれているかのように。


「クインタプルキャスト……。」


 クインタプルキャスト、恐る恐るジーナによってつぶやかれたその言葉は五重魔法の意味を持つ。通常魔法の制御は熟練者で二重、達人クラスですら三重、。


 五重までを扱えたのは歴史上ただ一人、二代目アークウィザードであるメリダ・モーガンのみである。


「素晴らしい!実に素晴らしい!!五大元素全ての魔法を一度に制御するとは素晴らしすぎる!!!私はこの魔法に100点をつけたいっ……がっ!!100点とは研究者にとっての絶望だ、魔法はまだまだ発展させられると思いたい!そんな期待が一点減点を私に強いる故この魔法に99点をつけたい!異議あるだろうか!!??」


 感動と興奮のあまり目元に僅かに涙を浮かべたテイラー博士が絶賛する。


「ありがとうございます……。」


 しかし、それでもディーには不満があった。メリダ・モーガンのクインタプルキャストとは威力が天と地ほどにも違うのだ。


 一つ一つの魔法が確かに殺傷能力を有していた。

 しかしメリダ・モーガンによるそれは一つ一つが大群を薙ぎ払うほどだったっと言う。


 変換放出魔法が得意なディーにとってはまさにそれこそが目標なのだ。それに少しでも似たことができただけでも今は満足すべきだと笑みを浮かべた。


「諸君、あれを見てかなり萎縮していると思う。あれの後では自分の魔法なんて霞んでしまうのではないかと思っていると思うし実際そのとおりである。私も今が講義中でなければさっきの彼の魔法について理解できるまで徹底的に昼も夜もなく問いただしたいところだ。だがッ!私には諸君の魔法を見て実力を判断する義務がある。非常に残念ながら次に移ろう……。」


 本当に、アークウィザード科の講師は先生というよりただの貪欲な研究者だ。

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