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終端の魔術師と破壊の遺子  作者: イベリア
第一章「アークウィザード」
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第一話「勅命」

 ディーはひどく退屈していた。喜ばしいことだが退屈にうんざりしていた。だから、いつものように詰所で本を読み漁りながらだべっていた。


「なぁ、アレン先輩。ちょっと平和すぎね?」


 アレン・カーター。少年の相棒の小説を書いた男の名前だ。


「そうだなぁ、ここんところ俺らの仕事が無い。」


 そう言ってアレンはディーに向けて火球を投げた。


「喜ばしいことだが、こう退屈だと眠くなる……。」


 ディーはそれを難なくキャッチするとアレンに投げ返した。これは魔術の研鑽の一つであり魔術師の退屈凌ぎの一つだ。


「勤務中に寝るのは感心し無いが、同感だ。」


 アレンはそれをキャッチしてディーに投げ返そうとする。


 その時、詰所の扉が開き一人の魔術師が入ってくる。二人よりは下の立場、見廻りや雑用を担当する一般の魔術師兵だ。


「おう、どうした?」


 アレンは投げるのをやめて入ってきた魔術師に問いかける。


「はっ!ディー小隊長に国王様及び魔術師元帥より話があるとのこと。ついでに、アレン小隊長も一緒に来るように言伝を賜りました。」


 ディーとアレンは顔を見合わせたのち急いで謁見の間に向かった。


「先輩、どう思う?」


 ディーは少し冷や汗をかきながらアレンに尋ねた。


「いや、多分冷や汗かくようなことじゃねえと思うよ。多分、きっと……。」


 そう言うアレンもわずかに冷や汗をかいている。


「そうだよな、あいつ慌ててなかったもんな……。」


 そう言いながらも、重要な話ではあることはわかっている。国王、及び魔術師元帥の呼び出しだ。魔術師全体にかかわる話だろう。


「そうだ、きっとめでたい話じゃないか?」


 重要だとわかっているから緊張せずにいられ無い。


「ディー小隊長、アレン小隊長両名ただいま参りました。」


 謁見の間の扉の前で言うと謁見の扉が開き国王が言った。


「おぉ、来たか。入れ。」


 ディーとアレンは謁見の間に入ると国王の前に跪いた。国王の隣には魔術師元帥が立っていた。


「まぁ、顔を上げろ。今回は喜ばしい話をしたくて呼んだんじゃよ。魔術師元帥、云うてやれ。」


 そう言うと、先ほどまでただ立っていた魔術師元帥が嬉しそうな表情で話し始めた。


「ディー小隊長の魔力量上昇が確認された。よってディー小隊長中央魔術院への編入を推奨すると言うのが今回お前らが呼ばれた理由だ。」


 終端の例外、終端を超えてなお魔力量が上昇する現象である。それ自体はさほど珍しくない魔術師の十人に一人はこの現象を発現する。


「しかし、それでは……。」


 ディーはその程度で呼ばれたことを疑問に思いとい返そうとした。しかし、その疑問を国王は先読みしていた。


「それでは我々から呼び出されるほどでもないと言いたいのじゃろうが問題は上昇速度だ。この速度なら程なくお前さんの魔力量はアークウィザード級となる。」


 アークウィザード、魔術師の例外中の例外。アークウィザードの魔力量は一般の魔術師の終端の三倍以上が条件となる。加え三種ある魔法体系を全て熟知している必要がある。


「そこでディー小隊長にアークウィザードの称号を取る気は無いか?と言う相談だ。」


 アークウィザードとは魔術師全員がうちに憧れを抱きながらもそれに至るのは完全に才能によるもののため無意識に諦める魔術師にとって最高の称号だ歴史上まだそれに至ったものは二人しか居ない。


 一人は中央魔術院初代学長アルフ二人目はその直系の弟子であり三代目学長になったメリダ・モーガンである。よって間違いなくアークウィザード関連の話は間違いなく歴史上重要な話に分類される。


「ところで私が呼ばれた理由は?」


 アレンはそれが気掛かりだった。今の所、その理由がはっきりしていない、故に肝を冷やしていた。


「魔術師や騎士は最近退屈じゃろ?そこでお前さんには中央魔術院の臨時講師になってもらいたい。早い話が実験台じゃな、問題は無いと思うがためしてみるに越したことは無かろうて。」


 つまりはアレンの用事は本当についでなのだ。


「わかりました、謹んでお受けします。」


 それは国王からの信頼の証でもあった。信頼がなければ将来ある若者とかかわる重要な実験に参加させられることは無い。この事実はアレンを大いに喜ばせた。


「ところでディー小隊長よ、アークウィザードの称号は取りに行くかね?」


 国王はアレンの返答に満足した後ディーに対し結論を求めた。


「願っても無い話です。私も誠心誠意精進したい所存です。」


 ディーが返答すると国王は満足そうに笑い二人の肩を持って言った。


「がんばるのだぞ!」


 本来なら国王直々の激励、これだけもかなりの名誉だ。


「「はっ!」」


 歓喜の中で二人の返事は自然とと重なった。

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