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お題「雪、学生、お皿」

本日の三題噺は「雪、学生、お皿」で、アルラウネさんと共に綴って行きます。久しぶりに書くから難しいのぅ…。

この手紙を読んでいるあなたは、おそらく混乱していることでしょう。何故、唐突に私が消えてしまったのか。何故、この手紙を残したのか。


その答えは、教えてあげません。


なーんて、意地悪を言うつもりもないのだけど。教えなかったら、この文章を綴る時間と労力が無駄だもの。


簡潔に言えば、私は年明けと共に自分の居場所を探すことにしたの。居場所と言っても住居的なものではなく、私が人生を捧げられる程の夢を追える場所。大まかな想像は出来ているけど、実現するかはまだ分からない。これからの私次第。


たったそれだけのことで?と、あなたは疑問符を浮かべているかもしれないね。けれど、元より弱くて優柔不断な私の性格上、こうでもしなければ変われないと思ったの。

今まで、私は温室で幸せに生きてきた。友達にも家族にも恵まれ、何一つ不自由なく過ごしてきた。それはとてもいい事だと思う。

…けれど、私ももうすぐ社会人。そんなに甘くない世界に放り出された私は、これまで通りに生きていけるのかな。きっと無理だと思う。


だからこそ、私は独りで何かを成し遂げたい。これといって才能もなく平凡な人生を送ってきた私も、誰よりも輝ける何かが欲しかった。

すごく自分勝手なのだと思う。両親や身近な人達にも迷惑をかけると思う。それでも、私は私の歩むべき道を自分で決めた。その決意に、後悔なんで欠片もない。


…けど、やっぱり誰かには知っていて欲しかったんだね。私が少なくとも異性の中で一番仲が良くて信頼していて…まぁ、単純に好きだった君には、あんまり迷惑をかけたくなかった。だから、私はこの文章を綴り、部室にある装飾の絵皿の裏などという地味に分かりづらい場所に隠したの。下手したらずーっと発見されないかもしれないのにね。


あんまり手紙とか書き慣れてないから、なんか手が痛くなってきちゃった。君の顔を思い浮かべると、不思議と涙も出てきちゃうし。何でだろうね?

…そんなの、考えるだけ野暮ったいよね。私も、別れる前に本当は伝えたかった。私は、誰よりも君のことが大好きだったよ、って。

けれど、伝えたらまた私は迷ってしまう。折角の決意を揺らがせる訳には行かないから、君は私の知らないところで真実を知って…どんな反応をするのかな。実は両思いで照れてるかもしれないし、私らしいなぁって苦笑してるかもしれないし。その答えを知る術は私にはないけれど、もし、また再び君に会えたら、私は口で君に気持ちを伝えるつもり。


大好き、ずっと私と一緒にいて下さい。って。


あ、雪降ってきた。最近冷え込むなぁって思ってたけど、雪が降るのなんてすごく久しぶり。明日にはバスに乗ってるから、一緒に雪を見ることは出来ないけど…見てたら雪ぶつけられそうだから、まぁいいや。(笑)


もうすぐ年も明けることだし、そろそろ文章も締めようかな。恥ずかしいこともいっぱい書いたけど、君なら全てを受け止めてくれるって信じてる。けど、この事は両親には内緒にしておいてね?私が責められるのは構わないけど、相手が君だと知ったら君自身が質問責めにあって大変だと思うから。(汗)


それじゃあ最後に…また会おうね。今度会う時は、君がびっくりするくらい変わってやるんだから!




「…なんで、こんなもの残すんですか。なんで、今更こんな大事なことを伝えるんですかぁっ‼︎」


今や遺言書となってしまった手紙を力強く握りしめた少年は、何処へともなく叫ぶ。悲痛な声は真冬の暖房も効かぬ、電気すら付いていない部屋にほんの少し反響し、やがて闇に溶けていった。

そして少年は静かに嗚咽し、その場に崩れ落ちた。もう帰ってこない大切な人への想いは熱い涙となって、儚く消えていく。


「…なんで、死んだんですか。バスの横転事故なんて、先輩らしくないじゃないですか。

僕はまだ、先輩に何も、伝えてないのに…っ!」


嗚咽と共に零れる声は、誰よりも恋い慕った少女へと届くことはなかった。

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