短文集
彼方の人
深夜のブラウン管。
無音で顔を次々と変えるそれは私の愛しい人を映して。
決して交わる事のない視線。
一方通行な精神。
さよなら、愛しい人。おやすみなさい、彼方の人。
彼女に桜が、
"愛しています"
と彼女に云われ、臆病な僕は微笑む事しか出来なかった。
"私、諦めませんから"
彼女の長い艶々とした黒髪を桜の花弁がそっと撫でた。
無題
彼女は笑って刀を振り上げた。
幸福は過去に置いてきた。
悲哀は心の奥底しまいこんだ。
どしゃぶりの雨で見えなくなる彼方。
それでも彼女は、それでも彼女は。
彼女は笑って刀を振り下ろした。