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スライムなダンジョンの閑話集  作者: 伊藤
竜騒動 後日談
7/18

シィのお使い 「無口な妖精と森狩人」 中編

 外はよく晴れていた。

 秋の訪れはまだ気配も見えず、夏の勢いそのままにマナが勢いよく弾んでいる。


 年を巡る四季折々の色合いには、大地に満ちる力が関わっている。

 九つの属性と、もう一つ。合わせて十からなるこの世の在り方。


 四。九。一。十。

 四つの季節に九人の子ども。

 別れて並んで、怒って笑って。

 そっぽを向いているのが一人。

 ――仲間はずれは、だあれ。


 穏やかな気候に誘われるように、いつの間にか妖精族の遊び唄を口ずさんでいたシィは、隣を歩く蜥蜴人族の視線に頬を染めた。


「……ごめんなさい」

「じゅや」


 蜥蜴人は精霊語を解さない。短くかけられた言葉の意味はわからなかった。

 けれど、表情の判り辛い顔立ちで瞳を細める相手の言いたいことはなんとなく察することができたような気がして、シィは小さく頷く。


「よく、みんなが歌ってたんです。みんな、歌うのが大好きだから……」

「じゅ。ゆゆら?」

「わたしは……あんまり、みんなと一緒に遊んだりできなくて」


 顔を俯かせる。

 リザードレディのリーザが、思案するような仕草の後に薄く口を開いた。


「うーら」


 彼女らの種族独特の、息が漏れたような音使いではない発音。


「ウラー、――うら? ……うタ」

「……うた」

「うた」


 自分の発言に満足できたのか、口元からちらりと舌が伸びて、ひっこむ。


 シィは微笑んで、それから頭の上に目をやった。

 彼女からは見えない位置に座った、頭上の生き物のわずかな動作を感じて両手に抱える。


 目の前に持ってくると、小さなドラ子が懸命に口を動かしていた。

 どうやっても音を出すことができず、泣きそうになってシィを見る。シィは小さな顔からこぼれそうになる涙をぬぐって、そっと口ずさんだ。


 ひめやかな歌声が流れ、涙ぐんでいたドラ子がぱっと笑顔になる。


 それに聞き入るように目を細めていたリーザが何かに気づいて、シィの歌を止めさせた。


「――しゅ」


 シィもすぐに気づいた。

 千切れた音の欠片が、遠くから風に乗って届いていた。


「……っ! ――!」


 途切れ途切れだが切迫さを感じさせる。何よりその流れてくる方角からわずかな波となって伝わるマナの揺れが、シィに状況を理解させた。

 森に住む魔物同士の戦闘。あるいはそこに入り込んだ人間との。


 森の中に入って既に数刻を歩いていたシィは、それからの反応に迷った。


 彼女達の目的は妖精族の住処にいくことだった。

 妖精のシィはマナの扱いこそ得意だがその魔法は戦闘向けではなく、竜の血から生まれたドラ子にもそうした能力はない。


 三人の中でまともな戦力は無骨な石大剣をたずさえたリーザ一人で、好んで戦闘に臨める組み合わせではなかった。


 だから、出発前には危険なことはしないよう強く注意を受けてもいる。

 姿消しの魔法を怠らず、魔物の動きが活発になる夜間は妖精だけが知る隠れ家でやり過ごせば、戦闘を回避して目的地にたどりつくことは容易だろう――


 シィはリーザを見る。

 うら若いリザードレディが物静かな眼差しを返した。

 決断はこちら次第だという相手からの意志を読み取って、シィは心を決めた。


「……いってみます。戦ってるの、妖精のみんなかもしれないから」

「じゅ」


 言葉はわからずとも理解できる。

 軽く頷いた蜥蜴人は、そう言いたげな顔だった。



 鬱蒼とした森を騒ぎの元へ向かう。


 穏やかな昼前の時間、周囲は静けさに包まれていた。

 厚く重なった木々葉を通過した陽光が所々に浮かぶような明るさを与えている。


 どこか静謐な気配を切りつけて生じる音が徐々に強まり、今でははっきりとその種類を聞き取ることが出来るまでになっていた。

 声と音。そして、咆哮が轟いた。


「――!」


 シィの鼓膜を震わせたのは獣か、それに近しい存在のものだった。

 声には強い怒りが含まれていて、感応した周囲のマナが色を成した。視界が染まる。シィは強く唇を噛んだ。


 先導していたリーザが足を止める。

 地面に引きずって走っていた大剣を両手に構えた。ひどく重量のある武器を盾のように前面に押し立てると、足音を殺して改めて歩き出す。


 前衛役の相手の後ろについたシィも呼吸を整え、背中の羽を輝かせた。姿消しの魔法を改めてかけなおし、周囲で活発に跳ね回るマナの気配を探る。


 ――マナは世界に満ちた力であり、満ちる触媒でもある。

 世界を構成する性質が、視覚のみならず、シィの有する全ての感覚を介して語りかけてくる。


 怒り。悲哀。嘆き。恐怖。

 明滅し、腐臭を添えて、ぞわりと背中を舐め上げる。


 息苦しさを伴って舌の根に苦味を催す、濃密な気配は目の前の死を恐れる生き物の発する断末魔そのものだった。


「――――ッ!」


 慎重に歩を進め、そしてシィはリーザの影から窺うようにその光景を見た。


 巨大なトロルがそこにいた。

 毛むくじゃらの全身。緑色の皮膚と体毛に、べったりと血の赤がこびりついている。


 全身に無数の傷を作った凶暴な魔物は周囲を数人の人間に取り囲まれていて、


「アレン!」


 中央に陣取る男が声をはりあげる。

 その後ろに控えたフードの男が集中したマナを輝かせた。男達に向かった踏み出そうとしたトロルの足元で草木が伸び、動きを封じる。


 トロルが体勢を崩した隙を見逃さず、左右から別の二人が迫った。

 槍が貫き、片刃の剣が脇を凪ぐ。


 苦悶の悲鳴をあげたトロルが槍を掴み、引き抜くのではなく槍を押し込んで持ち主を呼び込もうとする、その腕が断たれた。


「――!」


 絶叫。

 四肢の一つを切り落とされた魔物の周囲で歓声が沸く。


「ナイス!」

「よし、あとは倒すだけだ! 油断すんなよ! エイルズ、お前の魔法で落ちた腕まで焦がしたらただじゃおかねえからな!」

「やりませんよ、失礼な……」


 それから先は凄惨な光景しかなかった。


 複数の人間達は決してトロルに的を絞らせず、残る豪腕に巻き込まれる距離をとらず。連携をとって手負いの獲物を追い詰めていく。

 遠距離からの牽制。隙を突いた近接攻撃。

 決して一撃で仕留めようと無茶に出ないまま、破格の回復力を誇るトロルの体力を少しずつ削っていき――やがて、トロルの巨体が音を立てて地面に倒れた。


 再び、人間達から歓声。

 ある者は手の中の武器についた血を拭い、ある者は動かなくなった肢体を突付きながら談笑を始める。


 木陰に潜み、顔を青ざめさせてその様子を見守っていたシィは、鋭い眼差しを向ける隣の蜥蜴人の革当てを引っ張って注意を引いた。

 小声で囁く。


「……逃げましょう」


 戦っていたのは妖精ではなかった。

 それなら、一刻も早くこの場を離れ、妖精族の住処に向かわなくてはならない。


 あの人間達が森の中でなにをしているのかという疑問はあるが、それに自分達だけで対処するのは危険だった。

 トロルは弱い魔物ではない。それを数人がかりとはいえ倒した相手も、弱いはずがなかった。


 それに。とシィは考える。

 人間は、怖い生き物だ――


 伝わらない言葉の補足を真剣な目線に込めて、シィはリザードレディを見上げた。

 表情からシィの言わんとすることを察した相手が、思考する間を置いてから小さく首肯する。


 シィとリーザは音を立てないよう、息を殺してその場から後ずさり、


「――待ってください」


 人間の一人の声に動きを止めた。


「何かがこの近くに潜んでいます。マナの動きがおかしい」


 目を閉じて告げる魔法使い風の男に、仲間らしい剣士が肩をすくめる。


「はあ? なに言ってんだ、ここは森ん中だぜ。なんかの魔物だろ」

「襲ってくるだけの魔物ならそれでいいですが……この気配はどうも、隠れてる。……逃げようとしてる? 出てきなさい。そこにいるのはわかっていますよ」


 優しく語りかけるように言葉を向けられて、シィは全身を緊張に強張らせた。


 気づかれている。


 魔法も万能ではない。マナを使った現象は周辺のマナに変化を与える。

 シィはそれを不自然にならないよう巧妙に取り繕っていたが、相手は熟練の技から漏れるわずかな違和感を逃さなかったらしかった。


 どうしよう、と考える。

 気づかれているのなら、逃げられない。声を潜めていれば助かるわけでもない。走ったところですぐに追いつかれてしまうだろうし、空へ逃げようにもそれができるのはシィだけだ。


 隣のリーザがいつでも戦えるよう大剣を持ち直しているのに気づいて、シィはリーザに頭の上のドラ子を押し付けると、意を決して木陰から姿を出した。

 姿消しの魔法を解く。 


 魔法使いらしい男ががさりという物音に顔を向けて、眉を持ち上げた。


「……ああ。そんなところにいたんですか」

「あんだけ偉そうにしててわかってなかったのかよ!」


 ――ただのはったりだった。


 自分の迂闊さにシィは唇を噛む。

 人間の子ども程のシィの姿を見た人間達が、興味深そうに目を瞬かせた。


「妖精かあ。そういや、この森には出るとかって話だったか?」

「妖精っていつも群れて動くんだよな? 他のお仲間はどこだ」


 人間達は周囲を見回すが、いつまでたってもシィ以外の妖精が現れないことに気づくと、眉をひそめた。


「一人ぼっち? 迷子かなにか?」


 哀れまれたような気がして、シィは頬を染めた。

 その場からすぐに逃げ出したい衝動を抑えて人間達の顔を窺う。


 顔立ちは決して粗野ではない、若い四人組のパーティだった。

 冒険者と呼ばれる生業の者達であることは、彼らの軽装の身なりでわかる。


 行動を阻害しない最低限の装備と荷は、十分に旅慣れているだろうということをシィに予想させた。森の危険性もわからない素人ということは、トロルを倒してしまえる時点で考えにくい。


「……なにを、してるんですか」


 訊ねたシィの声は震えていた。


 見知らぬ誰かと相対することは、内気な彼女にとって恐ろしかった。

 目の前の人間達に知っている相手の顔を重ねて、なんとか恐怖をまぎらわそうとするが、血に濡れた表情が鮮明に脳裏に焼きついてそれも上手くいかない。


「なにって。あー。ちょっと、トロルを探してたんだ。平野じゃなかなか会えないし、森ん中のほうがまだ会えるかなってことで」


 気安く答えた剣士が、地面に転がっていたものを拾って掲げてみせる。

 それは、断面から血を滴らせるトロルの片腕だった。シィはますます顔を青ざめさせた。


「じゃあ――用がすんだら。出ていってくれますか」


 それでもなんとか、言葉を押し出して催促する。

 きょとんとした表情で互いの顔を見合わせた人間達が、声をあげて笑った。


「そんなに怯えるなよなー」

「アレン。貴方の顔が怖いんですよ。血がついてます」

「そうか? ああ、ホントだ」


 アレンと呼ばれた、リーダー格らしい若い男がシィににこりと笑いかけた。


「悪い悪い。ああ、すぐに出てくよ。悪かった」


 悪意の無い表情だった。

 そこでようやく、見知らぬ相手に見知った人間の面影を重ねることが出来て、シィは小さく安堵の息を漏らした。


「一番、近い森の出口ってどっちかな? 帰りに迷いたくないから、教えてもらえると助かるんだけど」


 訊ねつつ、男がシィに近づいてくる。


 メジハに至る方角を指差そうとしながら、シィは相手に対して警戒を解いたつもりはなかった。

 けれど、シィが一瞬、目を離した隙に男が背中に腕を隠したことには気づかずに、


「きゃ――」


 突然、横から押しのけられて態勢を崩す。


 シィを突き飛ばしたのはそれまで木陰に潜んでいたリーザだった。

 急な運動と接触がカモフラージュしていたマナの働きを阻害して、蜥蜴人族の姿が露わになる。


「リザードマン?」

「なんだよ、近くに水辺でもあるのかよ!」


 少なからず驚いた様子で警戒態勢をとる人間達に、シィは目の前の相手から目を離せなかった。


 男の右手にいつのまにか短剣が握られている。現れたリーザに対して持ち出されたものではなかった。

 視線に気づいた男が、苦笑して後ろの仲間に文句をつける。


「エイルズ、他にもいるならそう言えよ。バレちまっただろ」

「誰も一人だなんて言った覚えはありませんよ。さすがにもういないようですけどね」

「まあいいや。リザードマンはともかく、フェアリーってのは大した小遣いになるしな」


 男の言葉の意味を理解したシィが後ずさる。

 庇うようにリーザがその前に立ち、石の大剣を構えた。


 彼女と一緒にいないドラ子の姿を探し、木陰から隠れてこちらを窺っている小さな生き物を見つけて、シィはそこから出てこないよう懸命に目線を送った。

 視線でドラ子をその場に縫い付けておいてから、淡く羽を輝かす。


 四人の人間達へ向けて飛ばされた眠りの思念は、しかし既に男達を護った別種の力に阻害されて、効果を及ぼさなかった。


「……さすがにフェアリーの魔力は侮れませんね。アレン、やるなら早くしてください。長丁場になったら押し負けられそうです」

「了解。ジェフ、ロニー。囲め。“羽”を傷つけるなよ。蜥蜴のほうは、まあ、どうでもいい」


 妖精の羽は魔力の結晶体であり、それ自体に高い価値を有する。

 一般的には群れて過ごす妖精と遭遇する機会はほとんどなかった為、それが市場に出回ることも皆無だった。その希少性がさらに価値を向上させている。


 ゆっくりと二人を取り囲むように動く人間達に、シィは必死に事態を打開する術を考えた。

 一対三ではリーザに勝ち目はないし、直接的な戦闘能力を持たないシィは加勢できない。魔法を使ったサポートも、相手方の魔法使いに阻止されてしまっていた。


 なら、あの魔法使いさえどうにかしてしまえば――シィの背中の羽がさらに輝きを増し、圧力を増したマナに対抗しようと人間の魔法使いも眉間に皺を集める。


 静かな戦いは早々に終わりを迎えた。


 対峙する彼らの横合いから、がさりと音が立つ。

 獲物を構えた四人がそちらに気を取られた次の瞬間、魔力の押し合いに集中してそちらに反応しなかったシィと魔法使いの、一方の首筋に矢が突き刺さった。


「……かっ――」


 目を見開き、自分を貫いた異物を見おろした人間の魔法使いが全身を震わせる。倒れこんだ物音で初めて異常に気づいた他の仲間達が、血相を変えて周囲を見回した。


「弓だと!」

「どこからだ――いた、」


 ぞ、というのが男の最後の発音になった。

 空を裂いて飛来した矢に額を貫かれ、ぐらりと揺れた男がそのまま倒れる。


「くそ! ……あ?」


 危機感に表情をひきつらせた残る二人が、意識を抜かれたように目から焦点をなくした。

 羽を輝かせたシィは、忘我の魔法に成功してほっと息を吐いた。


 チ、と小さく舌打ちの音を聞いて、シィがそちらに顔を向ける。

 大きく伸びた樹上から冷たい眼差しが見おろしている。視線の主は、銀髪を長く伸ばしたエルフだった。


 森の中でも目立つ風貌なのに、自然と溶け込んで見えるその相手のことをシィは覚えていた。

 ちらりと足元を見る。木陰から出てきたドラ子がシィにしがみついていた。


 もう一度、先ほどよりはっきりと舌打ちしたエルフが飛んだ。

 自然落下。

 ふんわりと着地する。足元にマナの加護が働いたのがシィには視えた。


 シィは目の前に降りてきた相手を見上げる。


「ありがとう、ござい――」

「なんで邪魔しやがった」


 口を開き、礼を言いかけたシィの言葉を遮った声はひどく険悪だった。


「……邪、魔?」

「こいつらだ。魔法なんかかけなくたって、オレがすぐに殺してやった」


 ぽかんと虚空を見上げて立ち尽くす人間をあごでしゃくって、憎々しげに告げる。

 シィはじっと銀髪のエルフを見上げてから、訊ねた。


「……殺したかった、んですか?」 

「悪いかよ?」

「――私は。……殺したく、ありません」


 シィはまっすぐに相手を見たまま、小さく、けれどはっきりと告げた。


 エルフの顔が歪む。

 小さな妖精の足元で震えるさらに小さなドラ子を見て、不機嫌そうな表情がますます不機嫌になった。


「手前、あの精霊喰らいの連れだよな」

「……はい」

「ちっ。甘ったれ野郎の周りにいるのはみんな甘ったれかよ」


 がりがりと頭を掻いたエルフが、やおら腕を伸ばすとシィの胸倉を掴みあげる。

 細腕で小さな身体を強引に自分の目線まで持ち上げて、


「――あんまナメたこと言ってっと、あのクソ野郎の前に手前から殺すぞ」


 凄まれたシィが全身を強張らせる。

 様子を見守っていたリーザが、エルフの腕に手をかけた。


「あ? なんだ、トカゲ野郎」


 リーザは応えない。

 黙ったまま腕に力がこもり、シィが解放される。尻餅をついた。


「……じゅや。ららしゅらじゅ、ゆあら」

「なに言ってっかわかんねーよ。精霊語話せ、ボケ」

「エルフの癖に蜥蜴語もわからないのもどうかと思うけどネ!」


 渦巻いた風が収束して、小さな見かけの精霊が現れる。

 風の精霊シルフィリアはエルフの腰に抱きつきながら、からかうような声をあげた。


「やめときなって、ツェツィ。弱いものイジメ、カッコ悪ゥ」

「ちっ」


 舌打ちしたエルフが手を放す。

 リーザとシィ、それからドラ子を順番に睨みつけてからどこかに向かって歩きだす、その背中をシィが掴んだ。


「……なんだよ」


 ぎろりとした眼差しが振り返る。


「……お礼、を」

「いらねーよ。別に手前なんか助けたわけじゃねえ。クソ人間どもが大ッ嫌いなだけだ、オレは」

「でも……助かりました。から。お礼、させてください」

「いらねえっつってんだろ」


 邪険に振り払われた手ですぐに相手の服装を捕まえる。


「マジで殺すぞ、オイ」


 殺気を孕んだ視線に見おろされても、シィは掴んだ手を放さなかった。


「お礼、させてください」


 上から見おろすエルフと、下から見上げる妖精の眼差しでにらみ合う。

 先に根負けしたのは、上から見おろしている側だった。



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