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04

「葉月さん、好きです」


「…えっ!?」


「前夜の僕の勝手な行動を、貴女はその広いお心で許してくれました。僕は本当に素晴らしい女性に拾って貰えた」


「いや、えっと…」


突然何を言い出すのやら、人間に戻った碧はうっとり顔(?)で微笑んでいる。


あの前回の満月の夜から、次の満月がやってきた。それが今夜。

時の流れの問題解決力は大したもので、前回碧に危うくキスされそうになった事による混乱も随分と薄らいでいた。

だから、しばらく人形の碧に多少ぎこちなく接してしまっていたのもだんだんと元に戻っていったのだった。流石に女の子の日云々は言えなくなったけども。


この流れのままあやふやにしていつの間にか仲直り、なんていう手もあったのかもしれないけれど、そういうのはどうしても嫌だったから。

まず私は碧に謝った。あの夜、無理矢理寝る様なことしてごめんね、って。碧にキスされそうになったとかそういうのだって、今思えば私の思い込みだったかもしれないし。碧は西洋の人だから、そういうスキンシップに過ぎなかったのかもしれない。うん、きっとそうだったんだろう。と言うことは勝手に防御反応を起こしてしまった私は碧を傷つけちゃったのかもしれなかった。うわあ、なんてヤツなの私。


それに、人形の碧には言いやすいっていうのもあってね。

元の姿に戻ると、目線は私より断然上になるわ男前度は格段に上がるわで緊張してちゃんと喋れない可能性があるから。

ウワーッ!ずるい!ずるいよ私!


人形のままでも、碧がふわりと笑ったのが分かった。

ああ、良かった。仲直り出来た、って。

予想以上にほっとしている自分に気づいて、なんとも言えない気持ちになった。



で、今日が次の満月の日で。

机の上に乗っていた碧(人形)が、人間になって開口一番にそう言ったのだ。



「葉月さんは優しい。それに咲いたばかりの花の様に可憐で美しい。なのに不思議で面白くて僕は見ていて飽きる心地がしない。素敵な女性です」


「えっと、それ絶対褒めすぎだと思うよ?特に可憐とか美しいとかの部分」


「そんな事はありません、形容する言葉が足りないくらいですよ」


「滅相もないよ!私なんかもう元彼に振られて2年も経つし仕事もそんなに出来る方じゃないし可愛くないし…。それなら碧の方が絶対かっこいいから!自覚してる?」


恥ずかしさでちょっとむきになってしまった。私の顔、確実に赤くなってると思う。


「自覚していないのは葉月さんの方です。それと、なんでしたっけ。2年前に元彼が?」


うわっ!そこ突っ込まないで!


「…碧に会う前だよ。悪いけどあんまり思い出したくないの」


「あっ。すみません。僕はまた出過ぎた事を…」


「ああ、いや、いいんだよ!私が勝手に口走った事だしね」


「いいえ。…ただ、貴女がその男に傷つけられたのかと思うと、許せなくて」


碧は本当に苦痛そうに眉を寄せ、歯を食いしばっていた。


「出過ぎたこととは思っていますが、貴女に害なす者はなんであれ始末したいと思ってしまいます」


え、ちょ、さらっと物騒な事言ったよね今!

始末ってあんた。何をどうやって始末すると言うのかね!?


「いやいや!全然大丈夫だから!あんなの単に私が愛想尽かされただけだし、仕事優先してた私も悪いんだし、あいつが浮気したのだって私がそういうのあんまり好きじゃなくて頻繁に拒んでたからだし…」


あ、やばい。

いらん事まで口走っちゃってまた私何やってんだろう。


「…あの、碧?おーい」


「…やっぱり許せませんね」


目が…本気だ!


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