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一日目(月) ~開幕~

 彼―俊也は自他共に認めるヘタレである。不良に絡まれれば財布ごと渡して穏便にお帰り頂くし、限定販売品を譲ってもらうために女の子に土下座したことだってある。

顔は自分でも悪くないとは思う|(それが不良に絡まれる一因にもなっているのだが)のだが、校内に知れ渡ったヘタレ伝説のせいで彼女もいない。


 とまあ彼はそんな個性|(?)が有りはするものの、概ね普通の人間だと考えている。運動神経もそこそこ、頭もそこそこ。特に人に憎まれる事もなく|(不良に絡まれるのはスルーだ)、平凡に|(女の子に土下座するのもスルーだ)、平和に生きてきた。

 当然、殺されそうになったり、殺しそうになったり、なんていう漫画の主人公みたいなことには無縁だし、願い下げである。


 ―――そんな彼だが、

 まさか、

 初対面の相手に、

 こんなことをいわれるとは、

 さすがに想像していなかった。



 「き、貴様何故生きている!?」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ―――俺はヘタレだ。

 そこに否定の余地はない。する気もない。だが、取り立てて社会のゴミというわけではない。と、思う。…と、信じている。宿題は5回に4回はちゃんと出すし、道端にゴミを投げ捨てたりだってしない。


 そんな、平和で慎まやかな日々を過ごす俺が、


 「き、貴様何故生きている!?」


 こんなセリフを言われにゃならんのだクソ。



 ―――まあ、落ち着いて遡ってみようか。


 俺は放課後、さっさと家に帰るタチだ。町をぶらぶらしたり、放課後の学校に残る、なんて真似はしない。そりゃ俺だって放課後の教室で女の子とフラグ立てたりするのに憧れないわけじゃない。だが、俺はヘタレ。最優先すべきは、わが身の安全だ。

 いつどこで不良に絡まれるかわからんのだし、そうなれば問答無用で財布が空っぽだ。抵抗?なんでそんな危ない真似を。このランダムイベントを回避するには、エンカウントの少ない道|(調査済み)を通り、さっさと安全地帯|(=家)に逃げ込むのが一番だ。


 今日もいつもと同じ人気|(含不良)のない道をとぼとぼ帰っていた。まあ補習のせいでいつもより遅い以外何も変哲はない、はずだった。


 ―――行く先で、殺人未遂現場に出会わなければ。


 そう、それは殺人未遂現場。


 一人の女子高生|(ウチの高校だ)が尻もちをついて倒れており、それに歩み寄る一人の男。


 ―――その手に光る、長い、銀色。


 それを見た瞬間、

 俺は、



 ―――悲鳴を上げて尻もちをついた。


 フッ、笑ってくれ。

 音にすれば「ひでぶ!」と「あべし!」を足してさらに2倍した感じの悲鳴だったと思う。

 人生でベストスリーに入る悲鳴だった。そんなに数えるほど悲鳴あげてんのか、というツッコミは無しだぜ。俺を誰だと思ってるんだい?


 その声は、時間を止めた。

 DI○もびっくりの効果だぜ。

 殺人鬼|(仮名)もびっくりの音量だったようだぜ。


 ポカンと口をあける尻もち女|(やっぱり仮名)。同じく呆けた顔で顔でこっちを見る殺人鬼。茫然としたまま尻もちをついて、金魚みたいに口をパクパクする俺。ちなみに声もちょっと出てたかもしんない。あばばとか。


 どのくらい時間が止まっただろうか?てか、あのス○ンド何秒くらい止められるんだっけ?

 まず動き出したのは、殺人鬼。

 気を取り直したように顔をニヤけヅラに戻し、ナイフを舐め回しながら歩き出す。


 ―――俺に向けて。


 っていやいやいやいや!

 普通男の子は女の子の方に興味持つでしょ!

 さっきまで襲ってた子ほったらかしちゃだめでしょ!

 あんたも男でしょ!

 あ、あ、アッー!じゃないよマジで!


 とかなんとか完全にテンパッたまま、体は動かない。いや、一部分だけは動いた。


 「いや、僕あんまりお金持ってないですよ財布ほしいならあげますから確認してみてくださいマジで別に全部取られたって警察とか呼びませんしホラ体だってもしあなたがホの字の人でも満足させたりできないですしあっちにかわいい女の子だっていますし!?」


 伊達にヘタレやってない俺。この間3秒かかってなかったんじゃないか?慣れって怖いなほんと。あれ、なんだか泣けてきたんだが…。


 「ひ、ヒヒ…おまえ…いいなぁ。あの女は脅しても切っても反応薄ィんだァ…。つまんねェ…」


 あ、あれ、俺、なんかまずいことした?


 「おまェ…いい悲鳴あげそうだなァ…」


 あ、分かります?さっきの悲鳴そんなに気にいったんですか?ってかそんなの言ってる場合じゃない!


 「いえいえ僕ヘタレですから痛いとすぐ気絶しちゃいますしさっきのは偶然のまぐれというかやっぱこれ以降はご期待には添えられないというか!!!」


 俺、必死。泣いてるのは命の危険が怖いからだよ。それだけだよ。


 「ヒヒ…今ので十分だぁ…おれはおめェみたいな命乞いが聞きたくてこの仕事してんだァ…」


 俺、必死。必ず死ぬ的な意味で。

 ゆっくりと迫ってくるナイフ。涙と汗でぬれた頬がちょっと切られる。俺、「ヒゥッ!」。ああ、悲鳴あげたら長生きできるかな…。でも、男にマウントポジション取られんのって、すげえ気持ちわりいな…。

 ちょっと切られては悲鳴をあげる、をどれくらい繰り返したか。まあ実際2、3分だろうが、ヘタレとしてはもうお腹いっぱいです。これだけの間いい悲鳴|(?)をあげ続けられた自分に乾杯。あと人生にも。


 とうとうクライマックスか、殺人鬼がナイフをこれまでと違って大きく振りかぶる。うむ、いいフォーム。それを見届けて目を閉じる。

 とかいってるのはもうヘタレらしく諦めたからかな。

 ああ、できれば脱ヘタレで死にたかった………。


 …。

 ……。

 ………。


 「ぐあッ!!!」

 

 あ、あれ?なんだ?生きてる?

 ちなみにさっきの悲鳴は俺じゃない。俺ならもっとエレガントで個性的な…じゃねえ!


 「な、なんだぁ!?」


 うん、モブキャラ的セリフ。脇役体質だし、俺。


 あわてて目をあけると、そこには、一人の女。

 ショートカットだが、一房だけ長い黒髪が後ろで束ねてある。

 背筋の伸びたスマートな体。

 振り返ってこちらをみた美しく整った顔。

 その形のいい口が開き、


 「き、貴様何故生きている!?」


 え、えぇー!


 「い、生きててごめんなさい!?」


 え、えぇー…。

 どこまでいってもヘタレな俺だった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 彼はこうして、ヘタレなりに、とある事件に巻き込まれた。この一週間、彼はヘタレなりに、命をかけることになる。ちなみに現段階では巻き込まれた様にしか見えないが、少々先まで話せば、所謂、主人公の位置である。


 ヘタレストの一週間が、こうして始まった。

初投稿。やっちまったかもしれない…。感想とかなんとかあればいろいろお願いします。拙いところも多い素人ですが、よろしくお願いします。

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