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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第6章 ふたりぼっちステージ
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ふたりぼっちステージ 第2話

 中学の文化祭ステージを思い出しながら進行役の実行委員に呼ばれるのを控え室の中で待ち、ふと隣に立つ叉音ちゃんに視線を向けると口角をわずかに上げて微笑まれ、その顔は不敵に見えた。


 あっ、これは本気で弾く気だ。


 この表情でさっきまで抱いていたのとは別の緊張感を覚えたところで実行委員のアナウンスで呼び出され、道場に出ると客席はさっきよりも人で埋まっていて少し安心した。 




 演奏曲は当初三曲の予定だったけど持ち時間が思ったよりもあったのと、陽葵と海玲ちゃんの反応が良かったからヤンキードゥードゥルを最初の曲に追加してふたりでアコギで演奏した。


 難しい曲じゃないから客席の様子をうかがいながら弾けてみんな知っている曲だからまばらな手拍子をして貰えたけど、所詮「アルプス一万尺」と思われているのかスマホを見ていたりあまりマジメに聴いてもらえていない様子だったのが距離が近いせいで余計に見て取れた。


 でも、ここまでは想像していた通りだ。


「えーとみなさん初めまして、ブルーグラス・ブルームです。今回はわたし…百合川響が隣の水城叉音ちゃんに無理を言って好きな曲を選んでもらって一緒に弾かせてもらいます。最初はみんなが知ってる曲がいいと思って日本では『アルプス一万尺』で有名なヤンキードゥードゥルにしましたが、次からの曲はあまり知られていないかもしれません、それでも一懸命弾くので最後まで楽しんでいってください」


 悩みに悩んで昨日の晩にようやく用意できたMCに歯抜けた拍手をもらっている間に叉音ちゃんは陽葵にアコギを預け、代わりにバンジョーを受け取りストラップを肩にけていてその様子に観客がどよめいていた。


 しかしそんなことは気にもとめず、叉音ちゃんはゆっくりとうなずいて合図をくれた。


「フォギー・マウンテン・ブレイクダウン!」


 わたしが曲名を叫ぶとバンジョーの軽快な音色が鳴り響き、わたしもアコギでそれを追いかける。


 ヤンキードゥードゥルよりもハイテンポだけど今日のために何度も練習していたし、さっき叉音ちゃんがバンジョーを受け取った時の会場のどよめきがなんだか滑稽で緊張するどころか「もっと驚かせてやろう」と思えて楽しくて仕方なかった。


 わたしのソロが始まると叉音ちゃんはバンジョーを背負うように背中側に回してフィンガーピックをポケットにしまい、控え室から陽葵が持ってきたフィドルを受け取るとさっきの驚きとは違う困惑のどよめきが聞こえた。


 わたしのアコギと入れ替わってフィドルのソロが始まると拍手が起こり、弾き終えると同時に陽葵にフィドルを返して再びフィンガーピックを付けるとそのままバンジョーのソロに突入してさらに一層大きな拍手が起き、叉音ちゃんが右足でリズムを取り始めたのが目に入って「叉音ちゃんも楽しんでるんだ」とわたしに安心感をくれた。


 次の「キャノンボール・ラグ」はさっきのような驚かれることはなかったけれど、最初に比べると段違いに客席の雰囲気は良くなっていて、後に控えている先輩目当てなのか体育館でやるバントまでの暇つぶしなのか、いずれにしろ観客が増えていたことと、何よりも叉音ちゃんが楽しそうでそれがうれしかった。




 そして最後、ギターをアコギからエレキギターに持ち替えての「12番街のラグ」は最初からかっ飛ばして弾きまくっていたのに終盤にはさらにそれを倍速再生をしたように走り抜け、わたしは叉音ちゃんについて行くに必死であまり客席の反応は見れなかったけど最後は一番大きな歓声と拍手をもらった。


 大成功……と言いたいところだったけど、正直反応としてはわたしが中学の文化祭で弾いたときのスタンディングオベーションでの盛り上がりに比べればまだまだだった。


 叉音ちゃんの超絶テクニックがあったとはいえ、やっぱりみんなが知らない曲ばかりな上に歌の無いインストだったからそこまで盛り上がれなかったんだろう。

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