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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第5章 祭りの前が一番楽しい!
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祭りの前が一番楽しい! 第6話

 サボった罰ゲームとしてメイド服を着せられるのが確定していることが判明し、それならもういっそこのまま手伝わなくていいかと開き直ってギターの練習に精を出している内にステージ出演の申し込み期限が間近になっていた。


 こうして慌てて授業中に必要事項を申し込み用紙に書き込んでいたのだけれど「団体名」の項目でボールペンが止まった。


 団体名…つまりバンド名だったりを書くのだろうけどなんて書けばいいんだ?

 練習で手一杯だったせいで決めるのをすっかり忘れてた。


 中学の時は友達のバンドに入れてもらっていたから命名なんてのはしなかった。

 というか、そもそもわたしはこういう「名前を付ける」というのが苦手で、現に自分の動画チャンネル名も散々悩んだ挙げ句、何も思い浮かばなくて自分の名前をもじって済ませてる。


「……まあいいかぁ」


 そもそもふたりでやるんだから、ここでひとり無い知恵を絞ってウンウン唸るよりはカントリーに詳しい叉音ちゃんの方がそれっぽい名前を考えてくれるかもしれない。 



 グループ、団体名については昼休みに叉音ちゃんとご飯を食べるついでに一緒に考えようと思って、教室とロッカー前を探したけれど見つからない。


  こういうときは先に行っててくれているから特に心配もせず、いつもの踊り場に向かうと膝の上に包みに入ったお弁当箱を乗せたままうつむき気味に座っていた。


 わたしが来たのには気づいているはずだけど顔を上げてくれず、何かあったのかと心配に思いながら隣に座った。


「……ごめん」


 何に対する謝罪なのか分からず、固まってしまっているわたしに対して叉音ちゃんはさらに謝罪を続ける。


「学祭、やっぱり出れない」

「えっ、でもまだ申し込んでないから他の予定があるなら調節してもらうよ」


 他の出し物との兼ね合いがあるからその辺の融通は結構効くと聞いていた。


「そうじゃなくて……その…怖い…から……」


 ああ、そういうことか……


 わたしの場合は元々の性格なのかピアノ教室と演奏会で慣れてしまったのか、中学の文化祭ステージでも緊張はあまりしなかったし、そのおかげで動画投稿も続けられている。


 でも叉音ちゃんは人前で演奏をしたことはほとんど無いと言っていたから、たしかに怖くなっても仕方が無いかもしれない。


「私がやるって言ったのにごめん」

「うん」


 深く考えずに出してしまった同意の言葉に自分でびっくりし、少し自己嫌悪を感じた。


「前に響の動画見せて貰って、怖くなった……本当にごめん」

「わたしは叉音ちゃんとやりたかった」


 恨み節のような、でも紛れもない本音をぶつけた。

 ぶつけずにはいられなかった。


「……ごめん」


 叉音ちゃんは謝ったっきり身体を固め微動だにせず、目を伏せたまま一言も発しなくなってしまった。


 誘ったのはわたしで、一度断られて「やっぱりやる」と叉音ちゃんの方から言ってきたから今まで練習していた。


 なのにそれをまたひっくり返すのはどうなんだというという気持ちが無いと言えば嘘になるけど、それを持ち出して責め立てて無理やりで出ても意味はない。


「ううんしょうがないよ、無理させるわけにはいかないから」


 これは叉音ちゃんを気遣ったのではなく、わたしの諦めの言葉だった。


「ありがとう」


 わたしの気持ちを察してくれたのかそれともただただ申し訳なさでいっぱいなのか、その表情は「ありがとう」の言葉に似つかわしくない、暗い表情だった。

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