祭りの前が一番楽しい! 第1話
「そういえば最近動画上げてないけどどしたの?」
昼休み、お弁当箱をロッカーにしまっていると、背後から陽葵
に疑問を投げかけられた。
「いやぁ、最近毎日アコギの練習しててそれどころじゃないんだよね」
もらったアコギの練習に精を出していたせいでチャンネルの方は後回しになっていて、夏休みに撮ったまま放置していた動画を編集して最後にアップロードしたのが九月の半ば。
そして今は十月だから一ヶ月近く経っている。
動画も撮りたいとは思っているけど、休みの日に叉音ちゃんの家に行って練習を手伝ってもらっている以上はこっちを優先せざる負えないし、せっかく始めた以上はもっとアコギを上手くなりたかった。
「じゃあ、あのギターって練習するのに持ってきてたの?」
「帰り道に公園とかでね」
実は最近は帰り道の途中に公園で練習するために学校にアコギを持ってきているのだけど、この”理由”については時間を少し戻さなければいけない
叉音ちゃんとわたしの部屋で学祭に出るのを決めた日から四日後の九月の土曜日、いつものように水城家の納屋にやって来たけれどこの日は練習ではなくてステージでの楽曲決めで、叉音ちゃんにチョイスしてもらっていた曲の音源や動画を一緒に聴くことになっていたからタブレットで選んでくれた曲の動画なんかを一緒に見ていた。
「……本当にいいの?」
「何が?」
「カントリーなんか絶対盛り上がらないよ」
全部聞き終わったところでおっかなびっくりに聞いてくるから何かと思ったらそのことか。
「まあそうなるかもしれないけど、わたしは叉音ちゃんとみんなの前で弾くのが目的だからいいよ」
「でも、響も巻き込むことになるし……」
「いやいや、出ようって言ったのはわたしなんだからこっちが巻き込んだんだよ」
なのでわたしとしてはもしも失敗して、動画投稿をやめてしまった時のように叉音ちゃんがショックを受けてしまうのではないかと心配している。
「だからわたしのことは気にしなくていいよ、叉音ちゃんが好きな曲を一緒に弾こう」
「わかった、ありがとう」
安心してくれたのか口元が少し緩んだように見え、さっきよりも生き生きと曲を選ぶ様子でこっちも安堵のため息をついた。




