重なる音と重なる心 第9話
約束の放課後、昼休みとは違ってどこか浮ついているような喧噪を聞きながら階段の踊り場へと向かうと、先に来ていた叉音ちゃんがいつもとおなじくちょこんと座って待っていてくれていたから、その隣に座る。
「叉音ちゃん、今度の学祭なんだけどさ……一緒にステージに出ない?」
「……」
やっぱり顔を曇らせてしまった。
覚悟してはいたけど、実際自分の目で見てしまうとさすがにショックだなぁ……
「あのね、わたしのステージじゃ無くて叉音ちゃんのステージにしたいの、曲も叉音ちゃんに選んで欲しいし手伝えることは何でもするから───」
「何で?」
「えっ?」
「何で出たいの?」
「それは……叉音ちゃんの演奏と演奏してる叉音ちゃんが好きだから、だから他の人に聞いて欲しい」
「そうなんだ……ありがとう」
と、感謝の言葉を言ってくれたけど、正面の窓を見据えたまま黙ってしまい、夕日で朱色に染まった横顔を見ながらどんな答えが返ってくるのかと内心ドキドキしながら待っていた。
「その…そう言ってくれてすごくうれしい……でも、やっぱり無理だと思う」
「そっか……」
「みんな私の曲なんか知らないと思う、だからステージなんかやってもしょうがないよ、だからやらない」
わたしの喉からは「そんなことないよ」と出かかったけど心の底から残念そうで、それでも断らなければいけないことに苦しんでいる表情を見てしまい、その言葉は飲み込んだ。
「…うんわかった」
「ごめん、せっかく誘ってくれたのに」
「嫌ならしょうがないよ、それにこれで叉音ちゃんの曲は全部あたし専用になるんだし」
「うん、そうだね」
無理矢理おどけてみせたおかげで暗かった表情に笑顔が戻ったのは良かったけど、これでわたしには別の問題が降りかかってきた。
「あー、どうしよっかな」
「何が?」
「いやぁ、実は学祭で二年の先輩のバンドに誘われてるんだよね」
学祭ステージの話の後でこれを伝えたのはこっちを先に言えば自分を人質にして出演を迫っているようになるのが嫌だったからだ。
「そうだったんだ、出るの?」
「叉音ちゃんと出るならそれを理由に断ろうと思ってたんだ。まあせっかくだし出るって言っとくよ」
「……」
もしかしたら考え直してくれるかと淡い希望を持っていたけれど叉音ちゃんは無言で小さくうなずいただけで、日が沈み紺色に塗りつぶされつつある窓をただじっと眺めていた。
そういえばもういい時間だ。話そうと思っていた事は全部話したからもう帰ろうか。
「わたしそろそろ帰るね、また明日」
「……」
別れの挨拶にも無言でうなずかれ、急に元気無さげになったように見えたけど、時間も遅いし断られた事に対する気まずさがあったからあまり気にとめないようにして家に帰った。




