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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第1章 ブルーグラス・ブルーム
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ブルーグラス・ブルーム 第4話

 放課後、自分が投稿した動画の再生数とコメントを見ながら次は何を弾こうかと考える。

 至福の時間であり動画投稿のモチベーションでもあるけど、今日に限っては朝からずっと雨で、帰るのが億劫だから現実逃避しているのもある。


 とはいえこのまま待っていても雨は止みそうに無い、もういい時間だからそろそろ帰るかと思いながら何気なしに机に突っ込んだ手が何かに当たった。


 わたしは教科書類はカバンかロッカーに入れることにしているから机の中は基本空っぽ。だから移動教室で誰かが使った時に何か忘れていったのかと考えながら引っ張り出すと、数学の教科書が出てきた。


 最初、何でこれがここにあるのか分からなかったけど、頭頂部に押された『水城叉音』の名を見て思い出した。


 昼休みに水城さんを探し、見つからないから諦めてお昼ごはんにしようとお弁当を持ってきた時に自分のロッカーに入れるのを忘れ、戻るのが面倒だからここに放り込んでいたのだ。そして今は放課後、つまり返し忘れたのだ。


 雨に対する気だるさを感じつつ帰ろうとしていたのが一転、肝が冷えて足が震えた。

 これが友達ならスマホで謝罪のメッセージを送って明日の朝返せばいいけど、連絡先を知らないし相手は何を考えている良く分からない初対面、どんな事態になるか想像がつかない。


 部活をやっていればまだ校内にいる、その可能性に賭けて昇降口へ走り水城さんの靴箱を探し当てるも残っているのは上履き、つまりもう下校している。


「どうすっかなぁ……」


 机に置いていってもいいけど、家で自習するときに無いのに気がつかれたらなんか気まずい。

 いや、置き勉してたんだからその心配は少ないだろうけど、せっかく貸してくれたのにわたしの印象が悪くなる、なにより申し訳ないからちゃんと今日中に返した方がいいよなぁ……


「百合川さん、何してるの?」


 右手に教科書を持ち、左手を下駄箱についてうなだれているわたしに別の中学からここに来て、陽葵と同じクラスの()(れい)ちゃんが話しかけてくれた。


「教科書借りたんだけど、返し忘れた……」

「返しに行くの? 一緒に行く?」


 なんて優しいんだ。だがしかし───


「いやぁ、連絡先も家も知らないんだよね」

「それでそんなに困ってたんだ、ええと誰から借りたの?」

「水城さん、海玲ちゃん連絡先知らない?」

「ああ、水城さんか。同じ小学校だったけどほとんど話したこと無かったし私も連絡先は知らないんだよね」

「そっかぁ……」


 どうする、先生に言っても個人情報管理が厳しいこのご時世で教えてもらえるかどうか……


「でも家なら知ってるかも」

「…かも?」


 歯切れの悪い言い方が引っ掛かる。


「車両基地の南側、小学校の頃に風邪かなんかで休んだ時に届け物した子がそこの大きい門がある家だって言ってたよ」


 スマホを取り出し、地図アプリで衛星写真を出してくれたので見てみると住宅地の外れ、森に囲まれて目の前に田んぼが広がる大きな家を指さしてくれた。


 断定系でないのが不安だけど他の情報も時間も無い、違ったら明日朝一で謝り倒そうと心に決めて学校を飛び出した。


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