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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第3章 夏祭りと三つの響き
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夏祭りと三つの響き 最終話

「じゃあ再生するね」


 おずおずと再生ボタンを押されると、エネルギッシュで疾走感のある曲が流れてくる。

 ギターと、他に多分二つの楽器の見事な掛け合いが調和して聴いていると自然に身体がリズムを刻んでしまっていた。


 二分程度の短い曲だったのですぐに聴き終わったけど、イヤホンの再生ボタンを押してもう一度再生してしまい、また何回でも聴きたかったけどじっと不安そうな顔をしてる叉音ちゃんに申し訳ないから二回に留めておいた。


「ありがとう、なんか……すごかった」


 これ以上の言葉が出てこなかった。


「こちらこそどうも……」


 叉音ちゃんも、多分まともに感想を貰ったのが初めてで、嬉しそうな恥ずかしそうな表情をしていた。


 凄くよかったのは確かだし、もっと聴きたかった。でもそれよりも気になることがある。


「これ、ギター以外の音もしてけど打ち込み?」


 ギター以外二つ、多分両方弦楽器だと思う


「ええと……自分でやってる」

「えっ、ギター以外も弾けるの!?」

「うん、バンジョーとフィドル」


 頭がクラクラしてきた。


 ギターであんな演奏ができるのにそれ以外の楽器が、それもこのレベルでできるってどうなってるんだ、この人?


「なっ、えっ……と、三つも弾けるなんてすごいね」

「響もピアノ弾けるよ?」

「いや、あれは無理やりやらせれてたから……それにもうやってないか今弾けるか結構怪しいし」


 バンジョーとフィドル…バンジョーはこの前調べたから知ってるけど、フィドルってなんだ?


「ええと、フィドルって何?」

「バイオリンだよ」

「バッ、バッ、バイオリン? 叉音ちゃんバイオリン弾けるの!?」

「うん」


 いやそんなサラッと言ってるけど、バイオリンなんか格調高くて難しくてお嬢様が弾いてるイメージしか出てこないんだけど……


「もしかし叉音ちゃんって実はどこかのお屋敷のお嬢様とか?」

「えっと……前に一緒に畑に行ったよね?」


 そういえばそうだった。


「フィドルって言ってたけどバイオリンと何が違うの?」

「カントリー向けに調律してるのもあるみたいだけど基本的には同じ楽器。クラシックで使うのがバイオリンでそれ以外がフィドルって言われて、あとフィドルの場合は高級なのはあんまり使わないね」

「へぇー」


 そんな違いがあるんだ、初めて知った。


「いつ頃からやってるの?」

「バンジョーが中学一年生で、フィドルは小学校五年生の時にバイオリン教室の先生をしてる叔母さんに習って、今でもたまに教えてもらってる」

「凄いなー、弦楽器ならなんでも弾けるんじゃない?」

「ううん、そんなことはないよ」

「いやいや、弦が張ってたら何でも弾ける弦楽器怪獣だよ、弦楽器怪獣コマネン」

「なにそれ」


 叉音ちゃんは優しく微笑んでくれ、その表情にほっとさせられた。


「ねえ、家に戻ったら聴かせてよ」

「バンジョーとフィドル?」

「それとギター! 生で聴きたい!」

「うん、いいよ」

「よし、じゃあわたあめ買って早く帰ろう!」


 わたしが立ち上がり、足の具合を気にしながら足早に歩き出すと、後ろから乾いた小気味よい下駄の音を響かせながら隣に歩み寄ってきてくれ、右手を握られた。

 いきなりだったから驚いて固まってしまい、それに気が付いた叉音ちゃんは───

「あっ、急にごめん」


 謝りながら手を離そうとしたから、その手を追いかけてギュッと握りしめた。

「ううん、このまま一緒に行こっか」

「うん」


 夏休みに入って四週間が経ち、あと一週間と少しを残すところだけど今ほど楽しいことは無かったし、これから演奏を聴いて家に泊めてもらえると思うとワクワクする。


 目に映るもの全てがキラキラして見え、特にその中でも隣で手を繋いで一緒に歩いてくれている叉音ちゃんは一段と輝いていて、たぶん一生忘れることは無いだろう。

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