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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第3章 夏祭りと三つの響き
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夏祭りと三つの響き 第7話

「足、もう大丈夫?」

「うん、もう大丈夫だと思う」

「でも、また歩いたら痛くなるよ、絆創膏貼ろうか?」

「持ってるの?」

「うん」


 手にしていた巾着から絆創膏を取り出してくれたので貰おうとしたのだけど、スッと遠ざけられた。


「私が貼るよ」

「いや、自分でやるよ」

「でも着崩れない?」

「うぅん……」


 確かに、普段着ないからよくわからないけど、ここで足を上げて指の間に絆創膏を貼るなんてやったら浴衣が着崩れてしまうかもしれない。


「ずっと下駄で歩いてたからわたしの足なんか汚いよ」

「……それなら拭いてあげる、足出して」


 と言うと、叉音ちゃんはわたしから遠ざかって座り直した。

 絆創膏は叉音ちゃんが持っているし貼らずに我慢したら心配させそうだし、これはやってもらうしかなさそうだ。


「じゃあ、お願いします」


 渋々足を差し出すと、叉音ちゃんはハンドタオルをミネラルウォーターで濡らして丁寧に、足の指一本一本を丁寧に拭いてくれた。


 正直凄く気持ちよかったけどなんだか凄くいけないことを、それも往来でしている気がしてとんでもなく恥ずかしかった。


「はい、じゃあ次は逆の足」


 そうだ、二本あるんだった……

 



 足を拭いて絆創膏を貼ってもらい、ついでだからと焼きそばも食べた。


 お囃子の音色を乗せて優しく吹く夏の夜風はとても気持ちよくていつまでもこうしていたかった。けれどもそうはいかない、今日のわたしはお祭りを楽しむだけでなく、叉音ちゃんに伝えたいことを一つ秘めてきたのだから。


「……あのね、叉音ちゃん?」

「どうしたの?」

「動画投稿してみない?」

「えっ」

「やり方教えるし、叉音ちゃんが音楽できるのが知られて変なことに巻き込まれたくないならわからないようにして出せばいいから……どうかな?」

「……」


 何も言わず、でも暗い顔をしてうつむいてしまった。


「えっと、あんなにすごい演奏できるのに誰に聞かせないなんて勿体無いと思って、だから動画投稿なら大丈夫じゃ無いかと思って……ええと、その……ごめん」


 わたしはバカだ、こんな顔させたらこの後何しても楽しくならないのに……


「響の気持ちは凄く嬉しい……でも、あの……前にしたことあるの」

「えっ、そうだったの?」

「うん」


 してたんだ。

 でも「前に」と言うことは今はしてないんだよね。


「やめちゃったんだよね、なんでか聞いてもいい?」

「あんまり再生されなかったし、それと……変な人が出てきたし」

「ああ、そっか……」


 再生されないとモチベーションが続かないし、そこにそんな人が出てきてやる気を無くしてしまっても仕方ない。

 確かにわたしにもそんな時期はあって、それを乗り越えて今があるけどそれを無理強いはできない。


 みんなに叉音ちゃんの演奏を聴いてほしいと言うのは簡単に言えばわたしのわがままで、叉音ちゃんが現状に満足しているならそれでいいじゃないか。


「ごめんね、無理言っちゃって」

「ううん、響がそんなふうに思っててくれて嬉しい、ありがとう」

「ならよかった、あはは……」


 お礼の言葉に愛想笑いで返したけど、やっぱり気まずくて、言わなきゃよかったと後悔していた。

 そんなわたしの心情を叉音ちゃんは見抜いてくれていた。


「……聴く?」

「えっ、何を?」

「わたしの動画、録音はスマホに入れてるから」

「聴く聴く、聴かせて!」


 ちょっと恥ずかしそうにしている叉音ちゃんのスマホにわたしの有線イヤホンを刺して、グッと親指を突き出して『準備OK』の合図を送る。

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