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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第1章 ブルーグラス・ブルーム
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ブルーグラス・ブルーム 第3話

 慌てて借りた割に数学の授業は暇で、教科書に何か書き込みでもないかとめくってみても真っさらでそんなものは無かった。


 第一印象の雰囲気で”真面目そう”と思ってしまったけど、置き勉してるくらいだから勉強も大して真面目にやっていないのかと考えたところで、ふと『水城』の苗字はついさっき知ったけど名前を知らないことに気が付き、どこかに書いていないかと探すことにした。


 数学の教科書に名前の欄は無いけど、入学直後の担任には持ち物にちゃんと記名するよう口を酸っぱくしながら言われ、チェックもされたからわたしは裏表紙にサインペンで書き込んだ。

 しかし、水城さんの教科書には表紙背表紙裏表紙いずれにも書かれておらず、最初と最後のページにもそんなものはない。


 調べられたはずなのにどうやってすり抜けたのかと言う疑問は持ったけど、同時にそんなこと考えても仕方ないかと考え直し、今授業している所を再び開こうとしたところでページ一番上の裁断面の数箇所に黒いシミのようなものが付いているのに気が付いた。

それもそこだけではなく隣のページにもその前後にも同じ箇所に付いている。


 なんだこれは?と不思議に思っていると、これはシミでは無く何かが書かれている断片だと気が付いた。


 そこで教科書の頭頂部を見ながら閉じてみると、裁断面のシミが重なり合ってハンコで押された『水城叉音』の記名が現れた。


「こんなところに…」


 ようやく名前がわかったのだけれど、ここで新たな疑問が生まれる。


 苗字の『水城』はさっき聞いたから読めるけど名前の『叉音』が読めない。

 このまま読めば『マタネ』であり、万一がそうだったらもの凄く失礼だけどそんな変な名前とは思えない。


 授業そっちのけで考察を巡らせても結論は出ない、でもこれが終われば昼休みなんだから返すついでに本人に聞けばいいかと気楽に構えて授業をこなすことにした。




 昼休み、答え合わせのためにも急いで水城さんのクラスに行ったのだけど、空席で本人はいなかった。


 机の場所は分かるから教科書を返すだけならお礼の言葉を書いた付箋でも貼って置いてきてもよかったけれど、それでは名前の読みが分からないからどうにか居場所を探り出したい。


「水城さんなんだけど、どこにいるか知らない?」


 お昼ご飯が入っているのであろう黄色い花柄の巾着を持って教室に入ろうとしている陽葵に聞いてみるも───


「知らない、そういえばどこ行ってるんだろうね?」


 空振り、ならせめて名前の読みでも聞いておこう、分かれば心おきなく教科書を置いていける。


「ねえ、水城さんの名前ってなんていうの?」

「それなら教科書に書いてあるでしょ」

「書いてあるけどなんて読むのか分からないの」


 面倒くさそうな表情を浮かべている顔に教科書の頭頂部を突きつけてやる。


「えっとこれは、マタ…ネ?」

「って読めるけど多分違うでしょ」

「だよねぇ」


 少しその辺を探してみたけど本人は見つからず、結局教科書も返しそびれてしまった。


 でもまだ昼休みなんだし「後で返せばいいか」と呑気に考え、お昼ご飯を食べることにした。


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