夏祭りと三つの響き 第5話
想像と違った型抜きはもう十二分に味わったから次は何をしようかと辺りを見回してみるけど、たこ焼きやらチョコバナナやらベビーカステラやらと魅力的な屋台ばかりで悩んでしまった。ただそれよりも───
「結構暑いね」
「そうだね」
人の多さと見た目とは違って大して涼しくない浴衣のせいで額に汗がにじみ、体に張り付いて気持ち悪く感じてきた。
「のども渇いてきたし、かき氷食べない?」
「食べる、入り口のところにあったよね」
二人してカラカラと下駄の音をさせながら来た道を戻ってかき氷屋さんを見つけたけど、人が並んでいて少し時間がかかりそうだった。
「他にもありそうだけど、探すのも面倒だしここでいいよね?」
「うん」
「わたしはメロンにしようかな、叉音ちゃんは何味にする?」
「桃」
「桃なんかあるんだ」
そんなかき氷まであるのかと、店先に掛かったメニュー表を見てみるとマンゴーにコーラとあまり見たことがない味が書き込まれていた。
と、ここでこっちを向いた叉音ちゃんの視線、というか背がいつもよりも頭半個分くらい高いのに気がついた。
「なんか、叉音ちゃん背伸びた?」
「ほら、今日は下駄だから」
そう言って片足を軽く上げて見せてくれた下駄はわたしが履いている歯の無い平べったいのではなく、二本歯の下駄らしい下駄だった。
「わっ、本当に下駄だ」
なぜか今日は襟足がよく見えると思っていたけどこのせいだったのか。
「響も履いてる」
「まあそうなんだけど、ちゃんとした下駄だからびっくりした」
それに下駄なんか七五三以来だから、たどたどしく歩いているわたしと違って履き慣れている様子だからなんだかうらやましかった。
そんなやりとりをしている間にわたしたちの順番になっていて、さっき話した通りメロンと桃を頼んで公園からちょっと離れた駐車場の段差に腰掛けた。
「人多いねー」
「お祭りだからしかたないね」
「でもこんな集まる? ここ結構田舎だよね」
「そうだけど、なんかお祭りの時はいっぱい来るんだよね」
そんなに楽しいのかな、このお祭り?
いやまあ、こうして来ているわたしが言うのもなんだけど。
叉音ちゃんは暑いのかのどが渇いていたのか、シャクシャクとかき氷を食べ進めていたけど、急に頭を押さえてうずくまってしまった。
「あー、頭痛くなったんだ」
「うん……急いで食べ過ぎた」
「それ、わたしならないんだよね、本当にそんなに痛いの?」
「え、そんな人いるんだ」
「うん、だから昔はみんなかっこつけて痛いフリしてるんだと思ってた」
「なにそれ」
でも、今は本当に痛くなるものだと理解はしているから、少しでも良くなればと苦笑いする叉音ちゃんの背中をさすってあげた。
「そうだそうだ、これやっておかないと」
と、頭の痛みが治まった叉音ちゃんに向かってベッと舌を出して見せる。
「あっ、緑」
「メロンだからね」
せっかくかき氷を食べたんだからやっておこう。
「……んっ」
そんな私に感化された叉音ちゃんも恥ずかしそうに舌を見せてくれた。だけど───
「うーん、桃はピンクだからあんまり変わらないね」
「そっか……」
「そんな残念そうにしないでよ」
肩をポンポンと叩くと今度は嬉しそう微笑んでくれて、二人でお祭りを楽しんでいるのがますます実感できた気がした。
「次は何しよっか、食べるにはまだ早いから射的とかあったらやりたいね」
「そうだね、探そっか」




