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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第2章 音叉と響き
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音叉と響き 第9話

「それね、べっ甲なんだ」

「……飴?」

「ベッコウ飴じゃなくて”(べつ)(こう)”ウミガメの甲羅」


 と、言われてもピンとこないのでまたスマホで調べてみると、べっ甲はウミガメの甲羅を加工した物で宝石の一種でもあるらしい。


「えっ、宝石なの!? もしかして高いの?」

「元々ひいおじいちゃんのだから値段は知らないけど高いかも」


 ひえぇ、宝石なんか親戚のお葬式でお母さんに借りた真珠の数珠くらいしか使ったことないよ、怖いから早く返そう。


「ありがとう、落としたりしたら怖いから返すね」

「うん」


 受け取ったメガネを掛けた叉音ちゃんは少し自慢げな表情だった。


「ピックもべっ甲なんだけど気が付かなかった?」

「そうだったんだ」


 全然見てなかった…


「じゃあべっ甲が好きなんだね」

「うん、色と触り心地が良くて好き」


 学校ではピアスとかのアクセサリーを持っていくのは当然禁止でこっそり付けていってる子はいるけど、そんな中で堂々と宝石を身につけていってるのはちょっとうらやましい気がした。


 その後も学校のことだったり、わたしが好きな音楽の話だったりをしていたらあっという間に迎えの時間になって家の車に乗ってに帰ったのだけど、帰り際に叉音ちゃんのおじいちゃんとおばあちゃんに「手伝ったお礼」と言われてお米と野菜を渡されてしまった。

 明日また何か持っていかなきゃいけないのかな……




 そんな不安はあったけど、明日は一日遊べるのと部屋を見せてもらえることが嬉しくて、家に着いてからはワクワクしながら次に投稿する曲の練習をしていた。


 そうして二時間くらいが経った頃にヘッドホン越しに何か自分が弾いているのとは別の音が聞こえているような気がし、手を止めると思った通りスマホが鳴っていたので画面を見ると叉音ちゃんからの着信で慌てて出た。


〈あっ、出た〉

「ごめん、もしかしてずっと掛けてた?」

〈大丈夫だよ〉


  って事はやっぱりずっと掛けてくれてたんだ……


〈ごめん、明日なんだけど親戚が来ることになったから無理になっちゃった…〉

「ああ、そうなんだ……」


 まあ家の事情なら仕方ない、けどちょっとショックだな。


〈あっでも、私が家に居なきゃいけないわけじゃないから響の家に行く?〉

「あー、そうね……」


 スマホを耳に当てたまま辺りを見回す。


 ───叉音ちゃんがここに来る?


 ゴチャゴチャと勉強とメイク道具が置かれた勉強机とハンガーラックからぶら下がる春先に着たパーカーにコート、床には脱いだ服やら雑誌やらぬいぐるみが転がっているのに混じって音楽機材が置かれていて、しいて『片付いている』と言えるのは物が置いてあると落ち着いて寝れないから枕と布団しか無いベッドくらいのこの部屋に?


「ええと…ウチよりモールに行かない、楽器屋も入ってるし見に行きたいんだよね」


 この汚部屋に叉音ちゃんを呼ぶわけにはいかないし、今から片付けられる気もしない。


〈いいよ。時間、一時でもいい?〉

「うんオッケーオッケー、じゃあ一時に地下のたこ焼き屋の前で待ち合わせで」


 本当は叉音ちゃんの部屋をもっと見せてもらって遊びたかったけれど、二人で外に出かけるの初めてだしこれはこれで楽しそうだった。

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