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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第2章 音叉と響き
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音叉と響き 第3話

「おっと、お昼食べるんだった」


 叉音ちゃんと音楽の話ができて満足していたら急に空腹感を感じてお昼ご飯の事を思い出し、膝の上にお弁当を置いて広げた。


 だがしかし、大きさの割に妙に軽いお弁当箱に不吉な予感を抱き、恐る恐る開けると中身はサンドイッチとさくらんぼと玉子焼き、サンドイッチが玉子サンドだから玉子と玉子が被ってる。


 玉子サンドは割と好きだからいつもの自分なら喜んでいたのだろうし、現に昨日の自分はそれなりに喜んでいたけど二日連続でほぼ同じ内容、しかも昨日は唐揚げだったおかずが玉子被りにされているせいでテンションが下がる。


「おいしそうだね」

「はは…おいしかったんだけどね、昨日も玉子サンドだったから……まぁあんまり嬉しくないよね」


 原因はお父さんが知り合いから大量の玉子を貰ってきたからだ。


 最初のうちはわたしも喜んでいたけど、朝昼晩に食えども食えども減らないからこの前までゆで玉子とかスクランブルエッグがお弁当箱の端にいるだけだったのが、気がつけばこうして主食になっている。


 ここまで付きまとってきた玉子地獄に頭を抱えている隣で叉音ちゃんがお弁当箱を開けたので『さあ、中身はなんだろう』と覗き込んでみると、ごま塩が振られた俵型のおにぎり四つとフキとレンコン、ニンジンに里芋の煮物、きんぴらゴボウとかまぼこが入った渋いというか質素で「おべんとうばこのうた」で作ったお弁当みたいだった。


 そんなことを思っていたのが顔に出ていたようで───


「おばあちゃんがおじいちゃんのお弁当と一緒に作るといつもこうなるの」


 と、説明させてしまった。


「おいしそうだよ!」


 ここ最近の玉子尽くしに飽きていたし、煮物のレンコンと里芋は好きだから本当においしそうだと思った。

 でも、叉音ちゃんが気まずそうな顔をしていて、それをどうにかしようと焦って前のめりで言ったから余計に説得力が無くなった気がした。


 マズった。どうしよう、なんとかしないと……


「そうだ! お弁当交換する?」


 飽きている玉子の弁当を押し付け…いや、食べずに叉音ちゃんのお弁当をおいしそうと言ったのもちゃんと証明できる、一石二鳥だ。


「えっ……」


 しかし、叉音ちゃんはびっくり顔で、箸箱を半分開けたまま固まってしまっていた。


 あっ、やばい…調子に乗りすぎた。


「本当にいいの?」

「うん、わたしレンコンと里芋の煮物好きだから交換しよ」

「……わかった、いいよ」


 そうは言ってくれたものの、まだ(いぶか)しんでいる叉音ちゃんとお弁当を交換して、箸をつける。


 煮物の煮加減はちょうど良くて味もしっかり染みていて美味しい、でもそれよりもきんぴらゴボウの美味しさに驚いた。

 特別好きじゃなかったから、家でたまに出て来た時もあまり食べようとは思わなかったけど、これは箸とごはんが進む。


「このきんぴらおいしいね」

「響の家のサンドイッチもおいしいよ、玉子焼き甘いんだね」

「あー、ウチは甘いんだよね。叉音ちゃん家のはしょっぱいの?」

「ううん、うちも甘い」


 ほんのちょっと、わずかに口角が上がった楽しそうな表情で、そんな顔を向けてくれるのがすごく嬉しかった。

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