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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第2章 音叉と響き
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音叉と響き 第2話

 ニヤケ面を海玲ちゃんに怪しまれながらも適当に誤魔化してやり過ごし、授業中も『友達第一号』を噛み締めて密かに喜んでいたのだけれど、よく考えると昨日は「友達になりたい」って言ったんだからまだ友達じゃないような気がしてきた。


 まあ「友達になりたい」と言ったのが昨日の今日なんだしこれから仲良くなればいいけれど、何を取っ掛かりをすればいいのか。


 そもそも別のクラスで昨日まで顔も知らなかったくらい接点がなかった訳で、二人でいるとき以外は学校でギター及び音楽の話が出来ないいうことだと、授業の間に顔を合わせた時にどんな会話をすればいいのか考えておかないといけない。




 こうしてどうやって親睦を深めようかと考えていたせいで常日頃から真面目に受けているわけではない授業がますます身が入らず、気がついたらお昼休みになっていた。


 いつもは適当なグループに混ざって一緒にお昼ごはんを食べていて、今日はどうしたものかとロッカーからお弁当を出していたら横を叉音ちゃんが通り過ぎて行った。


 もしかしたらふたりきりになれるかもしれないと思い慌ててついて行くと、叉音ちゃんは上り階段の前に置かれたベルトポールを避けて上がっていった。


 我が高校では一年生の教室が三階で学年が上がると教室の階層は下がっていく。

 なので三階建て校舎のこの階段を上れば本来は屋上に出られるのだけれど、漫画やアニメの学校とは違って扉は施錠されていて生徒が入ることはできないし、だからこうしてのポールが置かれている。


 その行き止まりの階段を上って踊り場を曲がると、屋上への扉の前の階段に叉音ちゃんがちょこんと座っていた。


「お昼、いっしょに食べてもいい?」

「いいよ」


 そう言ってイヤホンを外し、隣を開けてくれる様子を見ているとふと、どんな曲を聴いているのかが気になった。


 昨日は「カントリーとブルーグラスとアメリカ民謡」と教えてくれたけど具体的なイメージがパッと出てこない。


「ねぇ、叉音ちゃんって普段どんな曲聴いてるの?」


 わたしの質問で『なんて答えよう?』と悩ませてしまったようで、両目の視線を虚空に漂わせてしまった。


「……聴いてみる?」


 しばらく沈黙の時間が続いて、ふと思いついたようにハンカチでイヤホンを拭いてから差し出してくれた。


「私がいつも使ってるのだから汚れてたらゴメン」

「いやいや、気にしないよ」


 借りたイヤホンを耳に嵌めると叉音ちゃんが曲戻しをしてくれる。


「じゃあ流すね」


 再生をすると明るく軽快でリズミカルな弦楽器の音色が流れてきた。


 ボーカルは英語でわたしの語学力では歌詞の内容はほとんど分からないけれど、とにかくノリが良くて普段はこの手の曲を全然聴かないわたしでも聞き心地が良かった。


 二分くらいの短めの曲だったからあっという間に終わってしまい「ありがとう」と言いながら叉音ちゃんにイヤホンを返すと心配そうな目線と目が合う。


「カントリーとか全然聴かないけど良かったよ。なんて曲なの?」

「『グッド・オールド・マウンテン・デュー』(*注1)って曲、カントリーというか民謡みたいな曲だよ」


 ほっとした表情で教えてくれたけど、まったく聞き覚えが無いから今言ってくれたのに曲名を覚えられなかった。


「グッド……」

「オールドマウンテンデュー、密造ウィスキーの曲なんだって」

「密造ってまたすごい曲だね。マウンテンデューっていうからてっきりジュースのことかと思ったよ」

「そもそもその『マウンテンデュー』も密造ウィスキーから来てるんだって」


 へぇそうなんだ、知らなかった。


「そういえばこの曲で使ってるのってギターじゃないよね?」


 ギターではないのはたしかだけど弦楽器で、なんとなく音色に聞き覚えがある。


「うん、バンジョーだよ」

「ばんじょー…」


 ばんじょー、バンジョー……名前に心当たりはあるけど、どんな楽器だったか思い出せない。

 このまま思い出そうと頭を唸っていいるよりも早いだろうから自分のスマホで検索すると、丸い胴に長いネックの姿が出てきた。


 そうそう、これだ。


「こういう曲も配信ってされてるの?」

「されてるのもあるし無かったらCDを買って、それも無かったらレコード探したりしてる」

「レコードかぁ…」


 わたしもたまにCDは買うけどレコードはないなぁ。

 レコード聴くのってなんとなくかっこいいイメージがあるから欲しいとは思ってるけど、プレイヤーも揃えなきゃいけないから買えてないんだよなぁ。



(*注1)グッド・オールド・マウンテン・デュー(Good Old Mountain Dew

)叉音が聴いていたのはStringbeanによる1935年版のカバー

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