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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第2章 音叉と響き
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音叉と響き 第1話

 久々に雨があがったけど、地面はまだ濡れていて空も曇っている。

 でも、わたしの心の中は晴れ晴れとしていて、文化祭か修学旅行の前を除けばこんなに学校に行くのが楽しみなのはもしかすると生まれて始めてかもしれない。

 その原因はもちろん新しい友だちが出来たこと、しかもその子はギターが滅茶苦茶上手い。


 高校では音楽の話が出来る友達がいなかったから「こりゃ楽しくなるぞ」と一人浮かれていた。


 そのせいでやたら早く目が覚めてしまい、こんな早朝に学校に向かっている。

 六月に入るともう衣替えの季節なのでちらほらと夏服を着て来ている生徒もいて、わたしもなぜか二種類あるセーラーブラウスと半袖シャツの夏服の内のセーラーブラウスを着てみたかったけど、朝方の肌寒さにくじけて今日もブレザーを着てきた。




 学校に着いてみれば外履きが入った下駄箱は一桁で、まだほとんどの生徒が登校していないのが伺えた。


 もしかするとクラス一番乗りかもしれないなと、無意味な期待をしながら教室に向かい、ふと隣の教室に目をやると夏服のブラウスとニットベストを身につけた叉音ちゃんがぽつんとひとりぼっちで自分の席に座り、イヤホンを耳に挿して教科書を開きノートに何か書き込んでいた。


 予習なのか宿題なのか分からないけど勉強をしている雰囲気なので、話しかけるべきかどうか悩みながら観察していると向こうも気が付き、両耳からイヤホンを外しながらトコトコとこちらに近づいてきてくれた。


(ひびく)、おはよう」

(こま)()ちゃんおはよう、早いね」

「わたしはいつもこのくらいの時間」

「いっ、いつもなの?」

「うん」


 部活の朝練してる人はもう来てるけど、部活はやってないんでしょ?

 なんでこんなに早いの?


「それと昨日、言い忘れてたことがあったから待ってた」

「そうなんだ、何?」

「学校ではわたしが音楽できることは黙ってて」

「えっ、ギターの事?」

「二人の秘密」


 その理由を聞きくべきか聞かないべきか迷っていると、言い終えた叉音ちゃんはスルッと自分の教室に戻ってしまい、タイミングを失ったのと「二人の秘密」の甘美な響きのせいでこの時は追いかけて聞き出そうとは思えなかった。




 ただ、時間が経つとお願いされた以上は秘密は守りたいけれど、学校で音楽の話が出来ないのは残念に思えてきて悶々とした気分になると同時に、甘美な響きの後ろの”秘密にしなければいけない理由”が気になってきた。


 普通に考えれば恥ずかしいからなんだろうし、ギター始めたての頃の自分にも覚えがある。でも、昨日聞いたアレは恥ずかしがるような腕前ではないからそれが理由とも思えない。



 自分の頭で考えたところで答えが出るはずも無く、朝のホームルームまで暇を持て余してしまい廊下のベンチに座ってスマホを弄りながら登校してくるクラスメイト達の様子を眺めていると()(れい)ちゃんと目が合い、小走りで駆け寄って来た。


「おはよー、昨日はあの後大丈夫だった?」

「おはよ、なんとか返せたよ」


 なんとか返して、その後で紆余曲折あったんだけどね。


「水城さんの家ってどんな感じだった?」

「あー、凄くおっきかったよ。玄関にクマの剥製なんか置いてあったし」

「じゃあ部屋ってどんな感じだった?」


 部屋?

 そういえば納屋には入ったけど、家は部屋どころか外から玄関先を覗いただけで終わったんだった。


「いやー、玄関までしか入らなかったや」

「そうなんだ、水城さんって友達いないみたいだし話したことある人もいないから気になってたんだ」

「友達いないの?」

「たぶん? 小学校だと家に行ったり遊んだりしたことあるって人いなかったから」


 それが本当ならわたしが叉音ちゃんの友達第一号ということになる。


 あっ、なんか凄く嬉しい。

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