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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第1章 ブルーグラス・ブルーム
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ブルーグラス・ブルーム 第1話

()()(かわ)(ひびく)はアニメの影響でギターを始めて弾き語り動画の投稿をしている女子高生であり、無名に毛が生えた程度の知名度と再生数ではあるものの趣味と割り切り、それなりに充実した毎日を送っていた。


そんなある日、教科書を忘れた響は話したことも無い小柄で地味な隣のクラスの女子生徒、(みず)(しろ)から教科書を借りたものの放課後に返し忘れている事に気が付く。


教科書を返すために水城の自宅へ向かった響は、納屋の中から似つかわしくないエレキギターの音を聞き、思わず覗き見をするとそこにはあの人畜無害そうな水城がギターをかき鳴らす姿があった。

 わたし、()()(かわ)(ひびく)が小学三年生に上がった春、我が家に一台のピアノがやってきた。


 このピアノは親戚の物で、仕事の都合でしばらく海外に引っ越すので、その間我が家で預かることになったのだけど「いい機会だから」と考えた両親のせいで対して興味も持っていなかったのにピアノ教室に通わされることになった。


 思えばあれが音楽にまともに触れた最初のきっかけだった。


 おかげでサッカーをやらされていた兄と違って夕方までドロドロになって練習したり山の中で合宿させられることもなく、楽譜が読めたおかげで鍵盤ハーモニカもリコーダーもすんなり演奏できて合唱コンクールではいつも演奏担当だったりと役得なことも多かった。


 そんなピアノは小六の夏休みに親戚が帰国したので返したけど、習い事優先で友達と遊べず好きなことができない事にいいかげん嫌気が差していたわたしは「ピアノがないのにこれ以上続ける理由が無い」で押し切って教室をやめた。



 そんなピアノは小六の夏休みに親戚が帰国したので返し、習い事優先で友達と遊べず好きなことができない事にいいかげん嫌気が差していたわたしは「ピアノがないのにこれ以上続ける理由が無い」で押し切って教室をやめた。




 なので中学では帰宅部として悠々自適に過ごしたかったのだけど、強迫観念気味に「子供に習わせごとをさせなければ」と考えていた両親は入学と同時に「何でもいいから部活か習い事をやれ」とせっつき始め、同じ音楽の吹奏楽部は論外だけど兄を見ていたから拘束のキツい運動部に入る気は起きず、かと言って活動内容のよくわからない文系部に入るのも気が引ける。


 そんな中で迎えたゴールデンウィーク、同じ小学校から上がってきた友人にテレビアニメの劇場版を観に行こうと誘われ、わたしは見たことが無かったけれど何の考えないしに了解して見に行った。


 内容はバンド物でテレビアニメの劇場版だから全ての内容を理解できているわけでは無かったけど楽しめたし、何となく「ギターってカッコいいな」と憧れの気持ちのような物が芽生え、気が付けばテレビ版を見て原作の漫画も買っていた。


 そしてここまでくると自分でギターを弾いてみたいと思うようになっていた。


 音楽経験はあったし、親には何かやれと矢の催促をされていたからこれ幸いと頼み込むことにして、だけれど習いごとはピアノで懲りていたから教室に通うのではなく家で自己流でやると言ったせいで渋られた。

 だけど最後は向こうが折れて「そんなにやりたいならいいだろう」と了承してもらえ、教本や動画を見ながら練習してそれなりに弾けるようになり、中二の文化祭では知り合いに誘われてライブもやった。


 特に文化祭は聞き手の反応が見れたのと、この時初めてやったボーカルが楽しかったからそれ以降は動画サイトに「HIBIKI Guitar」と名付けた自分の動画チャンネルに演奏を投稿するようになり、中二の冬から始めて高校一年生の現在では平均再生数は200回前後、一度だけ900回を超えたことがあって、毎回コメントを残してくれる人も数人いる状況になっていた。

 ちなみにチャンネル名は三日三晩悩んだ挙げ句何も思い浮かばず、自分の名前をもじる……というかみんな間違えて呼ぶから諦めて受け入れたあだ名の「ヒビキ」をそのまま付けた。


 無名に毛が生えた程度の人気だけれど、別にプロになりたいわけでもこれでバズって収益を得られるとも考えていないただの趣味の延長で、自分の活動を知っている友達には素直に応援してもらっているし、年より大人っぽく見られがちな高めの身長も手伝って「ギターが似合う」と言ってもらえるこの現状には満足していた。




「やっば、教科書忘れた……」


 雨が連日降り続け、宣言前だけどとっくに梅雨に入っているだろうと心の中でツッコミを入れていた六月の頭、数学の教科書がカバンに入っていない現実に直面して頭を抱えていた。


 こういう場合は隣の席のクラスメイトに頼んで机をくっつけて見せてもらうもので、そんなことをしている姿は何度か見たけど、自分の席は廊下側の端で見せてもらえる対象が左手の男子一人に限られる。そしてその一人がいつも何かをやらかして先生に怒られている良く言えば学年屈指のお調子者、悪く言えばクラス一のバカで正直苦手だったからそうしたくは無かった。

 なので、隣のクラスの知り合いの誰かに借りようと懸命な判断をすることにしたのだけど───


「えー、今日数学無いから持ってきて無いよ」


 このセリフを二人連続で言われて心も首もガックリと折れてうなだれた。

 三人目、高校からの付き合いだけど明るくて人懐っこい性格のおかげでやたらと話しやすい()(まり)がトイレから出てきた所を捕まえ、これでダメならもう諦めるしか無いかと腹を括っていたけど───


「えー持ってきて無いよ、ヒビキ置き勉してないの?」

「……してないから困ってるんだって」


 どうしよう……こうなったらお金は掛かるけどクラスの誰かにコピー機でコピーさせてもらうしかないか?


「あー、でもミズシロさんなら持ってきてるかも」

「ミズシロサン?」


 知らない名前だ。


「”お水”の”お城”で(みず)(しろ)、ちっちゃくてメガネでおとなしそうな子。話したことは無いけど、前に教科書みんなロッカーに入ってるが見えたから置き勉してるんじゃない?」


 それなら助かる。ただ、入学してまだ二ヶ月とは言え同じ中学から進学した同級生が多くて知らない同学年の方が目につし、体育だったり音楽だったりクラスでの合同授業も何度もやったのにその水城サンには名前、容姿共に全く覚えが無かった。


 両目に疑問符が浮かんでだまま手を牽引されて陽葵の教室に入ると、窓際から二列目最前席まで連れて行かれた。

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