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第41章 動作訓練(メイド編③) 2週目―― 止まらずに、向きを変える

■木曜日(訓練7日目)


診療所の一室で、エルザは歩行器の前に立っていた。

両手で把持し、姿勢は安定している。

今日は、桜が動作訓練に立ち会っていた。

横にはマルタと介護人がいる。


「今日は、少しだけ確認の仕方を変えますね」


桜は、距離や回数には触れなかった。


「歩いている途中で、声をかけます。

その時に、止まらずに向きを変えてみましょう」


方向転換自体は、これまでも行ってきた。

だが今日は、合図に反応して行う。


マルタが、小さく頷く。


「無理そうなら、すぐ止めます」


一歩。

二歩。


「……今です」


声に反応して、エルザはわずかに体をひねった。

歩行器の向きが、一瞬だけ遅れる。

だが、体は流れなかった。

介護人が支えに入る前に、女性自身が動きを整える。


「はい。今の動きです」


桜は、そこで一度止めた。


「今日は、ここまででいいです」


繰り返さない。

成功した感覚を、そのまま残す。


「今の動き、覚えていますか?」


「……はい」


答えは、はっきりしていた。


この日の訓練は、それだけで終えた。


金曜日と土曜日は、同じ内容が続けられた。

金曜日は、マルタとエミール。

土曜日は、ロッテと介護人。

ただ、同じ動きを繰り返す。

介助量は、少しずつ減っていた。


――――――――――


■月曜日(訓練11日目)


午前の訓練後、桜とマルタはクラウスのもとへ向かう。


「歩行器使用での方向転換は、安定しています」


マルタが、簡潔に報告する。


「止まる回数も減りました。

恐怖で動きが固まる場面は、ほとんどありません」


桜が続けた。


「距離を、もうそろそろ、伸ばしてもよいかと思います。

大丈夫そうであれば、次の段階として、

杖歩行への移行を検討してもいい時期かもしれません」


クラウスは短く頷き、許可を出した。


「あぁ、それで問題ないと思うよ」


――――――――――


■火曜日(訓練12日目)


この日の訓練は、桜が介護人とともに行う。

内容は、これまでと同じ。

歩行器を使った歩行と、途中での方向転換。

そして、歩行距離を伸ばす。


「今日は、少しだけ距離を伸ばしてみましょう」


そう言ってから、桜は続けた。


「そのまま、階段の手前まで行きましょう」


歩行器を押して、階段の前まで進み、また、ベッドへと戻る。


「だいぶ、歩行が安定してきているので、木曜日から杖歩行を試してみましょう」


「大丈夫でしょうか?」


エルザが不安そうに、桜を見つめる。


「大丈夫ですよ。歩行も安定していますし、もちろん無理はしませんから」


桜の言葉に、女性はゆっくりと息を吐いた。


「……頑張らないとですね」


その返事は、逃げるものではなかった。


――――――――――


■水曜日(訓練13日目)


この日は、エミールと介護人が対応に入った。

火曜日と同じ内容を、そのまま繰り返す。


歩行器での立位は安定し、階段の手前まで問題なく歩行できた。

方向転換も、止まらずに行えていた。

介助は、ほとんど必要ない。



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