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幕間 水面下 ゼフィーリア側② ――外務大臣同士の会議――

三国の重臣が集まる場所は、

地図にも記されない、目立たない建物だった。


場所は、ゼフィーリア国内。

大国に異変の兆しが見え始めてから、

この場所は、三国の外務を預かる者たちにとって、

頻繁に使われるようになっていた。


室内の魔法陣が、静かに光る。

順に、人影が現れる。


ゼフィーリア王国の外務大臣、アルト・ヴァルハルト。

ルメリア公国の外務大臣。落ち着いた佇まいの、六十代ほどの女性。

カスティア王国の外務大臣。無駄のない動きをする、五十代ほどの男性。


扉の外には、それぞれの国から同行した護衛騎士が立つ。

誰一人、会議室には入らない。


この場で交わされる話を、

聞いていい立場の人間はいなかった。


扉が閉まった瞬間、

空気がわずかに変わる。


クロトの魔力による結界が、室内を覆った。

音も、気配も、外には漏れない。


「では、現状の確認から始めましょう」


アルトが、淡々と口を開く。


「各国とも、すでに人は出していますね」


それは、責めでも命令でもなかった。

事実の確認にすぎない。


ルメリアの外務大臣が、静かに頷く。


「ええ。

ただし、深くは踏み込んでいません」


「こちらも同様です」


カスティアの外務大臣が続ける。


「表向きは、通常の情報収集の範囲内に留めています」


三国とも、密偵を動かしている。

この情勢下では、それ自体は特別なことではなかった。


ただし――。


「ゼフィーリアは、

他国より一歩、踏み込んでいます」


アルトが、先にそう告げた。


「危険度の高い確認作業は、

こちらで引き受けています」


一瞬、言葉が途切れた。


それが何を意味するのか、

この場にいる全員が理解していた。


「報告は受けています」


ルメリアの外務大臣が、静かに応じる。


カスティアの外務大臣も、小さく頷いた。


ゼフィーリアの騎士団が担っている役割の重さ。

その戦力差と、踏み込める範囲の違い。


誰も、口に出しては言わない。


これから先、

大国が立て直されるとしたら、

中心に立つことになる人物が、生きているかどうか。


その存在を確かめること。

そして、確かめた事実を、

不用意に外へ漏らさないこと。


「表では、何も知らない」


カスティアの外務大臣が、指を組む。


「それが、我々の立場です」


「ええ」


アルトが頷く。


「誰かを表で守るつもりはありません」


「動かすのは、本人です」


――アレクシオス。


その名は、口には出されない。

だが、誰もが同じ人物を思い浮かべていた。


「我々がするのは、少しだけです」


ルメリアの外務大臣が、淡々と言う。


「余計な情報を流さない」

「逃げ道を塞がない」

「人が消えないように、目を逸らさない」


具体的な手順や日程が、

この場で決められることはなかった。


ここで揃えられたのは、

それぞれの国が、どこまで関与し、

どこから踏み込まないか――

その線引きだけだ。


ここにいるのは、

ただ、

最悪を、ほんの少しだけ遅らせたい者たちだった。


「では」


アルトが立ち上がる。


「この件については、これまで通り」


――深く関与しない。

――だが、手助けはする。


それだけが、共有された。


扉が開き、

待機していた騎士たちが、無言で動き出す。


魔法陣が再び光り、

外務大臣たちは、それぞれの国へ戻っていった。


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