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第28章 動作訓練(庭師編③)

一週間が過ぎた。

タンバは木製の歩行器を使い、

病室の外まで移動できるようになった。

歩く、というより、

体重を移す練習に近い。

左脚は、遅れてついてくる。

常に意識が必要だった。

二週目に入ると、

歩行距離は少しずつ伸びた。

――そして、停滞した。

進まない日が続く。

腰の痛みが、夜に残った。

翌朝。

日勤の看護師は、迷わず負荷を落とした。

「今日は、戻します」

タンバが苛立つ。

「せっかくやったのに」

桜は、短く答えた。

「今日は、我慢の日です」

「無理をしない日ですね」

三日後。

痛みは落ち着き、

歩行距離は元に戻った。

停滞は、失敗ではなかった。


________________________________________

三週目に入ると

タンバは、

杖を使わず、短距離を歩けるようになっていた。

歩幅は小さい。

足取りは、まだぎこちない。

だが、転倒の危険は高くない。


________________________________________

退院前カンファレンス。

桜は、医師が作成した指示書に基づき、

看護師と介護人に向けて、

事実だけを並べた。

「杖なし歩行は可能」

「歩容はまだ不安定」

「軽作業のみ許可」

「重作業、脚立、不整地は不可となります」

必要な確認が終わり、

カンファレンスは短く締められた。


________________________________________

人がはけたあと、

桜は、タンバのもとへ向かった。

タンバは、

もう少し良くなるかもしれないという思いを抱えたまま、

悔しそうに黙っていた。

だが、三週間前のような絶望はなかった。

「家でも、動作訓練は続けてください」

桜は、淡々と続ける。

「毎日でなくていいです」

「でも、やめないでください」

「立ち仕事は、短時間から」

「無理をした日は、必ず休む」

「痛みやしびれが強くなったら、その日は止めてくださいね」

タンバは、少し考えるようにしてから、口を開いた。

「……まだ、良くなりますか」

桜は、すぐには答えなかった。

「言い切ることはできません」

「でも」

「続ければ、今より動く可能性は残りますから」


退院は決まった。

歩きは、まだぎこちない。

それでも、杖はいらない。

回復期は、

ここで終わりではない。

“続ける”という選択だけが、

次の回復をつくっていく。


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