表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/33

第24章 外務大臣の独白

 外務大臣アルト・ヴァルハルトは、

 机の上に置かれた数通の書簡を、黙って見下ろしていた。

 いずれも、表には出ないやり取りだった。

 差出人の名は伏せられ、

 肩書きも、正式な立場も書かれていない。

 それでも、

 誰からのものかは分かっていた。

 協力関係にある、

 小国の外務大臣からの連絡だった。

 文面は、終始落ち着いている。

 感情的な言葉はなく、

 助けを求める調子でもない。

 国の機能は、まだ保たれている。

 行政は動いている。

 軍も統制され、

 物流も途切れてはいない。

 ――今すぐ、国が崩れる状況ではない。

 だからこそ、

 書かれている内容は、

 必要なことだけだった。

 国境付近で、

 軍の動きが目立ち始めていること。

 検問が増え、

 通行や交易に、少しずつ制限が出ていること。

 外交の場で、

 相手の態度が、

 以前とは違ってきていること。

 侵略だと、断定できる段階ではない。

 だが、

 侵略ではないと、

 言い切ることもできなくなっている。

 自分たちの意思だけでは、

 拒めない力が、

 すぐ近くにある。

 小国は、

 ただその事実を、

 静かに伝えてきただけだった。

 それとは別に、

 帝国内部からも、

 説明のつかない動きが、断続的に届いていた。

 最近になって始まったものではない。

 以前から、

 静かに続いている流れだった。

 アルトは、

 ゆっくりと息を吐いた。

 ゼフィーリアは、

 結界を保持する国だ。

 魔物の脅威を最前線で引き受け、

 その安定の上に、

 周辺国との協力関係を築いてきた。

 その協力関係にある国が、

 侵略の可能性を前にしている。

 それを見て、

 何もしないという選択はない。

 それは、

 外交的な中立ではない。

 ――責任の放棄だ。

 アルトは、

 書簡を閉じた。

 「……関わらない、という選択肢は消えたな」

 それ以上、

 独り言を続けることはなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ